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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第七章 球技祭 
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姉の代わりにVTuber 105


「え? え? 付き合ってる?? ど、どうゆう事?」


後輩である眞鍋まなべ あおの言葉で、今度は春奈が完全に動揺し、動機も速くなってきていた。


「――え、いや、噂でそんな事を聞いたので……。

天ケ瀬先輩と杉崎先輩が付き合ってるって…………」


今まであたふたしていたはずの碧は、自分よりも焦り始めた春奈を見て、段々と冷静さを取り戻し、春奈の反応から少し、困惑した様子で続けて尋ねた。


「そ、そんな、付き合ってないよ~~!

――仲が良い友達ってだけで……」


春奈はあきらと噂される時には、慣れているせいもあってか、大きく動揺する事は無かったが、今の春奈は自分でも驚くほどに取り乱していた。


「そ、そうなんですね……、良かったぁ……」


春奈の言葉を聞き、碧は胸をなでおろし、その安心した碧の表情を見て、動揺していた春奈は、何故か胸がヒリヒリとした痛みが走った。


碧の表情を見て、動揺が収まり始めた春奈だったが、春奈が完全に落ち着きを取り戻す前に、碧は続けて春奈に言葉を発する。


「――先輩、私、実は天ケ瀬先輩に告白しようと、そう思ってるんです…………」


胸を強く抑え、少しだけ苦しそうにしながらも、笑顔で、碧は優しく丁寧な口調で、春奈に告白をした。


 ◇ ◇ ◇ ◇


駅前、ハンバーガー店。


春奈は青木あおき かえでと約束通り、マッ〇ドナ〇ドへと訪れていた。


「――でさ~~、瑠衣るいの奴がねぇ~?

――――って、春奈~~? 聞いてる~~??」


青木は今日何度言ったか分からないセリフを、春奈に投げかけ、呆然とし、心ここに在らずといった様子の、春奈へ呼びかけた。


「――え? あ、あぁ、ごめんッ!

――で、なんだっけ??」


「もう~~、だから、瑠衣が球技祭の練習で容赦なかったっていう話を……。

とゆうか、もう私の話はいいよ~、どうせ今日の春奈は上の空だし…………」


「ご、ごめん……」


残念そうに呟く青木に、春奈は悪気はなかったが、結果として青木の話を無視していたところがあった為、素直に申し訳なさそうに謝罪した。


「いいよいいよ、そんな日もあるだろうし……。

――で? 何があったの??」


青木は自分の話を諦め、上の空になっている春奈に、先程からずっと悩んでいる事について尋ねた。


「え……? い、いや、何もないよ……?」


青木の問いかけに、春奈は相談の為であったとしても、言いふらしていい話題では無いと思っていた為、すぐにその事については、口を潰いだ。


「どうせ、放課後の事でしょ?

碧に呼び出されてたし、碧の事じゃないの……?

また、同性から告白でもされた?」


「い、いやッ、違うよッ!

碧ちゃんはそうゆうんじゃなくて……、な、なんか、相談?みたいな……」


青木の追及に、春奈は慌てた様子で青木の言葉を否定し、あくまで穂高ほだかの事は伏せながら、濁すように答えた。


そして、そんな春奈を見て、青木は何かを確信したかのように、ハッキリとした物言いで、春奈に話し出す。


「――――だろうね……、知ってた」


「え……?」


淡々とした物言いで、ハッキリと発せられた青木の言葉に、春奈はすぐに意図を理解する事が出来なかった。


そして、困惑する春奈に、青木は話を続けた。


「碧が春奈に相談した事、何となく分かるんだよね。

――とゆうか、今の春奈の答えを聞いて確信した……。

天ケ瀬あまがせの事、聞かれたんでしょ?」


「――え? な、なんで楓がそれを……?」


「いや、実はさ、今日春奈が碧に呼び出される前に、碧から聞かれた事があってさ……。

まぁ、その内容が天ケ瀬の事で……。

私に、天ケ瀬と春奈が付き合ってるのか聞いてきたんだよね……」


状況が上手く呑み込めていなかった春奈は、青木の言葉でようやく今の状況を理解し、碧が青木にそんな事を聞いていた事に驚いた。


「その時は、丁度ほら、春奈がストーカーに付きまとわれてた事件が、解決した直後くらいの頃でさ?

女子バスケ部は、春奈の事情を知ってる子が多かったし、碧も天ケ瀬が協力してる事は、知ってるみたいだったんだけど……。

どうも、天ケ瀬と春奈とじゃ、接点があるようには見えなかったらしくて、実は付き合ってたりするんじゃないかって考えてたらしい」


「――そ、そうだったんだ……、知らなかった……」


青木の言葉は春奈には衝撃的であり、ストーカー事件の当時も、穂高と噂される事は少なくは無かった為、そう勘違いされても、まったく不思議では無かった。


「――でも、やっぱりその時期に楓に相談するって事は、それよりも前に天ケ瀬君の事を気になってたって事だよね?

付き合ってるかもって勘違いしちゃって、楓に相談してるわけだし……」


「多分、そうだと思うよ?

碧と天ケ瀬は学年も違うから、何をきっかけにとかは知らないけどね~~」


考え事ばかりで一向に食が進まない春奈に対して、青木は既に自分が頼んだハンバーガーを食べ終え、気楽に返事を返しながら、飲み物を飲み干しにかかっていた。


「――だとしたら、やっぱり碧ちゃんには悪い事したかな……?

天ケ瀬君にはストーカー事件で協力して貰っちゃってたし……、変な誤解もさせちゃったわけで……」


「ん~~、そこに関しては別に、春奈が気にする事じゃないと思うけど…………、とゆうか、それよりも私は…………。

――まぁ、私が口出す事じゃないか、フェアじゃないし…………。

とりあえず、ポテト頂戴!」


重い雰囲気で悩む春奈に、青木は何かを言いかけたが、途中で口を紡ぎ、誤魔化す様に、未だ残っている春奈のポテトに手を付けた。


青木の言いかけた意味深な言葉に、春奈は引っかかったが、それよりも放課後に言われた、碧の言葉が頭から離れず、その事ばかりを考えこんでしまっていた。


そうしてその後も春奈は、青木とマッ〇で過ごしたが、時折上の空になってしまうのは変わる事無く、結局頼んだポテトも、半分も食べる事が出来ず、ほとんどが青木の胃袋へと収まった。


「――――ふぅ~~ッ! 食べた食べたッ!!」


「食べ過ぎだよ……、それで晩御飯も食べるんでしょ?

――太るよ??」


お店を出ると、青木は満足そうに伸びをしながらそう呟き、そんな青木を見つめながら、眉をひそめながら、春奈は青木にそう伝えた。


「う、運動するから大丈夫だよ……」


「絶対しないでしょ?」


「するってぇ~~ッ!」


青木と春奈は、他愛も無い会話をしながらお互いの家へと向かい、そして、お互いの通学路が分かれる所まで差し掛かった。


いつもの様に、何気なく、お互いに別れを告げる場所で、青木は今まで話していた、他愛も無い話題とは全く違う話題を、春奈に投げかけた。


「――――春奈、ポテトのお礼に一つだけ、春奈に助言」


「急に何~? 何を教えてくれるのよ」


今までの会話に笑い話もあった為、春奈は青木の物言いからは、どんな言葉が続くのか全く予想が付かず、もったいぶる物言いの青木に、少しだけ茶化す様に内容を聞き返した。


「さっきの碧の件。

碧から聞いた話だけど……、多分、球技祭の時に天ケ瀬に告白するんだと思うよ?」


「――え…………?」


青木から再び碧の話をされるとは、思っていなかった春奈は驚き、困惑するが、青木はそんな春奈に構う事は無く続けて話す。


「春奈が天ケ瀬の事、どう思ってるのか知らないけど、もし好きなんであれば、球技祭までに春奈も行動した方がいいよ?

――――――じゃあね」


青木は一方的に春奈に言いたい事を伝えると、最後には優しく微笑み、春奈とは違う道にある自分の家へと向かって、歩き出した。


青木の言葉に、春奈はすぐに返事を返す事は出来ず、それどころか、春奈はその場で立ち止まり、少しの間その場から、動く事が出来なかった。


誤字報告すみません、ありがとうございました。

助かります。

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