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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第九章 夏休み
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姉の代わりにVTuber 138


 ◇ ◇ ◇ ◇


穂高ほだか君ッ! 今度アレッ! かき氷食べようッ!!」


ビーチバレーのトーナメントを終え、決勝戦を観戦していた穂高は、愛葉あいば 聖奈せなと遭遇し、決勝戦を共に観戦すると、約束通り、バナナボートに付き合っていた。


バナナボートをひとしきり楽しんだ後、穂高はテンションが高めな聖奈に連れられ、かき氷屋へと連れ回されていた。


「休憩がてらに、良いな……。

そういえば、まだ海に来て食べて無かったし…………」


「ねッ? 定番だしねッ!!

ほら! 並んじゃおうッ」


かき氷屋を目にした穂高は、純粋に聖奈の意見に同意し、聖奈は穂高の言葉を聞くと、一足先に行列へと向かっていった。


穂高もそれに続こうと、聖奈を追いかけようとした時、不意に後ろから、声が掛かる。


「お、おいッ……、穂高。

俺達はいつまで拘束されるんだ??」


小声ではあったが、少し鬼気の迫る様な、焦りの色を見せる声色に、穂高は振り返ると、そこには、少しやつれた表情の瀬川せがわの姿がそこにあった。


「拘束って……、失敬な。

普通に聖奈達が気が済むまでだろ?」


「嘘だろおい……」


穂高の言葉に絶望の表情を浮かべる瀬川だったが、穂高との会話は、すぐに他の女性生徒に遮られた。


「瀬川君も食べたい? かき氷」


「――え? あ、えぇ~~……、そうだな…………」


「よしッ! じゃあ、うちらも並ぼうッ!!」


瀬川はそう言われ、声を掛けてきた数人の女子生徒に手を引かれ、聖奈の並ぶかき氷屋へと、導かれるように向かって行った。


瀬川が連れて行かれる刹那、助けを求めるような表情を、穂高に向けていたが、穂高はそこで助けるわけにはいかず、首を横に軽く振り、穂高のそんな答えを見て、瀬川は再び絶望の表情を浮かべていた。


(悪いな瀬川……。

最後まで付き合って貰うぞ?)


連れてかれる瀬川に心の中で簡単に謝罪した後、穂高は今度は、もう一つのグループへと目をやった。


(彰は協力的か……。

まぁ、当然だな)


穂高は、瀬川とは別に、彰も聖奈達とのビーチの予定に誘っており、楽しそうに笑顔を見せる彰を見ながら、状況を確認した。


 ◆ ◆ ◆ ◆


遡る事 数時間前。


ビーチバレーが始まる前、穂高は、彰、大貫おおぬき若月わかつきの四人で、今後の予定に付いて話していた。


「う~~~ん、どうやって、春奈と二人きりのタイミングを作れば良いのか……」


大貫は、難しい表情を浮かべ、どうにか春奈と、更に親密になれるチャンスを、作り出せないかと考えていた。


大貫も春奈も、クラスの人気者という事もあって、常に誰かが居る状況、人に囲まれる状況が多い二人であり、大貫の提案で、クラスメート全員でビーチに訪れた時点で、難しい問題になりつつあった。


「大貫と杉崎の二人きり……、ようは他の関係ない生徒を、引きはがせば良いんだよな??」


悩む大貫に、穂高は飄々とした様子で、問題の再確認をした。


「そ、そうだな……、希望は二人きり……がいいけど、この際、そこまでのワガママは言わない……。

今の大きな団体から、数名抜ける程度の感覚で良い」


「ふ~~ん、ならあんまり難しい事でもないんじゃないか??

なぁ? 彰」


中々良い案が出てこなかった若月と、彰だったが、穂高はそうでは無く、一つ良い案が思いついており、彰に共有させるかの様に、彰に尋ねた。


「な、なぁって言われても……。

何か思いついてるのか? 穂高??」


彰も思い浮かんでいるだろうと言わんばかりに、彰に話を振った穂高だったが、彰は何も思いついてはおらず、困り顔で、穂高に再度聞き返す。


「いや、丁度、俺達が団体から抜ける予定が午後にあっただろ??

聖奈せなの友達……、女子生徒から、お前と瀬川も誘われてただろ?」


「え……? あ、うん……。 まぁ、誘われたし、行く事にはなったけど…………」


穂高の問いかけに、彰はどうも穂高の考えが読めておらず、ピンと来ていない様子の、返事が続いていた。


「どうせ、クラスメートの大きな団体からは外れる事になるんだ。

連れてけるだけ連れて、団体から抜けようぜ?」


「連れてけるだけ……?

――ま、まぁ、そうすれば、春奈と二人きりになるチャンスは増えるかもだけど……、どうやって??」


彰の質問に、段々と乗り気になってきたのか、穂高はニヤリと笑みを浮かべながら、彰に続けて答える。


「お前と瀬川の力を使うんだよ?

イケメンで人気者……、しかも、直近で言えば球技祭のヒーローだ。

お前ら二人が懇切丁寧に、女子生徒を一人ずつ誘えば、簡単に大所帯になるだろ??

残った男子生徒には、俺が上手く言って集めとくよ」


「は、はぁ!? そ、そんなの上手くいくのか??」


あまりに突拍子も無い提案に、彰は協力する事の是非よりも、成功するかどうかの方を尋ねた。


「彰と瀬川が勧誘すりゃ余裕だろ?

女子生徒が多ければ多い程、俺が勧誘するつもりの男子生徒も多く、芋蔓式で釣れる算段だしな??」


ニヤニヤと悪い笑みを浮かべる穂高に、今度は、今まで黙って話を聞いていた若月が、声を上げる。


「――――天ケ瀬。

女子の方の誘い方は何となく分かるけど、お前が誘うつもりの男子生徒はどうするんだ?

なんて吹き込むつもりだ?」


「吹き込むって…………。

まぁ、普通に、午後、ビーチバレーの後で、大人数でバナナボートやらのレジャーに行くけどどうか?ってまずは無難に誘うかな~~。

それで、なびかなきゃ、大貫と若月がその団体に居ない旨と、女子生徒が多く参加する事を伝える。

午前中で、ほとんどの男子生徒が気づきつつあったけど、やっぱりお前ら人気者は、良くも悪くも人を集めすぎなんだよ……。

武志たけしみたいに、このイベントで彼女をって考えてる男子生徒は少なくないし、大貫みたいに機会があればと思ってる男子生徒も大勢いる。

でも、ほとんどの女子生徒は若月達に付きまとうし、チャンスなんてあったもんじゃない……」


「な、なるほどな…………。

俺と俊介しゅんすけが、その団体に居ないという事も、大きな意味があるのか」


穂高の出した案と、説明に、若月は納得させられ、自分ではまるで良い案が、思いつかない大貫は、目を輝かせながら穂高を見つめていた。


「いッ、いやッ! そんな上手くいくのか??

だ、第一、瀬川が協力してくれるかどうか……」


「なんだかんだ優しい奴だから、そこは心配いらないだろ?

貸しにしてやれば、文句は言うだろうけど、協力はしてくれる……。

――――というか、彰?

お前が俺までも、こんなことに巻き込んでるんだ。

女子生徒を大勢引きつれるのは、お前が何とかしろ。

何の為のイケメンだ?? あぁ??」


穂高は自分で考えた作戦ではあるが、女子生徒の引き抜きは自分では難しいと考えており、自分で提案しておきながらも、彰の美貌に嫉妬し、最後は脅迫まがいに協力を促した。


「イケメンじゃないし、少なくともこんな事に使う為にある容姿じゃないだろ……」


半ば強制的に、女子生徒を誘う事になった彰は嘆いていたが、勿論、穂高の出した意見は実行する流れになりつつあり、細かい所の打合せを大貫達と進めていった。


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