表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第七章 球技祭 
112/228

姉の代わりにVTuber 110


「――――もう、告白したと思う……?」


体育館にいた真鍋まなべ あおを見つけてから、必然的に碧の話を春奈はるなは、青木あおき かえでに投げかける。


「えぇ~~~ッ? それ、アタシに聞く~~??」


「だって、楓がこの話始めたんでしょ?

どう思うのよ? 碧ちゃんの反応を見て……」


「んん~~~、分かんないよ……。

碧の表情からじゃ……。

――でも、まだ午前中なんだし、球技祭も始まったばかりだから、まだなんじゃないの??」


青木はため息を付きながらも、春奈の質問にはきちんと答え、青木から見て、碧はまだ行動していないように見えた。


「――――天ケ瀬君……、なんて返事を返すんだろう」


「そんなのもっと分かんないでしょ~~?

ここで考えたって仕方ないよ……。

――――それに、碧一人だけとは限らないよ?」


「え…………?」


青木の言葉に、春奈は意表を突かれ、思わず声を漏らした。


驚いた表情を浮かべる春奈に、青木は少しだけ、これから話そうとしている言葉に躊躇したが、未だに上手く答えが出せていない春奈に、そう時間が無い事を、暗に伝える意図も含み、続けて話した。


「球技祭で春奈のクラスは目立ってるし、天ケ瀬も、バスケ部のアタシから見ても、悪い動きはしてないし、今日の試合を見て……とか、あるかもしれないよ?

あるいは、前々から少し良いなとか思ってて、今日の球技祭で思いが固まる……とかさ?」


青木は言葉を濁して伝えたが、春奈にはその言葉で充分であり、青木の言葉に増々、春奈の表情は暗くなる。


(はぁ~~~……、そんな悲しそうな表情するなら、とりあえず付き合ってみればいいのに……。

あとから気付きました、でももう誰かの恋人でした……じゃ、どうしようも無いのにさ……)


青木の言葉で黙ってしまった春奈を見て、青木は心の中でそんな事を考えながら、今度は穂高の方へと視線を向ける。


そして、かねてから、青木が穂高と出会ってから、何度か感じていた事を、ポツリと言葉にして零す。


「――まぁ、天ケ瀬の奴、普段から何考えてるのか、分からないしな~~~。

本当になんて、返事返すか……、想像付かないな」


「――――え……?

確かに、なんて返事を返すかは分からないけど、

そんな普段からを何考えているのか、分からないような、そんな変な人じゃないと思うけど……」


青木の言葉に疑問を感じた春奈は、不思議そうに尋ねるが、青木は自分の考えを曲げる事は無かった。


「いいや、変でしょ? 天ケ瀬は……。

二年間クラスが一緒で、それなりに話したこともあったけど、天ケ瀬よりも話した事が無い人の方が色々知ってるよ。

――まぁ、春奈の方が最近、天ケ瀬と絡みがあるから、私が間違ってるのかもしれないけど……。

でも……、それでも、やっぱり、天ケ瀬の事はよくわかんないや……」


「――そうかな…………」


青木の最後の言葉は、春奈の共感は得る事は無く、春奈は納得のいっていない様子でポツリと呟いた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「――――キツイッ!! 超疲れる!!」


リーグ戦、4試合目が終わり、穂高は体育館の壁に寄りかかるようにして、勢いよくその場に座り込んだ。


「おいおい……、天ケ瀬はスタメンじゃないだろ……?

ベンチスタートの途中参加でバテて貰っちゃ困るぞ??」


「ふざけんな! 選手のお前と帰宅部の俺とじゃ、体力が違い過ぎるんだよ!

体育の授業よりもみんな本気だし、1試合16分て長すぎじゃない?? 半分でいいよ半分で……」


バテ気味の穂高に、まだまだ体力に余裕のありそうな瀬川は、呆れた様子で声を掛け、瀬川の理論に納得のいかない穂高は、強く瀬川の言葉を否定した。


瀬川せがわあきら糀谷こうじやのプレーはレベルが物凄く高く、そのプレーに何とかがむしゃらに、ついて行こうとする帰宅部の穂高にとっては、とても体力の使う事であり、バテるのは必然とも思える現象だった。


そして、穂高は自分と少しだけ近い境遇にある、大貫おおぬき若月わかつきに視線を向ける。


「――大貫や、若月だってへばってるじゃねぇか……。

俺がおかしいんじゃなくて、お前らバスケ部が異常なんだよ。

明らかに勝ってる試合なのに、最後まで手を抜かないって……、鬼かよ……」


「なんだ~~? 天ケ瀬……、聞こえてるぞ~~??

俺達がへばってるってぇ~~~?? まだまだ元気だが?」


穂高の声が聞こえたのか、少しだけ離れたところで項垂れていた大貫が、ヘラヘラと笑みを浮かべながら、聞き捨てならないといった様子で、穂高に返事を返した。


今までの穂高であれば、すぐに簡単に謝罪し、丁寧な口調で対応していたところであったが、試合を重ね、友好関係を築き始めた大貫には、口調を変える事は無く、瀬川や彰達に話しかけるような口調で、続けて言葉を返す。


「いや、さっきの試合……、まだ前半の途中だって言うのに、俺に交代させた事、忘れて無いからな??」


「なぁぁぁにぃ~~~ッ??

言う様になったじゃねぇか~~? ベンチで俺ら程、試合出てない奴がよぉ~~!」


穂高の言葉が癪に障ったのか、大貫はじゃれ合う様に、穂高が頭に掛けていたタオル越しに、頭をわしゃわしゃと強めに撫でまわした。


「――――おいッ! やめろよ! 疲れてんだからよ!!」


「一緒に練習してた時は、丁寧な口調だった癖に! 慣れると生意気だな! 天ケ瀬!!」


「同い年に生意気もクソもあるかッ!!」


頭を揺らされた穂高は反発しながら、大貫の手を払いのけた。


バスケ部以外のメンバーは、くたくたな状況にあったが、度重なる交流と、初戦から続く連勝で、チームの雰囲気はどんどんと良くなっていった。


穂高は、春奈との噂の件もあり、大貫とはそこまで仲良くなることは出来ないと、懸念している部分もあったが、蓋を開けてみれば、あっさりと、仲良くなるのにも、そこまで時間は必要なかった。


智和ともかずも穂高も良くやってるよ……。

まだまだ頑張って欲しいなって思う部分は、試合中沢山あるけど」


「一々一言余計だわッ! なぁ? 天ケ瀬??」


「――彰と話してても、余計な体力使うだけだから、無視した方が良いぞ……」


穂高達の会話の輪に、ひときわ楽しそうに笑顔を浮かべ参加してくる彰に、大貫は嫌味を言われた事に反発し、同意を求められた穂高は構う事無く、自分の体力回復に努めた。


そして、穂高は少しだけ離れたところから、こちらを伺うもう一人のチームメンバーに視線を向けた。


(大貫とはあれ以来、変なわだかまりがあったからな……。

問題が解決したわけじゃ無いけど、一先ず、友好的にはなれて良かったか。

――ただ、問題は…………)


穂高の視線の先には若月の姿があり、若月とは試合数を重ねても、未だに打ち解ける事は無かった。


(大貫と若月に呼び出された時も、どっちかって言うと若月の方が敵意出してたしな……。

そう簡単に、和解できるわけ無いか……。

――――ってゆうか、俺、なんか悪いことしたか??)


穂高は冷静に分析しつつも、我に返ると自分に非があるところは見当たらず、自分の悲運を嘆いた。


そして、大きなため息を付く穂高に、彰から声が掛かる。


「お~~い! 穂高!

お前に、お客さん!!」


彰の声に導かれるように、彰の方へと視線を向けると、そこには見知らぬ、一人の女性生徒の姿がそこにあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ