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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第六章 六期生(後)
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姉の代わりにVTuber 98


 ◇ ◇ ◇ ◇


「みんな~~~ッ!! こんリア~~」


一年間、デビュー当時から変わらぬ、慣れ親しんだ挨拶を皮切りに、モーリアのデビュー1周年を記念した配信が始まった。


モーリアの配信は始まった瞬間から、モーリアの姿が見えるわけでも無く、初の3Dの配信という事もあり、すぐにお披露目という事はしなかった。


「ごめんねぇ~~、まずは声だけで。

――でも、もう『チューンコネクト』の恒例だし? 流石にみんなも分かってるだろうけど」


モーリアは配信画面に、未だ自分の姿を現せない事を謝罪しながらも、ファンを信用している節もあった為、謝罪はいたって軽いものだった。


モーリアの声が配信に乗り、一周年記念の配信が始まった事で、今まで待機していたリスナーは、一斉にコメントを書き出し、配信のコメント欄のスピードは、凄まじいものになっていた。


「みんな~~、お祝いありがと~~!

コメント、凄すぎて全部は読み切れてないけど、お祝いコメントが流れてるのは分かってるよ~~~ッ!!

――じゃあ、まずは、3D配信をするうえで、運営さんが用意してくれた、モーリア専用の背景を堪能してこッ!!」


モーリアは、開始早々から盛り上がるコメントをそのままに、その熱と勢いを活かす様に、どんどんと進行をしていく。


(――コメントすげッ…………)


モーリアの配信を見ながら、まだ出番の来ない穂高は、モーリアの配信に流れるコメントに圧倒されていた。


(俺がリムを引き受けてから、こんな配信経験した事もないし……。

やっぱり、『チューンコネクト』の3D配信は別格だな。

同時接続もエグいし……)


穂高は、配信の盛り上がりから、若干緊張を感じていたが、配信の盛り上がりに乗せられ、高揚感の方が強く感じていた。


そして、モーリアもまた、いつもの配信よりも、声に力が入っており、良い意味で緊張感を持っていた。


「――凄くない? この背景ッ!?

この3Dの為に作られたんだよ? まさにエデンの園って感じしない?

天使がいてもおかしくない、楽園だよ~~ッ」


純粋に楽しむモーリスと視聴者、そして、穂高はそんな盛り上がる配信を、純粋に一視聴者として見守りながら、出番をじっと待った。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「――――ゲロ疲れた……」


モーリアの一周年記念の配信を無事に終えた穂高は、配信部屋から出るなり、ぐったりとしたまま、リビングのソファに倒れ込む。


「見てたよ、穂高……。

やるじゃん!」


「――何を他人事のように言ってんだか…………。

次は姉貴の番なんだからなぁ~~?」


ソファに倒れ込んだ穂高に、美絆は簡単な感想を述べると、いつもの配信の何倍もの気を使った穂高は、ソファから起き上がろうとはせず、倒れ込んだうつ伏せのまま、返事を返した。


穂高演じるリムと、モーリアの配信は、美絆がコラボしていた事の流れをそのままに、リムが所々で意地悪な事を言いつつも、モーリアが何事も無かったように、受け流す形で進んでいった。


結果的に、コラボの内容としてはファンが期待するものになり、モーリアの新3Dモデルも余すことなく、たっぷりと紹介出来ていた。


しばらくソファーに倒れ込んでいた穂高だったが、そのまま一日を過ごすわけにもいかず、重い体を起こしながら、何かしらと携帯を操作している美絆へと視線を移す。


「――――何してんのか、知らないけど、いいのか? リハビリは……」


穂高はここ数日、美絆が何度か、配信の感覚を取り戻す為に、リムとして配信している事を知っており、本番も明日に迫っているという事もあり、今日もリハビリと称して、配信をするのだろうと思い込んでいた。


「ん? まぁ、もうなるようになるでしょ?

昨日、配信もして何となく今の自分に腹も括れたし、後は、当日の緊張との付き合い方の問題に思えるし……」


「――緊張を感じないようにする為にも、なるべく配信して、慣れさせるべきなんじゃ……?」


「何回配信しようが、慣れる事は無いね……。

まぁ、久しぶりの配信だし、楽しいから、リハビリを兼ねて配信はするけども……。

それよりも、今は、こっち……」


心配する穂高に対して、美絆はリハビリとは他にやることがあると言わんばかりに、操作していた携帯を、画面が見えるように、穂高に突き出した。


「――――それね……。

まだ、諦めてなかったのか」


美絆の携帯を見た穂高は、ため息交じりに呟いた。


「当たり前でしょう!

――私の一世一代の大仕事と思ってるよッ!!」


ため息交じりな穂高とは対照的に、美絆は意気込んだ様子で、きっぱりと答えた。


「そんな大層な事じゃないだろ…………。

簡単に用意できる事だし……。

――てか、リムの方に飛び火しても知らないからな~?」


穂高は、昨日聞いた美絆のアイデアを思い浮かべ、それをした事で生じる、余計なトラブルを危惧していた。


「考えすぎでしょ~~?

――穂高に、六期生の絆! 見せたるよ!!」


「ハッ……、佐伯さんに怒られる未来しか見えないけどな」


自信満々な美絆の発言を、穂高は鼻で笑い飛ばし、美絆が独断で計画している事を実行し、佐伯に怒られる光景が容易に想像できていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「バ~~ンッ!! どうよ! この久遠くおんの3Dモデルはッ!!」


クッ……! 久遠なのに可愛いッ……!!

いつもの男っぽい、少年っぽい印象が、動くとあんまり感じられないな!?

ハイハイ、女性らしい動きの出来る役者さんを手配したわけね……


「ちょっとッ! 酷くないッ!?

中身久遠だし……。

――てか、中の人なんていないからねッ!?

なぁ~~んで、素直に可愛いって褒めてくれんかなぁ~~、君たちは……」


3Dモデルをお披露目した久遠だったが、モーリアの様に素直な称賛コメントは飛んでこず、久遠のリスナーらしい少し棘の含んだコメントが、多くコメント欄に流れていた。


「久遠先輩……、流石ですね??

――ここまで素直に褒められない3D配信をしたのも、先輩が初めてだと思いますよ~~?」


「リムちゃんッ!? 酷くないッ!?」


中々素直に褒められる事の無い久遠に、リムは追い打ちをかけるような辛辣な言葉を投げかけ、リムの言葉に賛同するように、コメントは盛り上がりを見せた。


そして、そんな盛り上がりを見せる五期生久遠の、一周年記念配信を、穂高も自分の部屋で、視聴者としてライブ配信を視聴していた。


(――姉貴の奴、普通にやれてんじゃねぇかよ……)


大きなイベントの為、簡単な台本は用意されているとはいえ、視聴者として配信を見る分には、美絆が緊張しているようには見えなかった。


穂高は早々に、美絆の緊張によるトラブルの不安を解消し、配信が始まった当初よりは、安心した様子で配信を眺めた。


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