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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第七章 球技祭 
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姉の代わりにVTuber 109


 ◇ ◇ ◇ ◇


(どうしよう……、結局当日になっちゃった…………。

さっきも、天ケあまがせ君と話した時、ちょっと不自然なとこあったし……)


穂高ほだか達との雑談を終え、春奈はるなはつい先ほどの会話に後悔を感じていた。


(――で、でも、この事はあおちゃんと天ケ瀬君との間の問題だし……、私がどうこう言う事じゃ無いし…………。

だ、だけど…………)


「――き、気になる…………」


春奈は後輩である、真鍋まなべ 碧から告白されてから、ずっと今日起こる可能性のある事について、頭の中がいっぱいだった。


(――ほ、本当に告白するのかな……? 碧ちゃん…………)


春奈は、友人である青木あおき かえでから、助言を貰って尚、自分の気持ちに整理を付けられず、ズルズルと結論付けられぬまま、球技祭を迎えてしまっていた。


(今日迎えるまで、天ケ瀬君と話す機会は沢山あった……。

天ケ瀬君も私の二次試験があるから、それの協力の為に、時間を割いてくれてた。

――――天ケ瀬君は優しいし、頼りにもなるし、凄い大切な存在だという事は分かってる……。

でも、好きかどうかって言われると……、瑠衣るいと同じように大切だし、これからも良い関係を気付きたいけど……、これって友達に向ける感情と何が違うんだろう…………)


春奈は今日まで何度も考えた議題を、頭の中で整理しようとするも、結局いつもと同じような結論へとたどり着いてしまう。


これは、春奈が今まで異性を恋愛対象として、好きになった事が無い事が起因しており、どうすればいいのかすらも、分からなくなっていた。


(と、とにかく今は、穂高君の応援をしようッ!)


頭でいくら考えても答えの出ない問題に、春奈は一度区切りをつけ、思考する事から逃げる様に、今実行すべきことを念頭に置いた。


球技祭開始から、数分後。


ゲーム時間も各種目短く、まずは学年でリーグ戦となっている為、どの学年も、同じ学年のクラスと試合を行っていた。


そして、学年リーグの中で、優秀な成績を残したクラスが、全学年対抗のトーナメントへと出場する事になっていた。


「――いや~~、初戦は危なげなくだな!」


リーグ戦第一試合を無事終えたあきらは、涼し気な表情で、滴る汗をタオルで拭いながら、穂高に声を掛けた。


「ルールだから仕方無いけど、控えなしで試合してったら、優勝間違え無しだな」


「――それ、お前が試合出たくないだけじゃね??」


バスケの種目は、各クラス6~7名出場でき、穂高のクラスは6名でエントリーしていた。


そして、一応授業の一環でもあるため、サボりは許されず、公平さを保つため、控えの選手で会っても、必ず試合に出る事が義務付けられていた。


「いや、出たくねぇよ、こんなプレッシャー感じる息苦しい試合なんて……。

俺は帰宅部なんだぞ?? 部活動で大会に出てたりするお前とは違うの!」


「――緊張してんのか??

そんな事言ってる割には、リラックスしてやってるように見えたけど?」


(――た、確かに、プレッシャーは感じるけど、緊張はしてないな……。

リムでいつも配信してるからか? 度胸が付いちまったのかも……、嬉しくはねぇけど……)


穂高は彰に言われ、自分があまり緊張していない事に気づき、穂高自身も当日は緊張すると考えていた為、自分でも意外に感じていた。


「――ま、まぁ、緊張してるかどうかは問題じゃないッ!!

ヘマするか、しないかが問題なんだよ!

俺が出るまで、アホほどリード付けとけよ?? ホント、頼むからッ!」


「――な、なっさけねぇな……」


比較的堂々としている穂高の姿は見る影も無く、本気で頼み込む穂高を見て、彰は若干引き気味、呟くように答えた。


「――――天ケ瀬~~! 次の試合!

一応ミーティングするってさ! 楠木くすのきも!」


穂高と彰が話をしていると、少し離れているところで、今回のバスケのチームメイトと話をしていた瀬川が、彰と穂高を打合せの為に呼び寄せに来た。


今回の穂高のチームは、瀬川、彰、大貫、若月、糀谷こうじや、そして穂高の六人でチームを組んでいた。


スタメンとして、穂高を抜いた五人が出場し、チームメイトの中にはバスケ部のレギュラーである、彰と瀬川、糀谷の三人がいる、超強力なチームだった。


穂高達、3-B組のバスケチームが試合後のミーティングを行う傍らで、試合の観戦をしていた春奈と青木あおき かえでの姿がそこにあった。


試合観戦の熱冷め止まぬ様子で、青木は春奈に声を掛ける。


「いや~~~、流石は優勝候補ッ!

まだ初戦なのにギャラリーも多いし、何より絵になるイケメンが多いしね~~ッ!!」


「――うん……、そうだね…………」


「でも、一番歓声が上がってるのはやっぱ、彰かね?

彰好きな女子多いしね~~!」


「――――うん……」


楽し気に話す青木に対し、春奈は何処か上の空といった様子で、返事を返し、声にも覇気は無かった。


青木も春奈はバスケ部所属という事で、お互い、バスケのクラス代表として選ばれ、自分たちも利用する会場、体育館で試合が丁度行われていた為、自分たちの出番を待ちながら、穂高達の試合を観戦していた。


春奈は、自分のクラスが試合をしているという事もあり、3-B組を応援し、試合していたクラスが、どちらも所属ではない青木は、フラットに試合を見ていた。


「――春奈……、また暗い表情して…………。

もしかして、まだ悩んでたの??」


「え……?」


「え、じゃないよッ!!

天ケ瀬の事でしょ~~??

――まったく……、悩むくらいなら、とりあえず好きって言っちゃえばいいのに……」


「なッ! そ、そんな事出来るわけないでしょッ!!」


とんでもない言葉を発せられ、春奈は慌てふためきながら返事を返し、冗談じみた発言に見えたが、青木はいたって真面目な様子で発言しており、内容は大胆だが、本気で思っている事を口に出していた。


「――はぁ~~、じゃあ、どうするか考えなさいな……。

いつまでも、そう、難しい表情をされてると、調子狂っちゃうよ……。

――第一、試合してる時はそんな悩んでる素振り無かったじゃん? どしたの? 思い出したの??」


春奈のこうした重い雰囲気に付き合わされるのは、これで二度目である青木は、少しだけうっとおしくも感じていた。


そして、体育館で偶々出会い、つい先ほどまでは、いつもの調子で春奈は試合を観戦していた為、もう、あの日の事で悩んでいると、青木は今の今まで思ってもいなかった。


「――そう簡単に結論出せないから、こうして悩んでるんだよぉ……。

とゆうか、思い出したわけでも、忘れてたわけでも無いからッ!

――今日は球技祭だし、気持ち切り替えよう! 楽しもうって思ったんだよ!?

でも…………」


青木に言われ、今日の朝方に決意していた事を告白し、全てを伝え終えた後、春奈は青木から視線を外し、体育館のとある一角へと視線を向けた。


会話を途中で止めた春奈に、青木は違和感を感じつつ、春奈の視線を追う様にして、春奈が見つめる先へと視線を向けた。


「――――あっ……、な、なるほどね……、そうゆう事……」


春奈の視線の先には、眞鍋まなべ あおの姿があり、碧のその表情は形容しがたいが、何かに憧れるような、そんな表情を浮かべ、ある一点を見つめていた。


「碧の視線の先は……、まぁ……、言わずもがなアイツだわな……」


事情を知っている青木は、確認するまでも無く、碧が誰を見つめているのか分かったが、一応その見つめる先を確認すると、そこにはやはり、穂高の姿があった。


(男子じゃ絶対に分かりはしないけど、同じ女子だからよく分かる……。

碧のあの顔は、完全に恋する乙女だ……)


青木は何故急に、春奈の元気がなくなったのか、すべてに納得がいき、碧の表情から、改めて穂高に好意を向けている事が確認できた。



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