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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十二章 祭の支度(後)
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姉の代わりにVTuber 190


「――えぇ~~っと、ここって……、大貫おおぬき家?」


穂高ほだかの行き先が気になった聖奈せなは、結局目的地まで同行し、たどり着いた先は、クラスメイトの家と思わしき、一軒家だった。


「そう、大貫の家」


家の表札を見て話す聖奈に、穂高は端的に答えると、迷うことなく、チャイムを鳴らした。


「え? ちょ、ちょっとッ!?」


穂高の行動に、隣で戸惑う聖奈だったが、穂高がチャイムを押した事で、すぐにインターホンから反応が返ってきた。


「――は~~い、どちら?」


「大貫君のクラスメイトの天ケあまがせです。

お見舞いに来ました」


インターホンからは、明るい女性の声が聞こえ、穂高はここに訪れた目的を、偽りながら答えた。


「わざわざありがとうッ

今行くわね!」


インターホンから聞こえた女性の声は、その言葉を最後に途切れ、数分も経たないうちに、玄関が開いた。


玄関が開き、姿を現した女性は、穂高達とそう年齢が変わらない若い女性であり、穂高は、大貫の姉弟かとそう思った。


「あら? カップルで??」


母親には見えない程、若い女性の登場に、穂高と聖奈は一瞬、驚き、対して、玄関から現れた女性は、見舞いに来たのが男女のカップルである事を、不思議そうに感じていた。


「あ、見舞いに来るつもりだったのは、私だけだったんですけど、彼女と一緒に下校する中で、成り行きで付き添って貰っています」


「彼女ッ!? やっぱり、彼女さんなのッ!?!?」


丁寧に説明したつもりの穂高だったが、恋人か尋ねられてる中で、『彼女』と呼ぶ掲揚はあまり良くなく、大貫の親族の女性を益々勘違いさせた。


そして、そんな状況に「しまった」と感じた穂高は、すぐに訂正しようとするが、そんな穂高よりも先に、聖奈が声を上げる。


「そ、そうですッ! カップルですッ!!」


訂正しようとした穂高を遮り、聖奈はそう発言すると、穂高の腕に、わざとらしく抱き着いた。


「お、おいッ……」


「――さっき揶揄ってきたお返しだからねッ?」


穂高が軽く振りほどこうとするも、聖奈はより一層に抱き着く腕を固め、眉を顰め、先程の、この場所に訪れるまでの、道中での事を指摘し、恨んでいるような素振りを見せた。


「子供か……」


「ふ~~んッ」


大貫の親族を前に、穂高と聖奈は小声でやり取りをし、不貞腐れたように、穂高から視線を外す聖奈は、少しこの状況を楽しんでいるようにも見えた。


「まぁまぁ、熱々ねッ!?!?

羨ましいわぁ~~、私も、高校時代に戻って、そんな青春してみたい!!」


聖奈の発言と行動で、収拾が付かない程に勘違いされた穂高は、誤解を解くのを遂には諦め、目の前の大貫の親族に本題を切り出す。


「あの~~、すいません、授業をコピーしたノートとか、できれば直接渡したいんですけど、良いですかね?

顔も見ておきたいし…………」


「――え!? あ、あぁ、そうだったわね……。

う~~ん、俊也しゅんやも、もう体調は元に戻ってるし、ちょっとくらいならいいか!

良いわよッ! 二人共上がって」


穂高と聖奈は、笑顔で出迎えられ、そのまま若い女性に、家の二階へと案内される。


「俊也~~、入るわよ~~」


大貫の部屋と思われる場所まで案内されると、大貫の親族である若い女性は、一言、声をかけると部屋の扉を開いた。


「――ねぇちゃん? 何? どうかした??」


扉を開いた女性は、中にいた大貫に姉と呼ばれ、大貫の姉の背後に控えていた穂高と聖奈は、ベットに横たわる大貫の姿が見えた。


「お客さん。 お見舞いに来てくれたわよ?」


大貫の姉はそう告げると、半身の姿勢を取り、背後にいた穂高と聖奈が、大貫の前に姿を現す。


「天ケあまがせッ!? それに、愛葉あいばも!?!?」


穂高達の姿を見るなり、大貫は驚き、声を上げ、大貫の姉は、そんな弟の様子を不思議に思いつつも、役目を果たした事から、その場から離れて行った。


「―-体調は? 元気か??」


大貫が取り乱す事は想定内であった為、穂高は別に気にする事無く、大貫の部屋で手頃な場所に腰を下ろした。


カーペットの上に、腰を下ろした穂高に倣い、何が起こるか全く予想が付いていない聖奈は、一先ず、穂高に倣うように、穂高の隣に腰を下ろした。


「なッ、な、なんだよ! 急にッ!」


「見舞いだよ? 別に変な事じゃないだろ?」


「変だよッ!! お前が来る事も変だし、何より、なんで愛葉と一緒に!?!?」


球技際で共に戦った仲間だとは言え、穂高と大貫はそこまで仲良くもなく、接点が無ければ絡む事もない間柄である為、穂高からわざわざ見舞いに来るには、奇妙に見えた。


そして、そんな大貫の指摘に、聖奈は乾いた笑いを浮かべ、誤魔化し、穂高は大貫の言葉に答え始める。


「聖奈は、成り行きでここに来てるだけだ。 あんまり、気にすんな」


「き、気になるわッ!! 

――ん? っていうか、聖奈?? 名前呼び?

お、お前らって……、そういう関係なの?」


「――――お前も姉と同じ事聞いてくるんだな……」


数分前に似た出来事があった為、穂高はデジャブを感じつつ、今度は聖奈に遮られないよう、そのことに対して自分から口を開き、答える。


「別にカップルじゃないぞ?」


「えぇ~~、つれないなぁ、穂高君……」


きっぱりと否定する穂高に、聖奈は、寂しそうに呟き、きちんと否定した穂高だったが、そんな二人の関係性を見て、大貫は益々、不思議に思った。


「とゆうか、邪魔をするなよ? 聖奈。

今は、やるべき事があるんだから」


「ちぇ~~、分かったよ……。

邪魔しなくないし、嫌われたくもないから、大人しくしてる」


まだまだ、カップルの話を掘り下げるつもりだった聖奈だったが、穂高に釘を刺され、不満そうにそう呟いた。


そして、聖奈に釘をさした穂高は、今度は大貫に視線を向け、余計な脱線はせず、単刀直入に尋ね始める。


「なぁ、大貫。

文化祭の事だけど、本番は出れそうなのか?」


「――え!? あ、あぁ、体調はもう大丈夫だし、本番は確実に出れるぞ?」


穂高に対して色々と尋ねたい部分があった大貫だったが、有無を言わさず、本題を切り出してきた穂高に押され、質問に答える事しか出来なかった。


「そうか……、出れるのか…………」


少し残念そうに呟く穂高に、大貫は何かを思い出したかのように声を上げる。


「ああッ!? そ、そういえば、あきらから聞いたけど、今、天ケ瀬が劇で俺の代役やってるんだろっ!?

い、色々聞いたぞ? 彰から!!」


「色々??」


穂高はここ最近、様々な出来事が周りで起きていた為、大貫の言う色々にピンと来ていなかった。


「ほ、放課後、春奈はるなと個別で練習してたらしいな、今まで……、ずっと……。

――お、俺だって、二人きりで練習した事、数える程しかないのに…………」


「あ、あぁ、そんな事か……」


穂高は、もっと別な部分を指摘されるかと、身構えていた為、大貫の言葉に少し気が抜けた。


しかし、大貫だけでなく、この場にいるもう一人の人物、聖奈も、穂高の言葉は聞き捨てならないのか、大貫と共に声を上げる。


「そんな事じゃねぇッ!!」

「そんな事じゃないッ!!」


大貫だけでなく、聖奈からも凄まれ、穂高は二人から圧を掛けられた。


「――い、いや、そこは別に重要な事じゃなくてだな……。

とゆうか、落ち着け」


穂高は、ヒートアップする二人をなだめ、続けて話を戻した。


「――――大貫、今日は、お前にやって貰いたい事……、いや、やって貰わなかきゃならない事を伝える為に、ここに来たんだ」


「やって貰わなきゃならない事??」


依然として、不満がある様子の大貫だったが、一先ずは穂高の言葉を聞き、穂高は真剣な眼差しで、話始めた。



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