第30話 【軽修理】の魔法で服を改造してみよう
僕らは一路、アルハーデン王国に向かうことになった。
ここで、カトレーヌさんとは別れることになる。
カトレーヌさんは、ブラード王都に戻りパーティを組み直し、もともと僕が受ける予定だった依頼を請け負うようだ。
————
僕らは馬車に揺られ、アルハーデンの王都に到着した。
僕は王宮内に滞在して良いということで、甘えることにした。
かなり広い二人部屋を用意された。
チコと一緒だ。
「リィト、ふかふか!」
「うん、すごいベッドだね」
「お風呂もある! リィト、一緒にはいろ?」
バスルームまであって至れり尽くせりで。
僕らはその豪華さに驚いたのだった。
「リィト、マエリスは?」
「マエリスは神殿の方に住むらしい」
神殿と行っても王城のすぐ近くにあり、歩いてすぐのところだ。
「一緒に住まないのぉ?」
「いや、さすがに未婚の男女が、しかも聖女と一緒に男が住むってマズイらしくって」
チコはしょんぼりとした。
「そうなの? 一緒に住めば良いのに」
「もう、孤児院のように一緒ってワケには行かないからなあ」
小さな頃は、少し狭いところで、マエリスや孤児たちと一緒に雑魚寝をしていた。
目を覚ますと、いつのまにかマエリスは隣にいて。
互いの温もりが気持ちよくて、なかなか起きられない朝を迎える。
僕はずっと、そんな生活が続くと思っていた。
「ねえ、リィト……一緒に寝てもいい?」
「そろそろ一人で寝ても——ううん、いいよ」
「わーい!」
聖女という存在は、この国ではとてつもなく貴重なのだという。
マエリス、遠い存在になったな。
などと思いながらチコと一緒にその晩は眠った。
しかし、翌日。
ドアをドンドンとノックする者がいた。
寝ぼけ眼で出ると……。
「リィト、チコ! 王都に遊びに行こ!」
以前と全く変わらないマエリスがやってきて、僕たちは久しぶりの休暇をアルハーデンの王都で堪能することになったのだった。
————
三人で美味しいものを食べたり、小物を買ったり。
一通り楽しんで、僕の部屋に三人で戻った。
早速、お店で買った服を並べてみる。
新品だというのに、どこかにひっかけたのか糸がほつれている服があった。
こういうときのための生活魔法、【軽修理】だ。
さっと使い、直してしまうと僕はあることをひらめく。
「ねえ、マエリス、チコ。冒険に着ていく服を選んでみて」
「え? うーん、私はやっぱり聖女着になるかしら。可愛いのも良いけど」
「わたしは——これ!」
チコは花柄のワンピースを選んだ。
マエリスが選んであげたもので、着たらとても可愛らしく似合うだろう。
「【軽修理】!」『グリッチ』
『【軽修理】の魔法はレベル2のグリッチも行えるよ』
マエリスとチコの服それぞれに魔法を施す。
さっそく【識別】してみよう。
『
名前:聖女着
防御力:中
↓
名前:神聖・聖女着
防御力: 高
効果:
聖属性魔法 効果増強
呪い耐性 高
』
おお。なかなかの効果アップだ。
しかも、聖女着の見た目も、豪華になっているような。
次はチコの服だ。
『
名前:花柄のワンピース
防御力:低
↓
名前:花柄のキャミワンピース
防御力:中
呪い耐性: 呪い無効
』
デザインが変わって布の面積が減っているけど、他の服と合わせて着ても良いと思う。
「ねえ、リィト、これどう?」
「いいと思うよ」
「じゃあ、これは?」
「ちょっとスカート短くない?」
「えーかわいいのに」
マエリスは、ファッションショーみたいに色々着ては、僕に見せに来た。
チコは、着る様子もなく、ニコニコとしてワンピースを抱き締めている。
「チコは着ないのか?」
「うふふ……もったいなくて着れないよ……ふふ」
とても嬉しそうで、笑ってしまうのを押さえられないようだ。
でも、どうせなら——。
「着てくれたら、僕もマエリスも喜ぶよ?」
「じゃあ……じゃあ、明日、着るー!」
ずっとぎゅっと抱き締めているので、しわになると言おうとしたけどやめた。
しわになったら、【軽修理】の魔法で直してあげれば良いのだ。
その日。
チコは、キャミワンピースを抱き締めたまま、にこにことして眠ったのだった。
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