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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第七章 球技祭 
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姉の代わりにVTuber 111


 ◇ ◇ ◇ ◇


「――え、えぇ~~と……、二年生の真鍋まなべさんだっけ……?

俺なんかに、何の用かな?」


穂高ほだかは、初対面の女性、あおに呼ばれ、あきら達の前では話せない内容との事で、人気のない体育館裏へと訪れていた。


ついさっき名乗られ、接点がありそうにも無い女性を前に、穂高は様々な思考を巡らし、少し緊張した面持ちで、相手を伺う様に改めて尋ねた。


「あ、天ケあまがせ先輩に、どうしてもお話したい事があって、ご、ごめんなさい……。

今、球技祭の真っ最中で、色々とお忙しいとは思ったんですけど……」


「あ、あぁ、いやッ、別にそこは気にしなくてもいいよ?

俺は別にそこまでの主力じゃ無いしね……」


「い、いえッ! そんな事無いですッ!!

――か、カッコよかったです……」


謙遜などでなく、心から思っている事実を交え、呼び出した形になっている碧に、気を使わせないように穂高は答えたが、そんな穂高の言葉を、碧は真っ直ぐに否定した。


そして、穂高は最後にボソリと呟いた、碧の言葉を聞き逃す事は無く、心の中でその碧の言葉を疑い始める。


(――え? カッコいい??

彰や瀬川せがわ……、大貫おおぬき達がいて、俺がその評価は無いだろ……。

お世辞か…………?)


穂高は目の前にいる碧を疑うが、碧の様子はどこか挙動不審に見え、嘘やお世辞を言えるような余裕が、無いようにも思えた。


(最初、俺に話しかけてきた時は驚いたけど、一体何が目的なんだ……?

――彰とか瀬川達を紹介してほしい……とか、そういう類いのものには考えられないし……。

俺に頼むとしても、この子と俺とじゃ、まず接点が無さ過ぎるしな。

初対面の奴に、いきなりそういった頼み事をするとは、考えられない)


穂高は頭の中でグルグルと、いろんな可能性について考えたが、答えが出るはずも無く、答えを知る為にも、再度、碧に質問を投げかける。


「それで? 結局、俺は何で呼び出されたのかな??」


なるべく柔らかく尋ねたつもりの穂高だったが、年下の女性の接し方などに慣れてるはずも無く、結果的に少しだけ詰めるような印象で、碧に尋ねた。


穂高の言葉に、碧は一瞬たじろぐも、覚悟を決めて来たのか、すぐに気持ちを固め、穂高をここへ誘った理由を話し始める。


「――あ、天ケ瀬先輩ッ! 好きです!!

付き合ってくださいッ!!」


碧は勢いよく頭を下げながら、頼み込む形で告白をし、突然と出来事と、予想もしていない事態に、穂高は驚いた表情のままフリーズした。


 ◇ ◇ ◇ ◇


3-B 教室。


球技祭も中盤へ差し掛かり、イベントの前半に行われたリーグ戦は、終盤へと差し掛かっていた。


競技の中には、試合時間、スケジュールの問題から、試合の殆どを終えている競技もあり、進行はまちまちである状況の中、丁度、試合と試合の間隔に開きがあった、あきら達、バスケチームは教室へと戻ってきていた。


「――なんか、結構ウチのクラスも戻って来てるな?」


「まぁ、昼休みもそろそろだし、次の試合が、昼休み明けな競技も多いんだろ?」


教室に戻り、自分のクラスに、クラスメイトが多く戻ってきている事を、彰は確認すると、興味深そうに呟き、そんな彰の呟きに、時計を確認し瀬川が返事を返した。


そして、そんな呑気な事を言いつつ、教室の中へと入っていくと、教室へ戻ってきた彰達に気付いた、一人の生徒が声を上げた。


「おッ!! 我らがエースが戻ってきたぞッ!!」


一人の生徒の声を皮切りに、3-B組の生徒の殆どが彰達に視線を向け、アッとゆう間に、彰達はクラスメイトに取り囲まれた。


「お疲れ! 彰君!!

大活躍だったね!!」


「瀬川~~、お前の高身長を活かした、ダンクシュート!

マジでカッコよかったぞッ!!」


彰達を取り囲むクラスメイトは、彰達を英雄を見るような目で見つめ、次々と試合の感想や、彰達を労うような言葉が投げかけられた。


そんな状況が数分程続き、彰はクラスメイト達の扱いを大貫や、若月達に任せ、一足先に、瀬川と共にその集団から抜け出した。


「――はぁ~~、まだ優勝してないのに、気が早いよみんな……」


「し、試合より疲れた……」


彰は苦笑いで、ため息交じりに呟き、基本的に人付き合いが得意でない瀬川は、どっと疲れた様子で呟いた。


大貫や若月、糀谷こうじやは元々、そういった雰囲気に慣れている部分もあり、彰や瀬川が抜けた後も、楽し気にクラスメイト達と会話を続けており、そんな三人を尻目に、彰と瀬川はなるべく近くの、人気のない所へ腰を降ろした。


「一先ず、リーグを抜けるのは固そうだな?」


「――天ケ瀬や、大貫達の動きも良くなってきてるし、トーナメントの方も期待できると俺は思ってる」


「だよな!? 俺もッ!」


彰はこのイベントに不穏な空気を感じていたが、蓋を開けてみれば、チームの雰囲気は良いもので、楽しく、それに結果も現時点ではきちんと残せていた。


これから先の試合も、バスケットボール以外での不安要素はまるでなく、試合にだけ集中できる環境にあった。


(――――最初は、どうなる事かと思ったけど……、穂高も智和ともかず達も何の衝突も無く、よくやってくれてるよ……)


彰は心穏やかに、今後の試合も楽しみに心待ちにしていると、そんな彰に、彰のよく知る一人の人物から声が掛かった。


「おいおい~~、良いよなぁ~~~? クラスの人気者たちはよぉ~~~~??」


「ゲッ……」


彰よりも先に、声を掛けてきた人物に瀬川が反応し、瀬川の嫌そうな反応から、彰は顔を見る前に、誰が話しかけてきたのか、容易に想像できた。


武志たけし…………。

相変わらず幸薄そうだな」


彰は話しかけてきた人物が、武志だと確認すると、瀬川同様、少しだけ面倒そうに、返事を返した。


「幸せ絶頂期のお前たちには、俺が幸薄そうに見えるのか~~??

そ~~か、そ~~かッ! いいよなぁ~~? クラスを総合優勝へと導く英雄様達はよぉ~~!?」


武志は完全にヒステリックへ陥っており、こうなってしまった武志を何度か相手している為、彰も瀬川も凄く、今の武志に話を投げかけづらくなっていた。


しかし、放っておいても、ネチネチとひたすらに嫌味を言われるため、瀬川は渋々といった様子で、武志の事情を聞き始めた。


「――――はぁ~~、一体どうしたんだ? 松本まつもと……。

何かあったのか??」


「なんも無いですよぉ~~?? 無いですけどぉ~~~??

――ただ、ちょっとオウンゴール決めて、クラスメイトから大バッシング食らっただけですけどぉ~~~??」


「――――それは……、災難だったな……」


事情を聞いた瀬川だったが、武志の言葉にはフォローのしようが無く、ただ渋い表情を浮かべ、それっぽい言葉を返す事しか出来なかった。


そして、瀬川が上手くフォローを出来なかった為、このままいつも通り、武志の愚痴が続くとそう思ったその時、今度は武志では無い、透き通った女性の声が、彰達に投げかけられた。


「――彰! お疲れ!」


彰を含め、その場にいた三人が、声の方へと視線を向けると、そこには、走ってきたのか、息を少しだけ切らせた春奈はるなの姿がそこにあった。



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