第21話 年上の女性に素敵ねと言われて……(2)
「じゃあ、私がこいつら縛り上げるから、ちょっと待ってて」
兵士たちとの戦闘は勝利に終わり、カトレーヌさんが素早くロープで縛り上げている。
「カトレーヌさん……趣味丸出しですね」
「この縛り方好きなのよね」
彼らの体に食い込むロープは丁寧に縛られていて、亀の甲羅のような模様に見える。
カトレーヌさんは口に笑みを浮かべて、やけに生き生きとしていた。
「くっ。こんな事をして……お前ら、タダで済むとは思うなよ!」
兵士が強い口調で言うけど、ロープの模様が面白くて、怖くなかった。
カトレーヌさんは、笑いそうになるのを堪えている。
「ぷぷ……じゃあ、リィト君とチコちゃんは、ちょっと隣の部屋で待ってて」
「あ、はい」
「リィトぉ、どうして?」
「カトレーヌお姉さんとおじさんは、これからお話があるんだって」
「そうなの? わかった!」
お話と言っても、暗殺者職が得意とするスキル、拷問だ。
「——お前たちは、リィト君やチコちゃんを殺そうと考えた。アタシはね、それが我慢ならないの」
チコに見せるのはよろしく無さそうなので、僕らは隣の部屋に移動ししばらく待つことにする。
兵士の悲鳴が小さく聞こえた。
ダンジョン内の壁は厚く、声は通りにくいようだ。
カトレーヌさん、絶好調だったな……。
ああ……かわいそうに。
僕は、兵士の人たちに同情したのだった——。
————
僕らは、その悲鳴が収まるのを待ってから戻った。
部屋に戻ると、やや顔を上気させたカトレーヌさんがこの先の状況を説明してくれる。
「はぁ、はぁ……いろいろと情報を引き出せたわ。やっぱりこの先の『儀式の間』にマエリスがいるみたい……はぁ、はぁ」
興奮が覚めないみたいだ。
よっぽど充実した拷問タイムだったのだろう。
「お、落ち着いて」
「ご、ごめん。久々でちょっと張り切り過ぎちゃった」
舌をペロリと出すカトレーヌさん。
「ほかにはグスタフがボリスたちと一緒みたい」
「グスタフ! どうしてここに?」
あいつらグルだったのか。
もしかして、僕を追放したのも計画的で……?
「マエリスを何かの儀式に使おうとしている」
「聖女の儀式ってマエリスが言っていたけど」
「こんなコソコソとダンジョンの奥で……ロクな儀式じゃないと思う」
「確かに。急ぎましょう」
「うん。準備には時間がかかるみたいだから、まだ無事だと思うけど、気になることがあって」
気になること?
「それってどういう?」
「どうやら『魔王』と呼ばれる者までいるみたいだけど……ううん、これはきっと間違いかも。忘れて」
「は、はあ。でも、魔王って……。王国が勇者を育成しようとしているのも、復活の兆しがあるからって聞いたことがありますが」
「でも、こんなところにいるのかしら?」
確かに。
もっと大きなお城にいるイメージがある。
まあ、魔王がいないとすると、敵の人数はそう多くないようだ。
問題は勇者候補のグスタフ。
でも、【水生成】の魔法があるし、それが効けば大した障害にはならないだろう。
「リィトぉ、行こう?」
チコが、僕の手を引く。
「ああ。そうだな」
僕にマエリスを救う以外の選択肢はない。
「リィト君」
「はい?」
「くれぐれも……無茶しないで」
「それは、たぶん無理です」
「わたしもむりー」
僕もチコもやる気に満ちていた。
「そう……そうよね。二人とも、本当に迷いがないわね。じゃあ、アタシも覚悟を決めますか」
そう言ってカトレーヌさんは息を飲む。
意識を合わせた僕たち。
もし魔王がいても、なんとかなりそうな、そんな気がした。
僕らはダンジョンの最奥の「儀式の間」に突入する。
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