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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十一章 祭の支度(前)
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姉の代わりにVTuber 167


 ◇ ◇ ◇ ◇


佐伯さえき美絆みきとの打ち合わせの後日。


穂高は、登校するなり頭を抱え、机に向かってうなだれていた。


数分ごとに大きなため息を吐き、時折、かすかにブツブツと独り言を呟いた。


「――――なぁ、流石に言わせてもらうけど、そのため息止めてくれないか??」


穂高の異常さに気づいていた武志たけしが、我慢の限界が来たのか、うなだれる穂高に注意した。


「うるせぇな武志……、今、取り込み中なんだよ」


「いや、さっきからうるさいのはお前なッ!?」


穂高は明らかに機嫌が悪く、対応がいつもより冷たかった。


そんな穂高に対して、武志も怯むことなく、迷惑になっている事を続けて伝える。


「あのな? 朝からずっと大きなため息付かれて、俺まで憂鬱になるわ!

一体何があったんだよ」


武志は迷惑そうにしながらも、穂高の事が気になるのか、どうして朝から気分が落ちているのか尋ねた。


「何があったってそりゃ……。

――はぁ~~~~、なんであんな宣言したんだか…………」


穂高は答えようとするも、昨日の出来事を思い出し、再び自然と大きなため息を付いた。


(大体、言いなりになっていない事の証明ってなんだよ……。

何すりゃいいんだ? 親子で面談か??

――――駄目だ、丸め込まれるのが想像付く…………。

第一、俺はやりたいように生きてる! 昔やってた配信にしろ、抱いた夢にしろ、指図されてきたわけじゃない。

夢を諦めたのも何かを言われたわけじゃなくて、自分で決めた事だ!

母さんの進めた道に乗ってるつもりも、乗るつもりも無いのに……)


頑なに美絆が言いなりになっていると、確定させてきた為に、穂高は熱くなり否定してしまったが、冷静に振り返っても、言いなりになっている要素は、見当たらなかった。


「ムカつくな、クソ姉貴…………」


「おいおい……、クソ姉貴じゃなくて、何があったか俺は聞いてんだけどぉ~~?

――まぁ、今の呟きから考えて、姉弟喧嘩か??

姉弟で喧嘩したくらいで、朝からため息連発しないでくれよ……」


穂高は思わず美絆に悪態をつき、穂高の悪態から武志は、穂高の機嫌の悪さの原因は、姉弟喧嘩からきているのだと結論付けた。


「だいたい、姉弟で喧嘩したところでなんだ?

俺にも兄貴がいるけど、兄弟で喧嘩したくらいで、次の日まで引きずらないぞ??」


「武志は単細胞だから、忘れるだけだろ~~」


穂高の力ない言葉に、武志は文句を言い始めたが、そんな武志を気にする事無く、穂高は再び昨日のことを考え始める。


(手段は思いつかないけど、何より、母さんが考える、想定する以上の、何かの才能を見せればいいんだよな?

プロデュース能力にたけ、ある程度、実力を見せれば、その人の伸びしろまで見抜けるあの母親に、予想以上の能力を見せる事、感じさせる事が出来れば……)


静香の周りで起きる出来事のほとんどが、彼女の予定調和であり、穂高は既に、いくつかの分野で、穂高の才能を見抜かれていた。


(一度、駄目だと烙印を押された分野で、母親の想定以上の結果を残す!

――ひとまず、何で見返すか、それを決めないとな……)


穂高は目標を決めると、それを達成させるため、手段を考え始めた。


しかし、すぐにそれが思い浮かぶことはなく、難航ずる。


考えが出ない穂高は、駄目元で武志に問いかける。


「――武志~~。

球技祭の時、モテる、目立つスポーツやりたいって言ってなかったか?

今年の文化祭で、お前が思う、やれば目立つ、モテる事って何だと思う??

できれば、将来性のある事で……」


穂高に文句を言っていた武志だったが、穂高からの質問で、表情が少しだけ険しくなる。


「お前……、いきなりなんだよ、変な質問ぶつけてきて……。

モテて目立って将来性のある事ぉ~~??

う~~~ん、その質問に答えとして、あってるかどうかは分かんないけど、文化祭の有志発表で、バンドするぞッ!? 俺は!」


かなり悩んだ様子で答えた武志だったが、自分なりに答えを出し、駄目元で聞いたはずの穂高は、思わぬところに興味を持ち始める。


「バンドぉッ!?!? お前がぁ??

――お前楽器弾けんの? とゆうか、いつの間に有志出る事になったんだ?」


「し、質問多いな……。

有志に出る事になったのは、つい最近だよ!

――クラスの劇の発表で、主役やりたかったのに、人気投票で役を奪われちゃうし……、こうなったら、有志で結果残すっきゃないっしょッ!!」


「お前の行動力には、ホント尊敬するよ……」


穂高は呆れつつも、あまりの行動力に思わず笑みを零した。


「で? 楽器とメンバーは??」


「メンバーは他のクラスの友達、

ホントは、お前とあきら瀬川せがわで出たかったけど、お前ら絶対断るだろ??」


「なんだぁ? 決め付けかぁ~??

今の時期に誘われたのなら、練習期間取れないし、断るだろうけど、前々に言ってくれれば、譲歩するかもしれないぞ??」

「いいや! 嘘だねッ!

どうせ、ハズいとか、有志で目立つのダサいとか、変ないちゃもん付けて、悪態付きながら断るに決まってるねッ!!」


ニヤニヤと笑みを浮かべる穂高に、武志は強く穂高の意見を反対し、武志の判断は間違っていなかった。


「よくわかってるじゃん」


「ほら見ろッ! 絶対後悔させてやるんだからなッ?

――今回の有志に参加しておけばよかったぁって、思わせてやる」


「はッ……、期待しないで、当日はどんな醜態を晒すか、楽しみにしておくよ」


穂高は明らかに馬鹿にしたような笑みを浮かべ、武志の有志を見る事に決めた。

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