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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第九章 夏休み
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姉の代わりにVTuber 141


「なッ! ナンパってヤバいじゃんッ!」


「四の五の言ってんな! 助けに行くぞ!」


春奈はるな瑠衣るいは、五人の男性に囲まれており、見た目から高校生とは思えず、チャラついた風貌、遊び慣れている雰囲気から、大学生だと穂高ほだかは思った。


そして、春奈達の危機的状況に、大貫おおぬき若月わかつきはすぐに行動に移そうとする。


「あ、天ケ瀬も行くぞッ! ほら! 早くッ!!」


春奈達の元に行きかけたところで、大貫は穂高が動いていない事に気づき、自身に急ブレーキをかけ、穂高へ振り返り、力強く呼びかけた。


切羽詰まる大貫に対して、穂高は飄々としており、落ち着いた様子で、大貫の言葉に答え始める。


「はぁ~~、せっかくの見せ場だろ??

俺が行ってどうする…………。

ホントにヤバくなったら手を貸す。

ほらッ! 行ってこい!!」


ため息交じりに答える穂高に、大貫は一瞬困惑するも、穂高がここに来ても、協力してくれているのだと解釈し、それ以上穂高を呼ぶことは無かった。


穂高の態度を見て先行する大貫、そして、そんな大貫を見て若月も、後を追いかけ始めようとするが、そんな若月を穂高は呼び止めた。


「若月。

人数的に、助けに行っても分が悪いかもしれない……。

相手が引かなかったら、俺を出しに使え。

――――大貫程馬鹿じゃないお前なら、分かるだろ??」


呼び止めた若月に、穂高は一方的に、言いたい事を伝え、穂高の抽象的な指示に、若月は一瞬眉を顰めるも、穂高の意図が通じたのか、すぐに力強く頷き、大貫の後を追っていった。


「――――上手くいけばいいけど………………」


穂高は、春奈たちの元へ向かう大貫達の後姿を見ながら、ポツリと呟いた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ねぇねぇ、そんなこと言わずにさぁ~~、俺らと遊ぼうぜ~?

君ら高校生? 俺ら、大学だから遊び慣れてるし、せっかくの夏じゃん、楽しい思い出作ろうぜ~~??」


大貫達と海を満喫していた春奈達は、小休憩を行う予定になり、大貫達と別れ、春奈達は飲み物の調達をしていた。


飲み物の調達を終えたところで、大貫達と再会し、なぜか大貫達にお手洗いへと勧められ、遊びに出れば、中々訪れる事が出来ないという事もあり、大貫達の言葉に甘えるようにお手洗いへと向かっていた。


そして、お手洗いから出たところで、五人組の大学生に目を付けられ、執拗な勧誘に会っていた。


「い、いや……、私達、友達と来てるんで…………」


何度目かの誘い言葉に、春奈は苦笑いを浮かべながら答えた。


「友達?? いいよ~~、じゃあ、友達も呼んで一緒に遊ぼうよ~~。

女友達? 君らの友達ってことは、その友達もさぞ可愛いんだろうなぁ~~」


「お、男友達ですよ?

もうそろそろ戻ってくるんで、ご一緒はできないです」


春奈の断わりでは弱いと感じた瑠衣は、まだまだ諦める様子の無い男性陣にはっきりと伝える。


そして、瑠衣の男友達という言葉に、誘ってきた男達は一瞬眉を顰め、明らかに嫌そうな表情を浮かべた。


「そ、そうゆう事なんで、じゃあ、私達はこれで……」


眉をひそめた男性陣の表情を瑠衣は見逃さず、畳みかけるように、一言断わりを入れ、春奈と共にその場から離れようとした。


「――待った待った~~。

へぇ~~、男と来てるんだ~~~。

でも、こんなにかわいい君達をほっぽって何処かに行くなんて、そんな男達どうなの?

俺達と遊んだ方がよくね? 楽しいよ? 絶対。

高校生なんかよりも、羽振りいいぜ??」


瑠衣の作戦は一人の男性に阻まれ、まだ諦めないその男性の姿勢に、男がいるといった瑠衣達に、一瞬ひるんだ男性陣たちも、気を持ち直し始めた。


まだ執拗に絡む男性陣を前に、春奈と瑠衣は一瞬、互いに顔を見合わせ、言葉は交わさずとも、ここは強引に、強く拒否しなければ解放されないと認識し、春奈は行動に移そうとした。


キッパリ断ろうと、意を決して口を開いたその時、春奈達に聞き慣れた男性の声が掛かる。


「春奈ッ! 大丈夫か!?」


声のする方へと視線を向けると、そこには大貫と若月の姿があり、大貫は焦った様子で、心配そうに春奈達を見つめていた。


「俊也!?」


大貫の声を聞き、姿と認識すると、春奈は少しだけ状況が好転した事に安堵した。


大貫は、春奈と瑠衣の元へと駆け寄ろうと思ったが、瑠衣と春奈は大学生グループに、囲まれるようにしており、すぐそばまで近寄る事は出来なかった。


「なになに~? さっき言ってた友達??

――イケメン君達だね~~??」


大貫達の登場で、大学生達が諦めるかと春奈達は思っていたが、大貫達が来てもまるで怯む事は無く、むしろ圧を掛ける雰囲気で、大貫達へ声を掛けた。


「――――彼女達、俺達の友達なんで……。

もう解放してくれないですか?」


「解放? 人聞きの悪い……。

今、俺達もこの娘達と友達になったばっかりなんですけど~~。

――てか、ガキが邪魔しないでくんね??」


丁寧に頼んだ大貫の言葉は、大学生には通じず、むしろ大学生達に火をつけるような形になってしまう。


大学生の言葉に、大貫は眉を顰め、険しい表情を浮かべ、そんな大貫と大学生達のファーストコンタクトを見ていた若月は、このままでは埒が明かないと、すぐに結論を出した。


そして、事件解決の為、若月は思考をフル回転させる。


思考を巡らせる中で、穂高の、つい先程の別れ際の言葉が頭に過り、ある作戦を若月は思いついた。


「――――なぁ、あんまりしつこいと、俺らにも考えがあるんだけど??」


若月は少し離れたところで、状況を見ていた穂高に、一度だけ視線を向け、穂高の姿を確認すると、今度は若月の方から強気に、大学生へと言葉を投げかけた。


「はぁ?? 考えって何?

もしかして、手荒な事??

――――いいよ、お前ら生意気だし、ボコってやっても」


若月の考えを勘違いした大学生は、自分達の頭に少しだけ過っていた考えを、そのまま口に出し、暴力には自信があるのか、高圧的な態度をそのままに、若月に言い返した。


「手なんか出すわけ無いだろ?

――あそこに俺達の連れが居るの分かる??

俺らにもし何かがあったら、警察を呼ぶように待機してもらってるんだ」


若月はそう言いながら、少し離れた位置に立つ穂高を指さした。


若月の指先に導かれるまま、大学生達、春奈達は視線を向け、穂高の姿を確認し、穂高は携帯を持ってはいなかったが、電話を掛ける仕草を取っており、少し離れた位置に居た事もあり、遠目から見ている若月達には、本当に電話を掛けているように見えた。


「お、お前らッ!?」


「――これ以上絡むと、警察来るよ?

助けに来る前に、示し合わせてるから、時間で掛ける様に話してあるし……」


動揺する大学生に、若月は淡々と話し、若月自身もハッタリだという事は自覚していた為、それを悟られないように、出来るだけ堂々とした振る舞いで話した。


「――ちッ! もう行こうぜ」


若月の態度と、穂高のジャスチャーで、大学生の一人が諦めるような言葉を発し、その言葉に釣られるようにして、次々と大学生は諦め、これ以上春奈達に絡むのを止めていった。


「大丈夫? ケガとかは??」


大学生達が立ち去っていくのを確認し、大貫はすぐに春奈達の元へと駆け寄った。


「――え? あ、うん……、ケガとかは大丈夫…………」


「ホントに? よかったぁ~~~……」


大貫の質問に、春奈は正直に答え、春奈達の姿を見て、特に目立った外傷等も無い事を確認し、大貫はホッと息を付いた。


若月も歩み寄り、大貫達に心配される中、春奈はある方向が気になり、ふと、彼がいた場所へと視線を向けた。


「――――あれ……? もういない…………」


つい先程までいたはずの、少し離れた位置に居た、穂高の姿を春奈は探すも、既に穂高の姿は見当たらず、春奈は穂高の姿が見えなくなった事に、寂しさを感じていた。


誤字報告ありがとうございます。

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