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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十四章 代役の終わりと門出
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姉の代わりにVTuber 214


 ◇ ◇ ◇ ◇


杉崎すぎさき邸 一室。


休日のその日、杉崎家の一室、杉崎 春奈はるなが使う部屋は、部屋の主である春奈によって、賑わっていた。


「――き、キタッ!!

『てっちん』の出番!」


穂高ほだかから、88(はちはち)の卒業配信に出る事を、伝えられていた春奈は、配信の当日、配信が始まる準備時間から、視聴待機をし、自分の推しの登場を待ちわびていた。


長く、88の軌跡について、配信では振り返っており、彼女の古い友人であるみっちょんとAQUAアクアとの馴れ合いも程々に、88の号令で、穂高がゲストとして呼ばれ、ついに配信に声が乗る。


「――えっとぉ~~、こんばんわ~~。

紹介に上がりました、元配信者の『てっちん』です」


88の配信に、彼の声が乗ると、春奈は過去の事を一気に思い出し、考え深いような感情が湧き上がった。


「固いッ! 固いよッ!! てっちん!」


穂高の緊張は、配信を伝ってもろに視聴者へ伝わり、『てっちん』の過去を知る春奈は、余計にそれが分かった。


「カッタッッッ!!

緊張しすぎじゃない!? てっちん」


「てっ君久しぶりぃ~~~!

ちょっと声、低くなったね??」


てっちんの登場に、配信の主催である88は、春奈と同じ反応を見せ、てっちんをてつ君との愛称で呼ぶ、AQUAは、穂高の声の変化が気になった。


「お久しぶりです、AQUAさん……、みっちょんさんも。

お二人共、ブランクあるのに凄いですね?

振る舞いが既に大物ですよ」


「いやいや、テツ……、私らも凄い緊張よ?? 出る前は。

今は段々と、慣れて来たけど」


みっちょんも、てっちんと交流が過去にあり、みっちょんもてっちんを、AQUAとは違う愛称で呼んでいた。


「流石っす、未貯金(MICHOKIN)さん」


「そのあだ名やめれッ!!

昔な??? 昔はそんなあだ名で呼ばれた事もあったけど……。

今は、主婦そッ!? 独身時代は笑い話で許されたけど、今はシャレになんないのッ!!」


緊張が中々解れない穂高は、既に配信に慣れつつある二人に話を振り、何とか自分もそのテンションに乗れるよう強めた。


会話を回す事で馴染もうとする穂高に、88のコメント欄は様々な声が上がった。


てっちん……? 誰??

男? 知らないなぁ~~

未貯金ww あったなぁ~~ そんなあだ名

テツッ!? 生きとったんかワレェッ!!

てっちんって、めちゃくちゃマイナーな配信者じゃん

88の配信には、あんまり出てないんよな?

ハチが無理やり追っかけて、てっちんの配信にはよく出てた


みっちょんやAQUAよりも、当時知名度が少なかったてっちんは、やはり彼を認知できる人が多くなく、全体的に6割、7割程の視聴者は、彼の事をよく知らなかった。


そして、そのコメントは配信者だけでなく、卒業配信を見ていた春奈の目にも入る。


「てっちんが、めちゃくちゃマイナー???

マイナーじゃないよ! 当時、無名で後ろ盾も無かったのに、配信の伸び率はトップだったし、最終的には、みっちょんやAQUAの配信並に人を集めてたし!!」


てっちんを知らないとのコメント、マイナーであるとのコメントに、春奈は一人、熱く反発し、思わず配信にコメントを書き込む。


HARUNA てっちんは、当時それなりに有名だったけどね!!(怒 

     てっちんの視聴者は、割と過激やなぁ~~

     当時、てっちんってめちゃくちゃ若くなかったっけ??

     私、凄いファンだったなぁ~~ てっちんの……

HARUNA 声、カッコよかったよねッ!?

     

春奈は久しぶりに、配信にコメントを書き込み、昔の事を思い出し、少しだけそれを懐かしく感じた。


「ハチ、俺の自己紹介を早くしてくれ……。

コメントでも困惑されてるし、俺の事を知らない人の方が多いだろ?」


「はいはい、紹介はするよ~~。

――けど、知らない人そんなにいないと思うけどなぁ~~」


世間とは裏腹に、88のてっちんに対する評価は、異常に高く、てっちんの危惧する、自分の認知度に関しては、そこまで88は危険視していなかった。


「――じゃあ、みっちょんとAQUAみたいに、紹介すると。

『てっちん』は当時、私と最も関わり深かった、元配信者です!!

私の配信には、てっちんの方が遠慮しちゃって、中々出てくれなかったんだけど、私が彼と絡みたくってね??

よくてっちんの配信にお邪魔させて貰ってました」


「異常に多い時期とかあったよな?

月の配信で、ほとんど俺の配信に出てる月とかあったし……」


「えぇ~~~、ホント??

割と気を使ってたけどね?」


「あれは気を使ってるって言わないから……」


88の発言に、てっちんは呆れた様に呟き、そんな二人のやり取りを、同じゲストであるみっちょんとAQUAは、微笑ましく見守った。


「まぁまぁ、そんな細かい事は、気になさんなってぇ~~。

てっちんとは歳も近かったし、何より私にとっては、当時、貴重な年下枠だったからねッ!

――私も、若くして配信してたから、回り見ても年上しかいなくてさ……」


「同じ、在学中デビューだからな?」


88とてっちんのやり取りに、コメントは一気に沸き立つ。


88の年下~~!?

88って高校生デビューだったよね?

驚くなかれ、てっちん古参リスナーの私が教えてやろう、てっちんは脅威の中学生デビューだ!!

え、エグ過ぎる……

中学生って所に引っ掛かてる人いるかもだけど、てっちんの配信は当時、驚く程健全だからね!?

今でいうカオスなZoutubeじゃなかったからなぁ~~、迷惑系なんかもいなかったし

配信したいけど、勉強もしなきゃとかで、高校受験勉強配信とかしてたからww

な、何が面白いんだ? それは……


ゆいは、てっちんと会話しながら、コメントを見つめ、てっちんの紹介に、欠かせないワードが出た事で、それをすぐに拾った。


「あぁ~~、コメントでも何件か流れてるけど、てっちんを紹介する上で外せないのは、高校受験配信だよね??

ただひたすらに、受験問題を解いていく中、詰まったらコメントに聞いたりして……。

変な意味で視聴者参加型の配信してたよね?」


見てたなぁ~~ 当時……。

何か、我が子に勉強教えるような? 教師になったような? そんな感覚あったよな!

てっちんの解いてる問題難しかったし、結構良いとこ行ったでしょ?

当時、同じ学生でした……、一緒に勉強してたし、めちゃくちゃ参考にしました

元々、てっちんは雑談配信好きだったしね? 駄弁りながら問題解くの好きだったわ


88の配信にも、てっちんを知る視聴者は多く存在し、てっちんの配信を懐かしむ者も多く散見した。


誤字報告ありがとうございます!

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