姉の代わりにVTuber 208
◇ ◇ ◇ ◇
「ほ、穂高君がリム……?
ゆ、唯さん、なに言ってるんですかぁ~~、そ、そんなはずはッ…………」
唯から、穂高の秘密を伝えられた春奈は。誤魔化すように、笑みを浮かべながら、唯に尋ねるが、春奈のそんな茶化すようなノリには、従う事なく、真剣な表情を崩す事が無かった。
「真実だよ。
穂高は、リムをここ数カ月に渡って、引き受けてる」
「―-な、なんでッ!?」
春奈にとっては衝撃的な事であり、様々な憶測が思い浮かぶが、そのどれもが確証の無い想像でしか無く、春奈は悲痛に近い声を上げた。
「――――ご、ごめん。なんで穂高が、リムを引き受けてるのかは、私からは言えない……。
正直、今の話だって、私から春奈ちゃんに、伝える事では無かったし。
て、てっきり、春奈ちゃんも、もう知ってると思ってたから……」
唯は失敗したと、言わんばかりの表情を浮かべ、確認を取らずに、探りを入れる形で話せばよかったと、後悔していた。
しかし、唯にとっても、春奈に対して、聞きたい事はあった為、会話を辞めるつもりは無かった。
「春奈ちゃんが穂高の秘密を知らなかった事で、今の穂高の契約延長が、穂高の単独での判断っていうのは分かった……。
春奈ちゃんのお願いでもなければ、二人で考えた作戦でもない。
佐伯さんからの指示とも思えないし…………」
唯は俯き気味に、ぽつぽつと独り言を呟いた後、再び春奈に視線を戻した。
「穂高の単独での判断だとしたら、どうして? どうして、春奈ちゃんの為にそこまでリスクを冒すのッ!?
――春奈ちゃんと穂高は、付き合ってるの??」
唯は眉を顰め、少し悲し気にも見える表情で、春奈に訴えかける様に、質問を投げかけた。
「わ、私と穂高君がッ? つ、付き合ってないッ!
――それよりも、穂高君が私の為にリスクを冒してるって、何ッ!?」
唯の尋ねたかった質問の答えは、春奈から返ってきたものの、春奈の状況から、これ以上、唯の話したい話題について、続ける事が困難であり、唯は本来の目的を諦めつつあった。
「――春奈ちゃんは、ホントに何も知らないんだね……。
穂高に悪い事しちゃったな……、後で、なんて謝ろ…………。
春奈ちゃんもごめんね? 何も知らないのに、私が突っ走った結果、変な風に伝えちゃって」
唯は、気力が抜けたような様子で、とぼとぼと歩き始め。屋上を去ろうとし始めた。
校舎へ戻る為、校舎入り口側に立つ、春奈とすれ違い、唯はそのすれ違いざまに、春奈に声をかける。
「――やっぱり、春奈ちゃんとは、友達にはなれそうにないね?
私たちは、仲間でライバルだ……」
唯の去り際の言葉について、春奈は正しく理解する事が出来ず、それどころか、信じられい事実を聞き、春奈はしばらく、その場に立ち尽くした。
◇ ◇ ◇ ◇
二日間の文化祭が終わり、穂高は、わけあって空港へと訪れていた。
(――しばらく、忙しくなるので、返信できないかも……かぁ~…………)
穂高は、携帯を見つめながら、春奈との直近メッセージのやり取りを、茫然と見つめていた。
文化祭初日以降から、春奈はそう言ったメッセージを穂高に送り、文化祭二日目に、美絆達の案内を手伝ってくれた事から、お礼をしようとしたが、妙に避けられていた。
穂高は、春奈のメッセージを見た後、唯とのメッセージやり取りを確認する。
唯 春奈ちゃんから、何か聞いた??
穂高 何かってなんだよ。
てか、何にも言わずに、勝手に帰ってんじゃねぇ
心配して探しただろッ!
唯 草。
探してくれたんだ~~、優男だねぇ~~
穂高 もう二度と探さん!
唯 ごめんごめん、冗談だってぇ~~!
唯 春奈ちゃんから何かあったら教えてッ
穂高は携帯をスクロールしていき、唯のメッセージを最後に、穂高とのやり取りは、途切れていた。
「――何かってなんだよ……」
抽象的過ぎる唯の言葉に、穂高はため息交じりに呟くと、そんな穂高に声が掛かる。
「穂高! 何見てんのッ?
もしかしてぇ~~、女??」
穂高に声を掛けてきたのは、美絆であり、美絆はニヤニヤとした表情を浮かべ、穂高に話しかけてきていた。
「邪推すんな。
友達だよ、友達。
――それより、母さんは??」
穂高は怪訝そうな表情を浮かべ、答えた後、空港に訪れた目的である、静香の事について尋ねた。
「もうすぐ来るって!
――今回の帰国は、いつもより長かったね~~」
「そうか? いつもと同じくらいだろ??」
穂高はそう言いながら、携帯をポケットにしまい、美絆と共に、待ち合わせ場所に移動した。
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