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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第七章 球技祭 
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姉の代わりにVTuber 102


「――まさか、あれだけ嫌がっていたバスケに参加する事になるとは……。

穂高ほだかも運がねぇよなぁ~~」


球技祭の種目に不満がありげな穂高に、武志は他人事のように、ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべながら、言葉を発した。


「でも、そんなに気を落とす事無いだろ? 天ケあまがせ……。

俺は天ケ瀬とバスケ一緒にできて嬉しいぞ! 楠木くすのきだって、きっとそう思ってる!!」


穂高の状況を笑う武志とは違い、瀬川せがわは、穂高がバスケに参加する事を、前向きに捉えていた。


「いや、俺だって普通にバスケする分には、別に構わないよ……。

ただ、雰囲気が嫌なんだよ、この優勝するぞって雰囲気が……」


「えぇ~~、良いじゃないか~。

みんなそれほど本気だって事だし!!」


「一部だろ? 一部ッ!

それに、クラス総合優勝を目指す為に頑張る奴も一部……」


穂高は瀬川の言葉には納得できず、瀬川の言葉に含まれない、球技祭でそこまでの熱量を持っていなさそうな、クラスメートに視線を向ける。


「別に、頑張れって強要する事も悪いとは思わないけどさぁ……。

凄い理不尽じゃね? とゆうか、プレッシャーかけてくるのもしんどい……」


「ま、まぁ、その気持ちも分からんでもないけども……」


ハッキリとは言えない、モヤモヤとした不満を穂高は抱え、穂高のそうした何とも言えない不満を、瀬川も感じていたが、穂高と同じように、直接本人たちに、口に出せる勇気は無かった。


そして、そんな会話をしていた穂高達に、不意に女性の声が降りかかる。


「――えぇッ!? 天ケ瀬君達、結構そうゆうの気にしたりするタイプなのッ!?」


不意に掛けられた声に、穂高達は少し驚き、声のした方へと視線を向けると、そこには、声を掛けてくるのが珍しい、四条しじょう 瑠衣るい杉崎すぎさき 春奈はるなの姿がそこにあった。


声の主は瑠衣であり、瑠衣は不思議そうな表情で、穂高達を見つめていた。


「あ、四条さん……、それに杉崎さんも……」


急な来訪者に穂高はたどたどしく返事を返し、瀬川も急な事で呆然とし、武志に至っては、口をパクパクとさせ、焦っている様子が見て取れた。


「なに急に……、みんな大人しくなっちゃって……。

天ケ瀬君も、もっと砕けた感じで話して良いよ~~!

ハルと話してる時は、フレンドリーみたいじゃん!?」


「あ、いや……、流石に、ここは周りの目があるんで…………」


瑠衣の言葉に、穂高は教室を見渡し、自分たちが、瑠衣達に話しかけられた事で、少し注目を浴びてしまっている事を確認した。


「えぇ~~? 同い年でクラスメートなのに……。

休日に遊びに行った仲なのに……。

――――あ、それとも? 私達ももっと親しく話した方が良い?? その方が砕けやすい? 穂高・・君」


「わ、分かったッ! 分かったから勘弁してくれッ……」


穂高達の会話を気にしている外野の存在が、穂高は気になっていた為、瑠衣の言葉に渋々といった様子で返事を返し、砕けた口調で話す事を了承した。


「――もう……、瑠衣……。

穂高・・君達も困るだろうから、だからやめよって言ったのに…………」


「え?」

「ん?」


瑠衣は勿論、穂高も、春奈が瑠衣を諫めていた話より、春奈の発した名前呼びが気になり、思わず声を上げ、疑問を提唱ていしょうするように、春奈に視線を向けた。


「え? な、何急に……、二人で私の顔を見て……」


「いや~~? 私は冗談で天ケ瀬君の事を、穂高君って呼んでたけど、ハルのさっきのそれはどんな意味があるのかなぁ~~?って」


穂高と瑠衣に困惑する春奈に対して、瑠衣はニヤリと悪い笑みを浮かべながら、春奈をおちょくる様に、先程の言動に付いて追及し始めた。


「――え? あ……、い、いやッ! わ、私も瑠衣と同じ意味合いで……。

と、とゆうか、瑠衣に釣られちゃったのッ!! ホント、咄嗟に出ちゃったというかなんというか……」


「へぇ~~~? ふ~~~ん? 咄嗟にねぇ~~~??

咄嗟という割には呼び慣れてたような?? 自然な感じがしたけどね~~」


「ち、ちがッ!

――あ、天ケ瀬君! ホントに違うからねッ!?」


穂高の前でからかわれた事で、春奈の羞恥心はいつも以上に高く、悪ふざけの瑠衣を止めるよりも、穂高に弁明をする事に春奈は力を注いだ。


そして、そんなやり取りを見つめていた穂高は、ため息を一息つくと、落ち着いた様子で二人に声を掛ける。


「――で、何しに来たんだ? 杉崎達は……」


穂高は武志達と話す態度では、悪目立ちをするとも考えたが、再び話し方を、先程の丁寧な口調に戻し、瑠衣に指摘され、余計な時間を取る事を恐れ、本題に入らせとっとと立ち去って貰おうと考えていた。


「え? 普通に雑談しに来ただけだけど?

友達だし……、ねぇ? ハル?」


「――は? そんなわけないだろ……。

杉崎??」


瑠衣は穂高の問いかけに、飄々とした口ぶりで答え、瑠衣の返答が、しらを切るようにも思えた穂高は、瑠衣の言葉を否定しつつ、春奈へ視線を向け、問いかけた。


「――――え、えっと……、ごめんね? 天ケ瀬君……。

これと言って何か目的があるわけじゃないんだ……」


「ま、マジか……」


穂高は前回、遊びに行けなかった時の埋め合わせや、何か頼みごとがあるのだろうと、決めつけていたところがあった為、ただ目的も無く、春奈達が話しかけてきた事に、ただただ呆然とし、驚いていた。


「えぇ~~、何か嫌そうな反応だなぁ~~。

――まぁ、良いじゃん普通に友達なんだしさッ!

とゆうか、話題なら沢山あるじゃん!? 直近なら、球技祭とかね~~!

瀬川君は、バスケだっけ??」


穂高の思考が追い付かない状況で、瑠衣は自然な形で、簡単に穂高達の会話の輪の中へと入り、瀬川の困惑しながらも瑠衣の返答に答え、我に返った武志は、終始楽し気に瑠衣や春奈へ話しかけていた。


そして、会話が進んでいく中で、瀬川、武志、瑠衣で会話が盛り上がっているところで、穂高は隙を見て春奈へと小声で話しかける。


「――――なぁ、俺らはまぁ。武志を除き、良くはないけど……、そっちはいいのかよ……」


「え? 何が……?」


穂高の質問はあまりにも抽象的で春奈には伝わらず、言葉を濁して伝える事を諦めた穂高は、更に声のボリュームを注意し、春奈に再度問いかける。


「い、いや、ほらッ! いつもの仲良しグループだよ!

大貫おおぬきとか、若月わかつきとか……、菊池きくちと一緒だろ? いつも昼休みは」


「あ、うん、そうだけど……、今日は俊也しゅんや智和ともかずも違う人達とお昼食べてるし、梨沙りさも今日は違うグループでお昼してるから……」


春奈の言葉を聞き、穂高は再度、教室を見渡すと、春奈の言う通り、教室に大貫達の姿は見受けられなかった。


「そういえば、確かにいねぇな……。

――なら、いいのか……??」


穂高は春奈達と話す事で、また大貫達に因縁を付けられる事を危惧しており、原因である大貫達が、教室に居ないのであれば、春奈と会話しても問題ない様に一瞬考えた。


そして、穂高のそんな反応から春奈も、穂高の危惧している事を何となく察し、その事に付いて春奈から触れ始める。


「――も、もしかして、あの噂の事……?」


春奈は未だ、穂高がある噂に付いて、知っているのか分からなかった為、恐る恐るといった様子で、穂高に問いかけた。


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