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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十三章 進む道
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姉の代わりにVTuber 204


桜祭おうさいベストペアSHOW』会場。


次々と参加者が紹介される中、文化祭の一大イベントでもある為、四条しじょう 瑠衣るいも、大貫おおぬき等を連れ、会場に訪れていた。


「4組目のマサ、ヤバかったなぁ?」


「ね? 野球部で坊主のイメージあったから、なんか、笑っちゃったよ!!」


大貫は、直近の出番だった生徒について、感想を話しており、大貫の意見に応えるように、梨沙りさも反応し、そんな二人を瑠衣は、茫然と見つめていた。


(――なぁ~~んか、楽しいけど、やっぱハルがいないと、楽しさ半減だよなぁ~~。

急いでたし、多分、天ケあまがせ君関連の事だから、そっちを優先するのは、仕方ないんだけど……。

まぁ、せめて関係が少しでも進んでくれれば…………)


瑠衣は、文化祭の後、穂高ほだかとの事に関して、春奈はるなに聞くことを楽しみに、続けて舞台に視線を戻した。


「――さぁさぁ、どんどん行きますよッ!!

続いては、5組目のペアの登場です!

女装をする男子生徒は、匿名希望でありますが、女子生徒はなんとッ!

皆さん、この学校にいて、知らないという人は、おそらくいないでしょうッ、有名な方です!

――3-B組、杉崎すぎさき 春奈はるなさんです!! どうぞッ! 壇上にご登場ください!」


仰々しい司会の紹介で、会場の期待値が上がり、春奈の名前が挙がった事で、観客は一気に沸き立った。


「え? 春奈ッ!?」


春奈の親友である瑠衣は勿論、瑠衣の隣にいる大貫達も、驚きの声を上げ、何故という困惑と、友人が舞台に上がる事へと興奮で、混乱を起こした。


「――ハル……、いったい何が……?」


瑠衣がそう呟いた所で、司会の呼びかけにより、春奈が舞台に上がる。


春奈と、女装をした一人の男子生徒が上がったことで、会場は大盛り上がりになる。


「杉崎さん可愛い過ぎッ!!」

「なんか、いつものクールなイメージと違って、ギャップ凄いッ!」

「やっぱ、学園のマドンナ、四天王とか呼ばれてるわけだわぁ~~」

「――てか、隣の眼鏡かけた相方誰ッ!? ホントに男??」


舞台に上がった春奈と穂高に対し、最初は、春奈に対しての意見が、多く見受けられたが、次第に、春奈の隣に立つ、匿名希望である、穂高に対しての声も上がってきた。


「今までの女装のレベルも高かったけど、なんか今日一でレベル高くね!?」

「テイストが違い過ぎる! 大人の女性ってか…………」

「ちょっと……、いいかも…………、私、女だけど」


春奈に続き、穂高の評価も高く、男子生徒だけでなく、女子生徒からも好意的な意見が多く上がった。


瑠衣は、春奈の登場にも驚いたが、何より、春奈の隣に立つ男子生徒と思わしき、女装した生徒が気になり、穂高ばかりを目で追った。


そんな、女装した男子生徒の、正体を知りたい瑠衣に、思わぬ声が届く。


「プフッ……!! アハハハッ!

――あれ、穂高?? 想像つかない!」


瑠衣と同じように、壇上を見ている観客の中から、瑠衣はその言葉を聞き、声の主へと視線を向けると、そこには美絆みきの姿があった。


美絆は、ゆいと壇上を指さしながら、笑っており、もう一人、同行していたつばさは、自分が頼んだという負い目もあってか、堂々と笑う事は無く、必死に笑いを堪えていた。


「似合うけど、穂高が女装してるって思うと、笑えてくる~~」


「――穂高……、匿名希望なんかにしなければ、学校で人気者なのにぃ~。

まぁ、あの穂高が人気者になってるって言うのも、想像したら面白いけど」


美絆は、ひたすら女装している穂高を見て、笑い声をあげ、唯は、別の事を連想させながら、様々な状況に陥る穂高を想像し、笑みを零した。


そんな美絆と唯を見て、瑠衣は思わぬところから、壇上に現れた匿名希望の、女装した男子生徒の正体を知り、再び瑠衣は壇上に視線を戻した。


穂高は舞台に上がるのが、まだ納得いっていないのか、時折悲しそうな表情を見せ、対して春奈は吹っ切れたのか、当初は恥ずかしそうにしていたものの、今はイベントを楽しむかのように、明るい笑みを浮かべていた。


壇上では、時折二人だけで会話をしつつ、春奈が穂高の受け答えに、明るく応えているように、瑠衣には見えていた。


春奈の楽し気な様子を見て、瑠衣も自然と笑みを零す。


「――良かったね、ハル…………」


瑠衣は、誰にも聞こえない程の声量で、壇上に上がる春奈に対して、そんな言葉を呟いた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「お二人共、ありがとうございます!」


桜祭おうさいベストペアSHOW』を終えた、穂高と春奈は、美絆達と合流すると、開口一番に、翼から労いの言葉が飛んできた。


春奈は照れくさそうに、翼に応じ、穂高は、目当ての者である、イベントの参加賞グッズを翼に手渡した。


「いやぁ~~、おねぇちゃん、穂高にあんな才能があったとは、思わなかったよ~~!

――また、定期的に女装してよ~」


「二度とするかッ!

恥ずかしい思いはするし、同性からは、変な声援が飛んでくるわで散々だったぞ?」


苛立ちを見せる穂高に対して、美絆と唯は、イベントを思い出したのか、再び笑い声をあげる。


穂高は、匿名希望での参加という事もあり、謎の美女として、男性陣から熱いラブコールを受けていた。


男で、女装して参加しているという、大前提があったにも関わらず、名前を明かさない事と、穂高の女装のクオリティも相まって、女装する穂高を、本当は女性なんじゃないかと、思い込む生徒もいた。


壇上では、穂高の名前を尋ねる声が多く上がり、同性からそんな声が上がるたびに、穂高は怪訝そうな表情を浮かべ、そんな冷たい、軽蔑するような表情や態度が、穂高の女装姿とマッチしたのか、余計に会場が盛り上がるなど、珍事まで巻き起こっていた。


「穂高~~、匿名希望じゃなくて、実名で参加すれば、優勝あったかもよ~~??

実名で参加してないから、女装を疑う声もあったわけで……。

それで、総合2位になっちゃったのかもしれないし」


ひとしきり笑った唯は、涙をぬぐいながら、穂高と春奈の結果を惜しむ様に、そう穂高に発した。


「嫌だよ、そんな悪目立ち……。

ただでさえ、春奈と参加してるんだし、変に噂がたったら、春奈にも迷惑だろ?」


「――え? い、いや……、別に迷惑ではないけど…………」


穂高の言葉に、春奈は答えるも、春奈の言葉は穂高に届かず、穂高の意見に不満なのか、唯は「えぇ~~」と声を上げながら態度に示した。


そんな大会が終わり、まったりと会話をしている最中、穂高達の集団の外から、春奈に向けて声が掛かる。


「ハル~~~ッ!!」


春奈にとって聞き覚えのある声であり、集まる穂高達に声を掛けてきたのは、瑠衣だった。


瑠衣は、春奈に手を振りながら、早足で駆け寄り、躊躇なく春奈に抱き着いた。


「良かったよぉ~~、ハル!!」


「えぇッ!? 見てたのッ!?」


春奈に抱き着いた瑠衣は、満面の笑みで春奈に告げ、春奈は壇上から瑠衣の姿が、確認できていなかった事から、見られていた事に、その時気が付いた。


「――っていうか、瑠衣一人??

梨沙とかは?」


「来てないよ~! みんな来たら、ちょっと面倒な事になりそうだし…………。

抜けてきちゃったッ!」


大貫達の姿が見えない事から、春奈がそう尋ねると、瑠衣は楽し気に、笑みを浮かべながら、キッパリとそう答えた。


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