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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第八章 地獄企画にて
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姉の代わりにVTuber 119


 ◇ ◇ ◇ ◇


時は少し遡り、リムとチヨの配信一日前。


穂高ほだかは満足のいく企画の動画を、数日前に撮影し終え、再び外泊届を受理してもらった美絆みきと自宅で休日を過ごしていた。


「――――よくもまぁ、何度も外泊届が受理されるもんだな?

病院の医者でも買収してるのか??」


自宅に戻ってくるなり、配信の準備を始める美絆に、穂高は呆れた様子で呟いた。


「そんな事……、出来るわけ無いでしょう??

リムのサインを書いてあげたぐらいだよ……」


「あぁッ!? 買収してるじゃねぇかッ!?

――っていうか、身バレはッ!?!?

そんな事したら危ないだろ??」


予想だにし無い事に、穂高は思わず声を荒げた。


「大丈夫だよ~~。

ってゆうか、入院して間もなくお医者さんには説明してるし……。

守秘義務もしっかりしてる、会社が勧める病院なんだから問題無し!」


「――ホントかよ…………」


穂高は半信半疑で呟き、その会話の流れのまま、美絆に言った身バレの件で、気になる事があり、続けて美絆に話しかけた。


「そういえばさ、『チューンコネクト』の中で身バレしちゃってるタレントって、結構いるんだよな??」


「はぁぁ~~?? 穂高ぁ……、そんな夢の無い事、お姉ちゃんに聞かないのッ!」


「いやッ! そうゆうじゃなくて、真面目な話!!」


穂高は誤魔化そうとした美絆を逃がさず、きちんと答えを貰うために追及した。


「えぇ~~~? あんまりこうゆう話はしたくないけど、バレちゃってる子はいるよね……確かに」


「あ、姉貴の同期で言えば??」


「はいぃぃいい?? 変な事聞くね……、穂高……」


強引な追及の為か、穂高の行動は不審がられ、作業していた美絆は手を止め、穂高へと視線を向けた。


「――こ、今後の事も考えて……、身バレも、どのあたりが安全ラインなのかと……」


「身バレ自体が駄目だからッ!!」


美絆に疑いの眼差しを向けられた事で、穂高はとっさに言い訳を吐いたが、穂高の言い逃れは有効でなく、増々美絆の警戒を強めた。


警戒を強めた事で、穂高はここまでかと諦めかけた時、今度は美絆の方から話し始めた。


「――はぁぁ~~、何を知りたいのかよく分からないけど……、ここまで手伝ってくれてる分、教えてあげるよ…………」


美絆はため息交じりに呟くと、穂高の知りたいことに付いて話し始める。


かんなぎ サクラはVtuberになる前、いや、なった後も絵師として活動してるから、顔バレ程度には身バレしてるね?

最近は無いみたいだけど、Vtuberになる前は、イベントなんかも出てたみたいだし……。

――あと、同期で言うなら予知見よちみ チヨかな……?

チヨもVtuberになる前は、別の名前でストリーマーとして活動してたし、そっちではマスク有りだけど、顔も出してたみたいだし、身バレはしてるって言えるかもね~~」


「――そっか…………」


穂高は美絆の言葉を聞き、確認したい事が確認でき、ホッとしたようにポツリと呟いた。


「まぁ~~、そう考えると私とエルは、まったくの音沙汰無しだねッ!!

凄くない?? 結構、お姉ちゃんこれからもバレない自信あるよッ!?」


「――買収してる奴が何言ってんだ……。

エルフィオはともかく、姉貴は時間の問題だろ?」


自信満々に、得意げに話す美絆に、穂高は聞きたい事も聞けた為、冷たく言い捨て、その場から離れようとした。


「――穂高ッ」


準備を進める美絆の邪魔をしない為に、その場から離れようとした穂高だったが、美絆によって呼び止められた。


「なに??」


穂高の問いかけに、美絆はゆっくりと息を吐いた後、真剣な表情で、穂高を一点に見つめ話し始める。


「――もうすぐ戻るから…………」


ハッキリとした声で告げられた美絆の言葉に、穂高は美絆が何を言わんとしているか察しが付いた。


「そう……、良かったな……?」


「――――うん、今までありがと……」


穂高は美絆の言葉に、一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに優しく微笑み返事を返し、美絆はそんな穂高の言葉に素直に感謝を述べた。


美絆のお礼を聞き遂げると、穂高は今度こそ、その場から離れていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


チヨ、リムコラボ当日。


今まで準備してきた事の当日という事もあり、美絆は朝から少しだけ慌ただしく過ごしていた。


「――病院から届け出を出してもらってとはいえ、未だ病人なのは変わらないんだから、安静にして欲しいわね~~」


日曜日の朝から動き回っている美絆を見て、母親である静香しずかは心配そうに呟いた。


「心配なら注意すれば~~?」


以前の外泊の際も、配信の為に尽力していた美絆を知っていた穂高は、止めても無駄な事を知っていた為、過剰に気にすることは無く、朝食を取っていた。


「私から言ってもお姉ちゃん、聞かないでしょ~~?

穂高から言ってよ~~」


「無理。

とゆうか、俺は姉貴側だから……」


キッパリと拒否する穂高に、静香は「えぇ~~」っと声を上げ、依然として困った様子だったが、そんな静香を見ても、穂高が取る行動は変わらなかった。


穂高は朝食のトーストを食べ終えると、今度は自室で準備を進め始めた美絆の元へと向かった。


「――何か手伝うか?」


「んん~? あ、もう大丈夫……。

ある程度準備はできてるし…………」


「そ……」


美絆の言葉に穂高は軽く返事を返し、普段であればすぐに、その場から離れるであろう穂高だったが、内容が内容の為、穂高も若干ソワソワとしており、落ち着かない様子だった。


「えっとぉ~~、チヨの方は大丈夫なのか?

――こればっかりは、同期である姉貴やサクラ達に、どうにかしてもらった方が良いと思って、俺からは何も出来てないんだけどさ……」


穂高は今日、この日までチヨの一件に関しては、あまり力に成れているとは思えず、チヨが復帰するまでのメンタルケアは、姉である美絆を中心とした六期生で行っていた。


「う~~ん、まだ不安に思うところもあるけど、ある程度までは回復できてるとは思うから、大丈夫だと思う。

――あとは配信してみてって感じだね?

まぁ、何が起こったとしても、全力でフォローして、リハビリに付き合うつもり……。

その為の私とのコラボだしねッ!!」


穂高の問いかけに、ハッキリと断言はしなかったが、美絆はそれでも弱気では無く、むしろ強気答えた。


「頼もしい限りだよ……」


「穂高の先輩リムだからね~~~」


「いや、俺は所属してねぇから」


いつもの調子で、姉弟の軽いやり取りも交わせるほどに、美絆は落ち着いており、穂高もそれ以上不安を感じる事は無くなった。


「――それより、穂高!

動画の方……、期待してるからね??」


「そっちの方は任せとけ!

――きっと度肝抜くぞ?」


穂高はニヤリと笑みを浮かべ、美絆に返事を返し、その言葉を最後に、美絆の部屋から去っていった。


そして、リムとチヨのコラボの準備は整い、遂に運命の配信が始まる。




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