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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第七章 球技祭 
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姉の代わりにVTuber 114


 ◇ ◇ ◇ ◇


体育館連絡通路。


春奈はるなは、あきらから、穂高の居場所を聞き、駆け足で校舎へと向かっていた。


少しだけ息を切らしながら、目的の体育館裏へと向かう為、少しだけ見通しの悪い、曲がり角を曲がった時だった。


「うおぉッ!」


目の前に飛び出してきた春奈に、ぶつかりそうになった男子生徒は思わず声を上げ、春奈もギリギリのところで、ぶつからずに踏みとどまった。


「――あッ! ごめんなさ……、って天ケあまがせ君ッ!?!?」


春奈は、ぶつかりそうになった男子生徒の顔を確認すると、目の前には穂高の姿があり、穂高の突然の登場に驚き、少しだけ声が裏返った。


杉崎すぎさきか……、急に出てきてビックリした……」


「ご、ごめん!」


「――――そんなに急いでどうした?

もうそろそろ昼だぞ??」


ぶつからなかった事に、穂高はホッと息を吐き、時間的に球技祭は、一時、お昼休憩に入るタイミングだった為、珍しい時間帯に、何やら急いでいた春奈に、今度は質問をした。


「――え、えッ? あ、あぁ……、体育館にちょっと忘れ物を…………」


「忘れ物……、こないだ南室なむろ駅近くの、お店で会った時もそうだけど、意外と杉崎って、おっちょこちょいなんだな……」


「――そ、そうかも……、ははははッ…………」


咄嗟に出た言い訳に、穂高はいいように勘違いをし、上手く誤魔化せたとはいえ、変な誤解をされた春奈は、思わず乾いた笑みを浮かべた。


「――じゃあ、探し物、見つかるといいな」


特にそのまま立ち話をする事も無い穂高は、簡単に別れを告げようとその場から離れようとした。


「ちょ、ちょちょっと待ってッ!」


一歩目を踏み出した穂高に、慌てて春奈は呼び止めてしまい、よく話す内容も考えていなかった為、引き留めたはいいものの、中々二言目が続かなかった。


「――ん? どうした?」


要件が中々でない春奈に、穂高は促す様に春奈に問いかけ、穂高の問いかけにより、春奈はゆっくりと話し始めた。


「え、えぇ~~とさ……、そのぉ~~、天ケ瀬君はここで何してたのかなぁ~~って……。

ほらッ! あきら瀬川せがわ君達は先に、教室に戻って来てたし……」


春奈は目を泳がせながら、少しだけ挙動不審気味に尋ね、春奈の様子を不思議に思いつつも、穂高はここにいる理由を、聞かれると思っていなかった為、返答に少し困った。


「――ちょっと、他のクラスの友達と話してたら、戻るの遅れちゃってな……」


「そ、そうなんだ…………」


ある程度の事情を把握する春奈は、心の中で「はぐらかされた」と思ったが、穂高の言い訳に、納得する素振りを見せるしかなく、ポツリと呟くように相槌を打った。


「要件は以上??」


沈黙してしまった春奈に、穂高は優しく尋ね、目の前の春奈に違和感を感じながらも、それを指摘する事はなかった。


「――え? あ、うん……。

ごめんね? 引き留めて……。

バスケ、頑張ってねッ」


「俺じゃ無く彰とかに期待した方がいいぞ?

――じゃあな…………」


単刀直入に聞けるような状況にない春奈は、少しだけ寂しそうに微笑みながら、穂高に要件が無い事を伝え、穂高は気さくに返事を返した。


そして、穂高は再び歩み始め、春奈はじっと離れていく穂高の後姿を見つめる。


(――聞けなかった…………。

もう、告白は終わった後なのかな……。

告白されたとして、天ケ瀬君は何て答えたんだろう)


春奈の中で疑問は募り、どんどんとそのモヤモヤとした気持ちが募っていく。


(もし、天ケ瀬君が誰かと付き合ったとしたら、もう、私の夢には協力してくれないのかな……。

――――もう、こうやって何気なく声を掛ける機会も………………)


「天ケ瀬君ッ!!」


先程よりも力強い声で、春奈は再び、先程よりも遠ざかっていた穂高を呼び止め、穂高を呼び止めたその声は、春奈が意識をする前に自然と、反射的に出た声であり、声を出した本人自体も一瞬驚いていた。


春奈の良く通る、綺麗な声は穂高の耳へと届き、穂高は自然と春奈の方へと振り返った。


「何度も、呼び止めてごめんね?

――――ちょっと、天ケ瀬君に話があるんだ……。

お話……、いいかな?」


咄嗟に呼び止めた春奈だったが、穂高が振り返るとすぐに腹を決め、校舎裏での事を聞く為に、話の機会を持ち掛けた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「――以上が私が聞いた話なんだけど……、どうなの?」


春奈は、穂高が告白されているかもしれない事情、彰から穂高はあおに呼び出され、体育館裏へ向かったという話を、一通り穂高に話した。


「彰の奴……、余計な事を…………」


別に特段隠す気も無かったが、言うつもりは、それ以上に無かった為、春奈にやすやすと、放課後裏に呼び出されていた事を伝えた彰に、穂高は小声で恨み言を呟いた。


「や、やっぱり……、告白とか……されてたの……?」


春奈は恐る恐る穂高に尋ねたが、穂高はそれを答える前に、質問を質問で返す。


「えっと……、それを答える前に、杉崎はなんでそんな事を気にするんだ?」


「えぇッ!? え、えぇ~~と…………」


穂高は碧の事も考え、勝手に他人にペラペラと、校舎裏での出来事を言うつもりはなく、春奈がそれに対して気にしている事も疑問に感じていた為、春奈にその理由を尋ねた。


春奈は、すぐには答えを考えられず、言い淀んだが、ここまで来て引き下がることも出来ず、頭をフル回転させた。


「あ、あの! あれだよ! あれッ!

天ケ瀬君はほら、私の夢の協力もしてもらってるわけだし……、もし万が一、彼女とかが天ケ瀬君に、できたりしたら気を使わせるかもだし……。

――じゃ、邪魔な存在になるかもだし…………」


咄嗟に思い浮かんだ言い訳だったが、春奈はどんどんと自分で言っていて、気分が落ち込んでいき、最後の方は声が尻すぼみになっていた。


(気を引き締めて、会話に誘ったのに……、我ながら情けない…………)


春奈は、自分なりに、ある程度の覚悟を持って、穂高を会話に誘ったが、言い訳と言い、ハッキリとしない自分の物言いに、少し情けなく感じていた。


「いや、まぁ、確かに、恋人が出来たらそうなるのかもしれないけど……。

恋愛とか……俺には関係の無い話だし。

仮にそうなったとして、杉崎がそこまで気にする事か?」


「き、気になるよッ! 気にするなって言われたとしても……。

私だったら、好きな人に、他の女の子と親しくされたら……、い、嫌だし…………」


穂高は珍しく、春奈のそんな女子らしい部分を聞き、驚いた表情を浮かべた。


「――そうゆうもんか……? 杉崎もそうゆうの気にするんだな……。

クールなイメージが、学校じゃ定着してるし、てっきり気にしないものだと……」


「気にするでしょ! 普通!!

天ケ瀬君の中で、私はどうゆうイメージなのぉ…………」


穂高の反応を残念に思った春奈は、一瞬ため息を付き、落ち込んだが、重要な事は未だ聞けておらず、春奈は再び、詰めるように穂高に質問をする。


「――そ、それで……? ど……、どど、どうなの??」


春奈は言い淀みながらも、しっかりと追及を止めず、それでも穂高の顔を見る事は出来ず、視線は穂高から逸らしていた。


ショートヘアーの髪を、耳に掛けながら、頬を赤く染め、尋ねて来る春奈に、穂高は一つ息を吐き、観念したように話し始めた。


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