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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第九章 夏休み
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姉の代わりにVTuber 143


「――そ、そういえばさ?

ビーチバレーをやってた頃ぐらいまでは、結構、交流合ったのに、後半はあんまり会えなかったねぇ?」


春奈はるなは、苦笑いを浮かべながら、少し残念そうに穂高ほだかに、話題を振った。


「あ~~、まぁ、こんだけの大勢の団体で来てれば、そりゃ、ずっと同じ人と遊んでる……何て事、あんまり起こりえないけどな……。

俺みたいな日陰者からしたら、一瞬でも、大貫おおぬき達や杉崎すぎさき達と遊べただけで、光栄に思えるけど……」


「――こ、光栄って…………、同い年だよ?」


穂高の言葉に、春奈は笑みを零しながら、返事を返した。


「同い年でも、格みたいなのがあるだろ?

実際、杉崎や四条しじょうみたいな、クラスのマドンナ達と遊びたいって奴は、多かったと思うぞ??」


春奈との交流に慣れた穂高は、何気なしに、心から思う本音を簡単に話せ、言葉も遠回しでは無く、ストレートに伝えていた。


「マドンナって……、私別にそんなんじゃ…………」


「いやいや、マドンナとかじゃなきゃ、四天王なんてあだ名、付かないだろ?」


「――――むッ……、そのあだ名私は好きじゃ無いんだけどなぁ」


彰達と接する時と、同じような感覚で話す穂高に、春奈もいつもの調子を取り戻し、遠慮なく穂高に言い返した。


そうして、しばらく世間話をする中で、穂高は、自分も協力していた事もあり、あることが気になり、春奈にその話題を振り始める。


「――――そういえば、午後は相変わらず、大貫達と一緒だったな?

仲良いよな? 杉崎達のグループ」


穂高は、遠回しに大貫と春奈の事を聞きだそうとし、話を振り出し、春奈は話題が変わった事に、一瞬だけキョトンとした様な表情を浮かべたが、会話の流れは変でない為、素直に答え始める。


「ま、まぁ、そうだね~~。

なんだかんだ、一年生からの付き合いだし……、大貫達と遊びに行ったりする事は、初めてじゃ無いしね~~。

自然と集まるね?」


春奈は、少しだけ恥ずかしそうに笑いながら、穂高の質問に答えた。


「自然とね……、まぁ、その気持ちは分からんでもないな。

俺も結局、瀬川せがわ武志たけし達と連るんじゃうし……。

――――じゃ、じゃあ、今日もいつもの感じで、大貫と周ってたの??」


「え? あ、うん……、まぁ、いつも通り、慣れた感じに…………」


穂高の質問は若干意図が掴めず、春奈もそれには気づいていたが、指摘するまでの事ではない為、困惑しながらも素直に答えた。


(大貫の奴……、結局進展なしかッ!?

――こんなめんどくせぇ事、俺に協力させた癖に、何も目的を達せてないなんて…………。

アイツ、今日一日何してたんだ?)


質問に答える春奈にも注意し、質問をした穂高だったが、春奈の答え方、仕草には、何の疑問も持てず、大貫と春奈の関係が何一つ、進展していないという事が見て取れた。


(いやでも、大貫の奴、結構決意めいてたからな…………。

まだ決めつけるのは良くない)


望みは薄そうではあるが、まだ、進展が無かったとは、穂高の中で決めつける事は無く、続けて春奈に質問をした。


若月わかつき四条しじょうもいたけど、ずっと四人で行動してたのか?」


「――――そうだね……基本四人だったかな~~?

でも、途中ばらけたりとかはしたし、自由に遊んでたよ?」


「そ、そうか……、た、楽しそうだな…………」


大貫の成果を知りたいが為に、穂高の質問は、要領の得ないものになっており、せっかく春奈に答えてもらうも、穂高自身、遊びの内容については、さほど興味も無い為、聞いておいて返事は、ものすごくテキトーなものになってしまっていた。


穂高の異変に、春奈も段々と気付いていき、穂高を不思議そうに、春奈は見出した。


(ヤバい……、何か変な空気になってきた…………。

自分でも、俺の調子がおかしい事は明確だし、ちょっと質問の方向性を変えないと……)


春奈からの視線を痛く感じた穂高は、今度は違う方向から探りを入れ出す。


「――お、大貫ってイケメンだよな~~?

結構クラスの女子から、モテたりするけど…………、杉崎はそのへん、何か感じたり、思ったりする事あるのか?」


探りを入れる穂高だったが、またもや質問のしかたは、妙な物になっており、一度、失敗している穂高は、少し挙動不審にも見えた。


「え? ど、どうって言われても……、別にとしか…………。

確かにイケメンだとは思うけど、友達だし……、モテるのも知ってるけど、何で彼女作らないんだろうって、それぐらいしか思わないかな?」


春奈は穂高の質問に困惑しながらも、穂高の質問には真摯に答え、春奈の言葉を聞き、穂高は続けて春奈に質問を投げる。


「へ、へぇ~~。

確かに彼女いないのは驚きだよな……? あんなにモテるのに…………。

す、杉崎は、大貫の事、そういう付き合う対象とかで、見たりとかッ…………………」


「しないよ」


穂高はまだ、質問の途中であったが、穂高の質問を先読みし、穂高の言葉を遮るように答えた。


春奈の返答に驚いた穂高は、春奈の顔を見る。


春奈は、真っ直ぐに穂高を見つめ、穂高自身、春奈の言葉を疑っている節は無かったが、春奈の表情から、春奈の言葉に嘘があるようには微塵も思えず、真顔できっぱりと答えた春奈に、少しだけ気迫めいたものを感じた。


「そ、そうか…………。

まぁ、友達って言ってたしな~~? 付き合いも長いから、今更そんな風には見えないか」


春奈の気迫に押された穂高は、それ以上余計な追及をすることが出来ず、適当な言葉を並べて、返事を返した。


そして、そのぼんやりと呟いた穂高の言葉を最後に、春奈と穂高の間に沈黙が流れた。


穂高は自分がこの空気にしてしまった手前、沈黙した状況に、気まずさを感じていたが、対する春奈は、それどころでは無く、ある疑問が春奈の中で膨れ上がり、そればかりが頭の中を巡った。


「ね、ねぇ、天ケ瀬君……。

一つ聞いても良いかな?」


悩みが膨れ上がった春奈は、意を決して、ポツリと話しかける様に、穂高に質問を投げかけた。


「ん? なんだ?? 改まって……」


沈黙が破られ、少しだけ安心するような表情を浮かべる穂高に、春奈は意を決したように、話し始める。


「天ケ瀬君、ビーチバレーの後から、私の事……、避けて無かった??」


「え…………?」


思ってもみない質問に、穂高は思わず間抜けな声を上げた。


「――い、いやッ! 避けてないぞ?

まぁ、確かに、ビーチバレーの後は交流無かったけど、でも、元々杉崎と俺とじゃ、中々一緒に交流できないだろ?

杉崎は人気者だし…………」


意図的に大貫と春奈を、くっけようとしていた穂高は、春奈の質問に、内心焦りつつも、当たり障りのない返答を返し、誤魔化した。


穂高の中では最善の手だと思えた言い訳だったが、穂高の言葉を聞いた春奈は、何故か表情を歪ませ、辛い表情を一瞬浮かべた。


「本当に?

ビーチバレーが終わった後、不自然なくらいに、他の3-Bの生徒達はふらりと、どこか消えちゃってたし……。

その後だって、今の時間まで、まるで誰とも出会わなかったよ??」


「――まぁ、そうゆう事もあるだろ……?

広いビーチだし、一度はぐれたらそう簡単には…………」


少し口早に、捲し立てるように話す穂高だったが、春奈の表情を見て、その口を止めた。


そして、穂高が話すを止めたところで、春奈がゆっくりと言葉を発した。


「ごめん……、実は、私聞いちゃったんだ…………。

俊介が、わざと瑠衣るいと私、智和ともかずの四人になるように、他の生徒達から孤立させたって…………」


「――――――は?」


春奈のトンデモ発言に、穂高の表情は一気に固まり、空気が漏れ出たような声を漏らした。


「――まさかとは思ってたけど……、天ケ瀬君も協力してた……よね…………?」


悲しそうな表情を浮かべ話す春奈に、穂高はすぐに返事を返す事が出来なかった。


誤字報告ありがとうございます。

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