表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第七章 球技祭 
114/228

姉の代わりにVTuber 112


「お、おう……、お疲れ……」


息を切らせてまで現れた春奈はるなに、あきらは少しだけ驚きつつも、まずは素直に返事を返した。


彰の返事を聞いた春奈は、彰や瀬川達の顔を見渡し、再び彰へと視線を戻すと、続けて彰に声を掛けた。


「天ケあまがせ君は?」


「え? 穂高ほだか?? 穂高ならさっき……。

――――あぁ、そうゆう事か……」


春奈に尋ねられ、始めは不思議そうにしながら、春奈の質問に答えていたが、彰は何かに気付くと、意味ありげにポツリと呟いた。


そして、数分、難しそうな表情で考え込んだ後、今度は彰から春奈へ話題を投げかける。


「――――えっとさ? ここでは話しずらいし、春奈も聞きたいことがあるようだし、場所変えない??」


「え……? あ、うん……」


彰の急な提案に、春奈は一瞬驚き、困惑したが、彰の動向以上に、早急に知りたいことがあった為、頭を切り替え、彰の言葉に従った。


「――なんだぁ? なんかあったのか??」


彰と春奈が教室から出て行くのを、瀬川せがわ武志たけしは呆然と見つめており、事情が全く分からない武志は、瀬川に何か知っている事が無いか尋ねた。


「いや、俺も何が何だか……。

杉崎すぎさきさんと楠木くすのきが一緒にいる事は、ごくごく普通ではあるけど、天ケ瀬の話をしてたしなぁ……。

天ケ瀬関連で何かあったのかも…………」


「アイツ、またなんか悪さしたのかぁ~~?」


瀬川の言葉を聞き、武志は興味を失ったのか、携帯を弄り始め、悪態をつくように呟いた。


しかし、興味を失い始めた武志に対し、瀬川は何か引っかかる様子で、何かを思い出す様に、難しい表情を浮かべていた。


「天ケ瀬関連…………。

杉崎さんと楠木……、バスケ部……、バスケ部…………。

――――あッ!!」


「――なんだ急に……。

何か思い出したのか??」


難しい表情を浮かべていた瀬川は、引っ掛かっていた何かを思い出し、急に大きな声を上げた事で、武志は少しだけ怪訝そうな表情を浮かべながら尋ねた。


「――ちょっと偶々噂で聞いて事があって……。

偶々、少しだけ居残り練習をバスケ部でしてた時にな?

先に上がった、女子バスケ部の話声を聞いちゃって……。

俺らより一個下の世代、後輩だったと思うんだけど、同じ学年の友達と話してて。

――――そこで、天ケ瀬の話が出てた事があったんだ」


「穂高の~?? なんで?」


携帯を操作していた武志の興味は、完全に瀬川の話へと移り変わり、話に食いつくように、瀬川により詳細な話を尋ねた。


「――そん時は、俺も聞き間違いかと思ってたんだけど……。

話してた一人の女子生徒が、天ケ瀬の事を好きだって、言ってるところ聞いちゃって……。

――――これは、多分憶測なんだけどな? 天ケ瀬、告白されるんじゃないか??」


瀬川は話している途中で、この話題は武志に話してはいけないとも、一瞬思ったが、話し始めてしまった以上、途中で話を止める事は出来ず、最初から最後までを武志に伝えてしまった。


そして、瀬川はいつものように、武志が嫉妬に狂う事になると、緊張の面持ちで、少しだけ身構えていたが、瀬川の予想に反し、武志がそのような事になる事は無かった。


「――ふ~ん、告白ね……」


「え…………?」


肩透かしをくらったような状況に、瀬川は呆けた声を漏らし、そんな瀬川を気にする事は無く、武志は再び携帯を触り始めた。


「――――信じてない……のか?」


「――え? あ、あぁ……、信じてるよ? 半分はね……。

でも、別に騒ぐ事でもないだろ……」


「は……? ど、どうしたんだ? 頭でも打ったのか……?」


一番予想もしていなかった武志のリアクションに、瀬川は大きく困惑し、いつもの調子とは違いすぎて、武志の体調を瀬川は心配し始めた。


「失礼な……、別に頭も打ってないし、いつも通り正常だよ!」


「正常なわけあるかッ! 

いつもの松本なら、絶対騒ぐだろ!!」


「はぁ~~~、瀬川は俺をなんだと思ってるんだ…………」


盛大にツッコんだ瀬川に対し、武志はため息交じりに呟いた。


そして、真面目な雰囲気のまま、瀬川に話し続けた。


「別に、初めての事じゃないしな? 穂高が告られるのなんて……。

――――それに、なにより俺は…………、いや、彰もか……、多分、穂高がなんて返事を返すのか、分かり切ってる……」


いつもよりも真剣な様子で話す武志に、瀬川は驚きつつも、淡々と話す武志の言葉の意味を、瀬川はすぐに、上手く理解する事は出来なかった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「――で? 穂高の事だっけ??」


校内の人気のない場所へと訪れた彰は、春奈へと向き直ると、いきなり本題を切り出した。


「うん。

――でも、私の聞きたい事はさっきの事だけで、他にないよ?

天ケ瀬君の居場所を聞きたいというか……、なんというか……」


「なんで、いきなりしどろもどろになるんだよ……。

穂高の居場所でしょ? 知ってるっちゃぁ、知ってるよ」


「――ホントッ!?」


彰の言葉に、春奈の表情は少しだけ明るくなり。そんな春奈の表情を見て、彰は少しだけ胸の辺りに、痛みを感じたが、罪の意識を感じながらも、これから取る行動を、彰は変えるつもりはなかった。


「――穂高の居場所を教える代わりに、一つ、春奈に教えて欲しい事があるんだけど……」


「え……? う、うん……、なに??」


戸惑う様子の春奈に、彰は大きく息を吐き、気を引き締めると、真っ直ぐに春奈を見つめ、尋ね始める。


「春奈は、穂高の事が好きなの?」


「――え……? え、えぇ~~ッ!?」


真剣な面持ちで尋ねる彰に、一瞬思考が停止した様子だった春奈は、我に返ると、一気に顔を赤らめ、明らかに動揺した様子を見せた。


そして、そんな春奈を見て、彰は少しだけ表情が曇る。


「い、いやッ! 好きとか……、別に、まだそうゆうんじゃなくて……。

純粋に、仲良くなりたいなぁ~~、なんて……、そんな風にしか考えられてないんだけど……」


「そう……、仲良くなりたいだけ…………」


彰は、ここで春奈がはっきりと明言しなかった事で、少しだけホッと息を付き、そして、再び詰める様に話し始める。


「好きとか、付き合いたいとかは流石に違うか……。

――まぁ、穂高と春奈とじゃ、釣り合ってないかもしれないしね?

仲良くしてるグループも違うし、接点もあまり無いでしょ??」


「――え…………? なに……を…………?」


彰は自分で言っていて、心の中にドス黒い何かが、どんどんとうごめき、溜まっていくような、そんな感覚を感じたが、一度決めた以上、自分を嫌いになりそうだったとしても、春奈にそれらの言葉を、伝える事を止めなかった。


そして、彰の思ってもみない言葉に、春奈は呆然とした様子で、思わず声だけが漏れた。


「春奈にはもっとお似合いな人が居そうだし……。

流石に、早とちりだったかぁ~」


彰は自分でも驚くほどに、すらすらと言葉が出ていき、春奈はだたぞれを黙って受け止めた。


そして、彰は何より、揺るぎない事実を続けて春奈にぶつける。


「――――それに、穂高は誰とも付き合う事は無いよ?

俺の知ってる、穂高であれば……、絶対に…………」


彰は鋭い目つきで、冷たく言い放つように、春奈に伝え、罪悪感を少し感じつつも、後悔は彰の中に一つも無かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ