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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十二章 祭の支度(後)
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姉の代わりにVTuber 176


あきら?)


インフルエンザでダウンした、大貫おおぬきの代役として名乗りを上げた彰に、視線が集まり、穂高は少し珍しそうに彰を見つめた。


「彰君……」

楠木くすのきなら問題ないなッ!?」

「――正直、大貫君より、楠木君の方が見たいかも…………」


彰の立候補に、一瞬クラス中が静まったが、すぐに賛成する意見が多く上がった。


穂高も、彰の立候補に意外と感じつつも、彰であればこなせると思った為、反対する事は無かった。


「楠木……、お前も出番あるのに、大丈夫か??」


「俺はセリフそこまで多くないから、

俊也の台本も覚える時間も取れると思う!」


彰の負担を心配してか、実行委員の生徒は気遣うように彰に問いかけるが、彰はきっぱりと答え、彰の堂々とした振舞に、称賛の声が上がる。


「分かった。 じゃあ、頼むぞッ、くすのッ……」


クラスメイトの称賛を受け、実行委員が本格的に、彰に依頼しようとしたその時だった。


「ちょっと待ってッ!!」


円満な雰囲気であった教室に、女子生徒の声が響き、その声を発したのは、四条しじょう 瑠衣るいだった。


瑠衣は、真剣な表情で席を立っており、瑠衣の隣の席であった春奈も、何か意見がある様子で、席から立ち上がっていた。


「ど、どうした? 四条……、杉崎すぎさきも」


瑠衣と春奈に動揺しつつ、実行委員は恐る恐る、話を聞いた。


「彰で決まりそうなところ悪いけど、その話、ちょっと待って欲しい!」


瑠衣は、先ほど挙げた自分の言葉を、補足するように話し、瑠衣に続いて今度は、春奈が口を開く。


「適任がいるのッ! 俊也の代役。

今、このクラスで一番適してる人が!」


春奈はそう言って穂高に視線を向け、春奈の視線を追うようにして、クラス中が穂高へと注目した。


(おいおい、いいのかよ……)


春奈の言う通り、現状、一番の適任が、穂高である事は間違いなかったが、適任である理由を説明すれば、一発で、変な噂が立つ事が予想できた。


(劇だけじゃなくて、春奈は『チューンコネクト』オーディションの件もある。

オーディションに通ってたりしたら、益々忙しいし、変に負担になりたくは無いしな……)


春奈から推薦される雰囲気がある現状だったが、穂高はまるで乗り気ではなく、大事な時期である春奈の負担になりたくない気持ちで一杯だった。


「――て、適任って、どうゆう事だ? 杉崎」


春奈の提案に、一瞬固まっていた実行委員の生徒だったが、すぐに気を取り直し、春奈に尋ねた。


「実は、穂高君には、放課後練習相手として、付き合って貰ってて……。

穂高君、既に俊也の役の台本を完全に覚えてるの」


春奈は一瞬、恥ずかしそうにするものの、一大事だという事もあり、ハッキリと意見を伝えた。


春奈の発言に、当然だが一気にクラス中はざわめきだし、穂高と春奈の関係を疑る生徒も多くいた。


「――ど、どうすんだよこれ…………」


穂高は教室の有様を見て、思わず心の声が漏れ出た。


「ほ、ホントか?

――天ケあまがせ、お前、代役出来るのか?」


「や、やってと言われるんであれば……。

足を引っ張らないよう全力でやります」


穂高はよそ行きの顔で、可能であると答えた。


クラス中の視線を受ける中で、穂高は同じく自分に視線を飛ばす、彰と若月わかつきが気になった。

.

 ◇ ◇ ◇ ◇


「だぁ~~から! 何にもねぇって!」


放課後での、クラスメイト達との話し合い語、穂高は案の定、質問攻めにあっていた。


放課後という事もあり、教室のクラスメイトは簡単に撒けたが、一緒に帰る約束をしていた武志たけし瀬川せがわからは、引き続き質問攻めを食らい、穂高はタジタジといった様子だった。


「なんもねぇわけないだろッ!? 四天王と? 二人きりで?? 放課後でッ!?!?

――そういや、お前、前にもこんなことあったよな? しかも、噂のお相手はまたしても、杉崎 春奈ッ!!」


「俺みたいな非モテが、四天王なんて異名が付く程、人気の女子生徒と、なんかあるわけねぇだろ??

ただ、趣味があって最近交流が多いだけで……。

――てゆうか、そんなこと言ったら、武志! お前だって、休日四天王と遊んだことあったろ??

しかも、二回もッ!」


言われっぱなしの穂高は、武志に反論し、自分の身の潔白を訴え、噂を否定した。


「いいや! あれは、お前のとは違う!!

団体だったし、二人きりだったお前とは、まるで状況が違う!」


「そんな事あるか! 同じだね!!

他の男子生徒に聞いてみろ? 休日一緒に遊ぶなんて、普通じゃないから」


「やかましいッ! お前の方がもっとすげぇ事やってんだよッ!! コンチクショウッ!!」


穂高の屁理屈はまるで通らず、今日の武志を抑える事は、穂高には難しかった。


そして、武志が怒りを露にしながら、色々と聞いてくる中、傍観していた瀬川が口を開く。


「天ケ瀬は好きなのか? 杉崎の事」


真顔で質問をしてくる瀬川に、穂高は勘弁してくれと言った様子で、溜息を付き、瀬川の質問に答えた。


「仮に好きだったとしても、叶わぬ高望みだろ? 100%実らない恋だぞ??

――立場違い過ぎて、想像でも付き合える光景が見えないよ」


「あたりまえじゃッ!!」


感情の起伏無く淡々と答える穂高に、武志が噛みつき、再びワイワイと騒ぎ立てた。


「――想像って……、俺は好きなのかどうかを聞いたのに」


質問をした瀬川だったが、自分の臨んだ答えは、穂高から引き出せず、武志が騒ぎ出したことで、それ以上追及することは出来なかった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「だ、だから、そんなんじゃないってぇ……」


クラスの話し合い後、教室から逃げる様に出て行った穂高に対し、春奈はクラスメイト、特に女子生徒につかまり、質問攻めを受けていた。


話し合いの結果、結局、大貫の代役として穂高が選ばれたこともあり、クラスメイトの興味は余計に注がれていた。


春奈は、質問に来る生徒の応対をしていると、一人、珍しい女子生徒が春奈の前に現れた。


「――ねぇ、ちょっと話、あんだけど」


春奈を訪ねたのは、愛葉あいば 聖奈せなであり、春奈の周りは、彼女と交流ある生徒ばかりだったため、聖奈の存在は少し浮いていた。


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