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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十章 終わる者 始まる者
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姉の代わりにVTuber 152


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ウケるッ! なに~~? 穂高、学校でそんな感じなの!?

球技祭に、クラス代表でバスケするなんて……、想像できない」


昼食を取るため、穂高ほだか達は近場のレストランへと入り、会話の流れは何故か、学校での穂高の話になっていた。


春奈はるなと穂高が同じ学校、更にはクラスメートである事をゆいが知ると、しきりに唯は学校での穂高に付いて質問をしていた。


「何がお前の中でウケてんだ……?

傍から聞いてても普通の男子高校生だろうが」


「穂高が普通!? 中学生時代、拗らせてた穂高が普通なわけ。

それに穂高がバスケって……」


「お前の中での俺のイメージはどうなってんだ…………?」


笑みを浮かべながら楽し気に話す唯に、穂高は全く共感できず、呆れ気味に返事を返した。


そんな二人のやり取りを、交互に二人の表情を見ながら聞いていた春奈は、気になった事を尋ね始める。


「え、えっと……、天ケあまがせ君と唯さんは、一体どんな繋がりが?

唯さんは確か、大学生ですよね?」


春奈の質問を聞き、今までワイワイと話していた唯は、「あぁ~~」っと唸るように声を漏らしながら、困った表情を浮かべ、穂高は自分からは何も言わず、唯の返事を待った。


「んん~~~~、まぁ、春奈ちゃんにだったら私はいっか……。

穂高は?」


「まぁ、別に俺はいいぞ?

特定されるのは、恥ずかしいから名前を伏せれば……」


唯が事情を話す事を決めると、穂高はそれに対して特に反対する事は無く、唯と穂高の関係性について春奈に教える事を承諾した。


「なんじゃそりゃ」と、穂高の返事に苦笑しながら呟いた後、唯は春奈に向かって、自身の事を話し始める。


「実はね? 私と穂高って昔、ネット……、まぁ、動画配信者として関わってた時期があるんだよね~……。

お互い個人でやってたんだけど、縁あってコラボ~?みたいな事なんかもしたりして……」


「え? 配信者……、配信してたんですかッ!? 個人で!?

――――ってゆうか、天ケ瀬君もッ!?」


そこまで唯と年齢が離れているわけでも無かった為、唯が個人で活動していた事に春奈は驚き、穂高も同じように活動していた事に、更に驚いた。


「な、なな、なんで言ってくれなかったの! 天ケ瀬君!!」


「いや、自分からなんて恥ずかしくて言えないだろ?

俺の配信なんて見てる人いなかったんだし……」


「で、でも、配信者なりのアドバイスとか……、どんなこと気を付けてたとか……教えて欲しかった」


「アドバイスはしてたろ? 俺なりに。

協力するって言った手前、俺の個人での活動を知られちゃ、説得力も無くなるし、いくら視聴者目線での意見だって言っても、変な疑惑が出るだろ??」


「そんな事言ったって……、配信中はどんな気持ちだったかとか、緊張したかとか色々経験者に聞きたかったし……」


春奈は寂しそうに呟き、ここまで一緒に頑張ってきた穂高に対して、大きな隠し事をされていた事に、不満を隠せない様子だった。


そんな二人のやり取りに、仲裁するようにして、唯が笑顔で話しかける。


「まぁ、その辺の事はさ? 今度聞いて行けばいいんじゃない?

今までは面接、デモ配信だけが重要だったわけなんだし……。

デビューが決まれば、その辺の話も、穂高から聞いて活かせるわけじゃん?」


「そ、そうですね」


唯の提案に春奈は同意し、依然として少しだけ重い空気が残っていた為、唯はそれを払拭するように、続けて話し始める。


「それに、穂高はな~~んか認めないけど、視聴者いなかったわけじゃ無いよ?

当時、割と人気の配信だった」


「お、おい……」


唯の話を制しするように、穂高は声を上げるも、唯は悪びれる様子は無かった。


「いいじゃん別に~~、配信者時代の名前を言ったわけじゃ無いし~~。

春奈ちゃんも気になってるんだし、意地悪してないで教えてあげなよ~」


「帰るぞ?」


穂高の発言に、春奈は一瞬驚いた表情を浮かべるが、春奈以上に取り乱した唯は、すぐに返事を返した。


「わ、わわかった! もうこれ以上は言わないよ~。

――ったく、何をそんな隠す必要があるんだか…………」


穂高の冷たい反応に、唯はすぐさま煽るのを止め、春奈が凄く興味ある様子ではあったが、それ以上配信者時代の穂高の話をする事は無かった。


「ごめんね~、春奈ちゃん、ここまで言っといて最後まで語れず……。

――あっ、ちなみにお詫びと言ってはなんだけど、私の活動時代の名前を教えよっか?」


「言っていいのか?」


唯の提案に、春奈は驚き声を微かに零し、穂高も驚いた表情を浮かべ、唯を少し心配するように尋ねた。


「あ~、まぁ、ほんとは言っちゃダメなんだけど、春奈ちゃんにならいいかなぁ~~って。

なんとなくだけど、今後もお付き合いがありそうな、そんな気がするし……」


「なんだその理由は……」


根拠のない、あやふやな理由でカミングアウトしようとしている唯に、穂高は呆れかえった様子で呟き、唯は春奈に告白し始める。


「実はね? 私は『88(はちはち)』って名前で、配信活動してるんだ。

――知ってるかな?」


唯は自分からカミングアウトしておきながら、春奈が知らなかったら恥ずかしいと途中で気づいたのか、一気に顔を赤らめ、様子を伺う様に春奈に尋ねた。


「知ってます……。

――とゆうか、超有名配信者じゃないですか……」


「よ、良かったぁ~~知っててくれた。

超有名なんて……、えへへ、照れるなぁ~~。

春奈ちゃんは『チューンコネクト』のファンだし、畑違いだから知らないかもって思っちゃった」


思わぬビックネームに、春奈は半ば放心状態で、驚きを隠せない様子で答え、対して唯は、安心した様子で、時折喜びを隠しきれず、ニヤニヤと笑みを零していた。


「そ、そんな! 『チューンコネクト』のファンとか関係ないですよ!

配信、何度か見てました」


88である事をカミングアウトしてから、単なる年上と年下の関係から、配信者と視聴者の関係へと変わり、春奈の敬語は余計に、丁寧になりつつあった。


「配信見てくれてたの!? 嬉し~~!!

あんまり、リアルでこういったやり取りしないから、凄い嬉しいや!

まぁ、顔出しとかしてないから当然っちゃ、当然なんだけど……」


唯は終始ニヤニヤと笑顔を零しつつ、春奈は憧れの人を前にしたように、変に少しだけ緊張感を感じていた。

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