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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十一章 祭の支度(前)
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姉の代わりにVTuber 174

 

 ◇ ◇ ◇ ◇


日は経ち、穂高ほだか達の文化祭の準備は、役割によって、遅れや予定よりも早まる事もありつつ、ついに、日付は二週間前に差し掛かった。


「――おはよ、穂高」


登校を終え、教室で荷物の整頓を行っていた穂高に、遅れて登校して来た武志たけしが、眠そうに声をかけてきた。


「お~~。

――眠そうだな?」


「ちょっと、昨日徹夜でゲームしちゃってな。

『ワイルドハンター』」


「あぁ~~、『ワイハン』ね?

――そういえば、新作出てたな」


武志は会話をしつつ、目をこすりながら、自分の席に着き、シリーズ化され、国民的な大人気ゲームである『ワイルドハンター』の事を、穂高も知っていた。


(そういえば、『チューンコネクト』のメンバーで何人か配信してたな……。

人気コンテンツだし、姉貴もそのうち手を付けるかも)


人気ゲームという事もあり、穂高の思考は配信へと傾き、美絆みきも近いうちに配信を行うだろうと予想した。


「一昨日、土曜日に出たんだよね……」


「なるほどね、それで休日は丸々『ワイハン』に費やしたと……。

『ワイハン』懐かしいなぁ~。 中学の頃はよくやってた」


穂高は、武志の休日が容易に想像でき、昔やっていた過去作の『ワイハン』に思いを馳せた。


「『ワイハン3』な?

懐かしい~~、皆で家に集まってやってたよな~~」


「夏休みとか特にな」


穂高と武志は、ちょうど『ワイハン3』をやっていた、4、5年前の事を思い出し、当時を振り返る。


あきらも一緒にやってたよな~~。

普通に上手かったし……」


「武志と違って、何やらせてもセンス良いよな?」


「なにぃ? 俺の方が当時、やり込んでたし、上手かったわッ!!」


穂高と武志が話していると、いつもの様に、仲のいい瀬川が会話に入ってきた。


「なに? なんの話??」


「おぉ~ッ! 瀬川、良いところに~~。

瀬川は『ワイハン』やってる?」


瀬川が会話に入ってくると、武志は嬉しそうに、気さくに返事を返し、さっそく、武志にとって熱々な話題を、瀬川に投げかける。


「『ワイハン』?? あぁ~、新しいの出たんだっけ?

昔、『ワイハン3』はやってたよ??」


「お前も3かいッ!?

――なぁ~、穂高も、買おうぜ新作の『ワイハン』。

みんなでひと狩りいこうぜ??」


新作をやっていない穂高と瀬川に対し、話題にもできない為か、武志は懇願するように、二人にゲームの購入を進めた。


そして、ゲームの熱もあり、声のボリュームが少し大きかった為か、武志の放った声は、意外な人物の耳に届く。


「――え? 穂高君達も『ワイハン』やってるのッ!?」


むさくるしい男たちの会話に、柔らかな口調で、女性の声が投げかけられ、穂高達が声の方へと視線を向けると、そこには、春奈はるな四条しじょう 瑠衣るいの姿があった。


春奈の表情は期待に満ちたような、そんな表情を浮かべており、視線は穂高へと注がれていた。


「いや、悪い……、俺はやってない。

新作買ったって言う、武志の話を聞いてた」


「――あ……、そ、そうだったんだ」


春奈の食いつきから、穂高はばつが悪そうに答え、春奈は残念そうに呟いた。


穂高は悪い事をしたなと一瞬感じつつも、今度は武志の方から声が上がる。


「――す、杉崎すぎさきさん達ももしかしてやってるのッ!?」


武志は嬉しそうに、春奈達に問いかけ、仮に、瀬川と穂高が購入していたとしても、その状況よりも、嬉しそうに端から見えた。


「やってるよ~~。

ハルに誘われたからねぇ~」


武志の質問に、瑠衣が返事を返し、瑠衣の言葉から、この場にいる瀬川と穂高以外が、新作のゲームを購入している事が分かった。


「穂高君と、瀬川君は買わないの??」


春奈の質問に、穂高と瀬川は一瞬、顔を見合わせた後、それぞれ春奈に質問に答える。


「今のところは、買わないかな~。

面白そうだとは思うけど……」


「俺も買う予定は無いな。

――それより、意外だな? 女子が『ワイハン』やるなんて……。

しかも、まだ発売したばかりの新作」


『ワイルドハンター』は、ゲーム性から男性に好まれるようなゲームであり、ゲーマーでは無さそうな、春奈と瑠衣が、発売したばかりの新作をやっている事は、少し珍しく見えた。


「ん? え、えっとぉ~~、ほら……、私は~~ね? ゲーム好きだし……。

瑠衣には、私一人で遊ぶのも心許無いから、お願いして買って貰ったの」


(――あ~~、なるほどね、配信の為か……。

まだデビューしてないにせよ、オーディションに受かって、いざ活動を始めれば、外せないタイトルだしな……)


穂高の質問に、春奈は言い淀みながら答えながらも、穂高に視線を送り、春奈の視線から、穂高は何となく春奈の心情を読み取った。


「ハルってば、自分がやりたいっていうから買ったのに、全然上手くならないんだよねぇ~」


「ま、まだまだ練習途中だからッ

ちょっと操作に慣れてないだけで……」


瑠衣は春奈をからかうように、ニヤニヤとした表情を浮かべ、春奈は恥ずかしそうにしながらも、瑠衣の言葉に反論した。


そんな春奈と瑠衣の会話を聞き、武志は一人、盛り上がりを見せ、春奈の指南役として立候補し始め、穂高はそんな光景を茫然と見ながら、考え事を始める。


(――そういえば、春奈って、現状練習ではあれど、配信はこなれた様子で出来てるけど、ゲームはあんまり上手くないよな……。

一人語りではあるけど、しゃべり関しては、持ち前のコミュケーション能力の高さもあって、話は面白いし、配信は見てて心地いい。

じゃあ、ある程度ゲームに耐性がつけば、変にゲームでもたつき過ぎる事もなくなるし、より良い配信が出来るんじゃ……)


穂高は盲点だったと、気付かされ、春奈の配信の伸びしろに気が付いた。


そして、練習に付き合う中で、どんどんと配信がより良いものになっていく過程に、面白みも見出していたことから、穂高は早くこのことについて、二人で話したいとも思った。


(別に、ゲームが下手な事は、配信者にとってマイナスじゃない……。

配信を見ていて応援できるポイントにもなるし、それは配信者の見せ方でどうとでもなる。

でも、春奈は普通に比べたら、やっぱりゲームの耐性はそこまでない。

ゲーム配信を見ている人はゲーマーも多いし、頻繁に躓くと配信もダレる。

――春奈の配信の良さを消さない為にも、いろんなジャンルをやって、ある程度慣れておくことも重要だな)


穂高は考えがまとまると、必然的に自分のやるべきこと、やりたい事もおのずと定まってきた。


そして、『ワイハン』の話題で盛り上がる春奈達に、穂高は声を上げる。


「そんなに面白いなら、俺も買おうかな」


楽し気に話していた武志と春奈は、嬉しそうに穂高を歓迎し、穂高が購入を決意したことで、瀬川も購入する流れとなった。


そして、5人で『ワイハン』の話をしている時だった。


教室中に、ひときわ大きな声で、女子生徒の声が鳴り響いた。


「ちょっと! みんな聞いてッ!」


女子生徒の声の主は、春奈や瑠衣と交流の深い、菊池きくち 梨沙りさであり、クラス中の生徒の注目を浴びた梨沙は、そのまま焦った様子で、言葉をつづけた。


「しゅ、俊也しゅんやがインフルエンザに掛かっちゃったって……。

――劇……、どうする…………?」


梨沙の声色は不安に満ちており、梨沙の発言とその声色は、クラス中に不安を伝染させた。


誤字報告ありがとうございます。

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