第29話 断罪される勇者(2) ——side カトレーヌ
そこには、王女殿下が何かするたびに、ビクビクするグスタフの姿があった。
「ひっ」
「あなたは気付かなかったのですか? 彼がいたことで、スキルの発動が楽に行えたことに」
「はっ? まさか?」
グスタフの返事に、溜息をつく王女殿下。
「はぁ……」
「し、失礼しました……き、気付きませんでした」
「わたしが暗殺でもされれば、このように責め立てられなかったでしょうね?」
暗殺計画の存在自体、実はグスタフは知らなかった。
だが、その疑いが向けられていることに気付き彼は青ざめる。
「……ッ! いえ、暗殺などとんでもない」
結局、そう否定するしかなかった。
彼にとって幸いだったのか不幸だったかは分からないが、ボリスの計画を知る者は全て命を落としていた。
勇者パーティや聖女に付き添った兵士や傭兵は、護衛を依頼されていただけで、事件の真相を未だに知らない者も多い。
グスタフが騙されていたのかどうかは、それを判断するほどの証拠を王国サイドは持ち合わせていない。
もっとも、強権を使って疑いだけで処刑することは可能だ。
しかし、リィトを失った今、王国サイドはこの勇者候補に頼るしかない。
それが、グスタフの命を少しだけ延ばすことに繋がった。
「あなたには、本来リィト殿に行っていただく予定だった調査を代理として勤めていただきます」
「ハッ、承知しました」
これで終わりか、と、グスタフは胸をなで下ろした。
しかし、王女殿下の怒りがこれで治まるはずもなく。
王女殿下は、その怒りと、信用がやや損なわれている者に対する待遇を考えた。
「グスタフ殿。あなたは私の信頼を失っています。そのため——」
王女殿下が合図すると、呪術師が儀式を行うような道具を持って入ってきた。
こ、れ、は。
「こここ……この儀式は……【誓約】の儀式」
「はい。さすがにご存じですね。我が王国が誇る呪術師による、最高級の【誓約】を結ばせていただきましょう——」
その後、アタシはグスタフの叫び声をしばらく聞く羽目になる。
本来【誓約】の魔法を課すときは多少の苦痛を伴う。
しかし、さすが対勇者用だ。
最高級の術は最高級の苦痛を与えていく。
「ギャアアアアアア……」
「はあ……お、終わった……」
「……!! お、おい……【誓約】は一つじゃないのか? おかわりとかいらないからっ! やめろ……やめてくれ……ぎゃあああああ……」
勇者候補の悲鳴は、その日の午後、ずっと王城に響いていたという——。
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