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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第九章 夏休み
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姉の代わりにVTuber 140


「お、おいッ! お前ら! 何やってる? こんなとこでッ!?」


大貫おおぬき若月わかつきの姿を見付けた穂高ほだかは、大貫達に駆け寄るなり、慌てた様子で声を掛けた。


「お、おぉ~~……、天ケあまがせ

天ケ瀬こそこんなとこで、どうしたんだ?? 他の皆は?」


「何呑気な事聞いてんだ? 他の奴らなら、今、小休憩中だよ。

3-Bのキャンプ使ってる……、今帰ったら、出くわすぞ??」


慌てる穂高に対して、危機感のない大貫の反応に、穂高は若干苛立ちを感じつつも、状況を大貫達に伝えた。


「え? マジで??

や、やべーー……、俺らもこれから休憩する予定だったのに…………。

どうしよう」


穂高の話を一通り聞くと、大貫は、今度は若月の方へ視線を飛ばし、助けを求める様に声を上げた。


「どうするも何も、俺達の方でずらすしかないだろ?」


大貫と若月が相談を始め、その会話を聞きながら、穂高は少しずつ状況を、頭の中で整理していった。


大貫と若月の手には、焼きそばやたこ焼き等が入った、プラスチックのパックを持っており、まさにこれから3-Bの生徒達が用意した、ビニールシートの上で食べようと計画しているように見えた。


(食べる気満々だったんだな……。

――でも、幸いにも杉崎すぎさき四条しじょうの姿はまだ無い、

飲み物でも買いに行ったのかは知らないけど、まだチャンスはあるな……)


穂高は簡単に考えを纏めると、自分だけではこの状況を打開できないと考え、あきらにも協力を求めようと結論出した。


「――一先ず、お前らは杉崎と四条と、いち早く合流しろ!

少しでも、時間を稼ぎつつ、3-Bのキャンプに戻れよ?

俺はその間に、彰に協力して貰ってあの団体を動かす。

既に数分休憩を取ってるし、彰が指揮すれば、すぐ動くだろ……」


穂高は口早に大貫と若月にそう伝え、大貫と若月も、それ以外の考えは思い浮かばなかった為、すぐに穂高の意見に賛成する。


「よし、じゃあ、俺達は春奈はるなと合流。

天ケ瀬たちは引き続き、俺らと3-Bの生徒が接触しないように、頼むな?」


「ふざけんな、頼むのはこっちだ……。

俺と彰は上手くやってる。

こんだけ協力してやってんだ、変なヘマすんなよ?」


余計な仕事を増やされた事で、穂高は大貫達に不満を感じており、少しでも仕返ししようと、わざと嫌味っぽく返事を返した。


「――うっ…………、分かってるよぉ……。

気を付ける……」


「当然だ。

――あの団体を移動させたら、俺がお前たちに知らせに行く。

春奈達と合流したら連絡いれろよ?」


穂高は冷たく大貫達にそう言い放ち、その場から離れようとした、その時だった。


「――――はぁはぁ……、急に走り出したと思ったら……。

大貫達のとこに行ってたのね?」


大貫達から視線を切り、彰達の居る団体へと視線を移したその時、穂高の後を追っていた聖奈せなが、息を切らしながら穂高に声を掛けてきた。


穂高はそんな聖奈に一瞬、ヒヤリとしたが、聖奈以外には、大貫と若月がキャンプに戻ってきた事に、気付いてる生徒はいなかった。


(――ここで、妙に騒がれても面倒だしな…………。

少し強引でも、大貫達からは離れた方が良いな)


後を追ってきた聖奈に、穂高は驚きつつも、対処をする為、すぐに行動に移した。


「悪い、ちょっと友達と話があっただけ。

もう用事終わったから、戻ろう?」


穂高はそう言いながら、にこやかに微笑みながら、聖奈の手を取った。


「えッ!? えッ!?

ちょ、穂高君ッ!?」


穂高の突然の行動に、聖奈は驚きの声を上げる事しか出来ず、体を緊張させたまま、穂高に連れられるように、大貫達の前から立ち去った。


「――な、なぁ……。

天ケ瀬ってあんな、イケイケなイメージだっけ??

何か、女慣れしてるっていうか……、堂々としてね?」


顔を真っ赤にさせる聖奈と、まるで動じることなく、聖奈の手を引く穂高の後ろ姿を、呆然と見つめていた大貫は、ポツリと呟いた。


「た、確かに意外だな……。

そのへんのチャラ男よりも、チャラ男じゃないか??」


「――お、俺……、負けてね?

な、何かとは言わないけど……。負けてね??」


スクールカーストでは、上位の二人だったが、穂高の女性の扱い、あしらい方には、目を見張るものがあり、大貫は、春奈の事に対しては、不甲斐ない姿ばかりを見せていた為、穂高の行動に、微かに劣等感を感じていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


大貫達と別れて数分後。


穂高は、予定通り彰の協力を仰ぎ、3-Bの団体の移動に成功していた。


休憩を挟んだことで、3-Bの生徒達の気力は回復し、再び、活力あふれる生徒達が多く見受けられた。


「――――どこ行った? アイツ等……」


団体の移動に成功した穂高は、大貫達に言ったように、キャンプから離れた事を、大貫達に伝えようとしていた。


大貫は、首から防水ポーチをぶら下げ、携帯を所持していたが、穂高は海の家のロッカーに、携帯を置いてきてしまった為、この事を伝えるには、海の家に一旦戻るか、直接本人に伝える他、方法が無かった。


大貫から場所を聞き、それほど探すのに手間取らないと判断した穂高だったが、中々、大貫達の姿が見えず、辺りを見渡す。


(行き違ったか??

だとしたら、俺の行動は無駄足だったわけなんだけど……)


大貫達が見当たらない為、行き違いの可能性もある為、もう少し探したら、この場所で会うのは諦めようと、そんな事を考えたその時、穂高は大貫達の姿を見つけた。


「あれか!」


思わず声を漏らした穂高だったが、すぐに大貫達の元へとは向かわず、大貫の他に、春奈達がいない事を確認する。


(杉崎は……いないな…………。

アイツ等、こんなところで、二人で何してんだ??)


春奈達がいない事に違和感を感じつつも、穂高にとっては都合がいい為、大貫達の元へと駆け寄った。


「大貫ッ! 

――――やっと見つけた……。

3-Bの移動は完了したぞ? もう戻っても問題無い」


「おッ? 天ケ瀬~~~ッ!

そうか、良かった~~~。

案外早くて助かった」


大貫に駆け寄るなり、すぐに報告を入れる穂高に、大貫は安堵の表情を浮かべ、ホッと息を付きながら答えた。


「杉崎達は??

一緒じゃないのか?」


「あ、今、丁度お手洗いに行ってる。

天ケ瀬に、ちょっとでも時間稼げって言われたから、手始めに、トイレとかで時間稼ごうと…………」


「なるほどな…………」


大貫の言葉を聞き、穂高は何気なしに、お手洗いへと視線を向けた。


穂高が視線を向けると、偶然、丁度春奈達が手洗い場から姿を現した。


「やべッ」


顔を見られたら、せっかくの大貫と春奈達の少数グループを、壊しかねないと考えた穂高は、春奈と目が合う前に視線を逸らした。


(要件も伝えたし、変に杉崎と接触して、このグループにご一緒する……、なんて流れになっても困るしな……。

とっとと退散しよう……)


穂高は大貫達の邪魔をしない為、その場から立ち去ろうと決心した。


簡単に一言、大貫達に別れを告げ、その場から離れようとしたその時、若月の声が穂高の耳に入る。


「お、おい……、あれって…………」


不穏な空気を孕んだ若月の言葉は、穂高の足取りを止めるには充分な理由になり、若月の言葉に反応するように、穂高は振り返った。


若月の表情は、少しだけ険しいものになっており、大貫に伝える様に、どこかを指さし、穂高も若月の指さす方向へと、視線を向けた。


「――――な、なんか、ヤバくね……?」


若月の指さした方向を見た大貫は、少し焦った様子で呟き、穂高も状況の悪さに、少し顔をしかめた。


若月の示す場所には、春奈と瑠衣るいの姿があり、春奈と瑠衣は、お手洗い場を出て、数m先で、数人の成人男性へ囲まれていた。


「ナンパ…………か?」


それ以外に考えられない光景に、穂高はポツリと呟いた。


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