第20話 年上の女性に素敵ねと言われて……(1)
上位悪霊を倒した。
大量の経験値を得て、僕は二つの呪文を覚えた。
僕が使える魔法を確認しておこう。
『
リィト、使える魔法は以下の通りだよ〜。
■火属性
【発火】
■水属性
【水生成】
■風属性
【風】(新規! グリッチ可能!)
■無属性
【鏡】(新規! グリッチ可能!)
【百発百中】
【小奇跡】
【識別】
【清浄化】(グリッチで聖属性)
【伝言】
【軽修理】
【光】
【食料生成】
』
全部……全部、生活魔法だ。
新しく覚えた魔法【風】と【鏡】は、お風呂上がりや顔を洗った時に便利そう。
「はぁ……」
攻撃魔法なんかきっと覚えないのだろうな。
まあ、僕には反則強化があるさ。
「リィト君! あの上位悪霊を倒せるなんて……。アタシ、ナイフの投擲が苦手で諦めていたけど、また練習してみようかな」
カトレーヌさんは、興奮が冷めないようで、僕に抱きつき、僕の手を強く握って言った。
「接近戦に加えて、ナイフ投げも出来れば強いですね」
「こんなに前向きになるなんて……リィト君のおかげね。ありがとう!」
僕の魔法が切れてからカトレーヌさんがナイフを投げてみたが、まっすぐ飛んで壁に突き刺さった。
彼女なりに、【百発百中】の魔法を帯びていたときの感覚を掴んだのだろう。
本当は針の穴に糸を通しやすくするための生活魔法なんだけどな。
僕はつられて嬉しくなった。
「カトレーヌさんの助けになれたのなら嬉しいです」
「うん、本当に……それで、宝箱が現れたわね?」
「そうですね。この どうやら、ワイトは奥の通路と、奥の宝箱をも守っていたようですね」
と、そういえばチコはどこだ? と思ったら……。
チコが宝箱を開けようとしている。
「ダメよ! 罠があるかもっ!!」
二人で駆けつけようとするがもう遅い。
ギィィーー。
音を立てて、箱が開く。そして。
カチッ!ビュッという音がして何かが飛び出し、カトレーヌさんの横をかすめ、壁に刺さった。
「チコ!」
「リィトぉ。なあに?」
んん?
チコは無事だ。
よかった。だけど。
「リィト君、罠が仕掛けてあったみたい。矢が飛び出す仕掛けが」
「うん。チコ、危ないから不用意に宝箱に近づいたり、敵に近づいたらダメだよ?」
「うん……ごめん。リィト」
僕は素直に謝ってくれたチコの頭を撫でた。
そのたびに、チコは気持ちよさそうに目を細める。
頭を撫でられるのが本当に好きなんだな。
「で、箱の中は何があるかな?」
「リィト君! これ!」
そこには、聖女着と指輪が入っていた。
見覚えがある。
マエリスが身に付けていた聖女着と、僕のとお揃いの指輪だ。
「マエリス……。この近くにいるのか?」
「多分、そうだと思う。ここで上着を脱がされ、指輪を外されて連れて行かれた。そんなに遠くない」
「マエリスぅ……」
マエリスの危機をを察しているのか、チコが僕に抱きついてきた。
急ごう。
————
「鍵がかかっているわね。開けるわ」
「うん。手元、明るくしよう。【光】」
僕が呪文を唱え、壁に光を灯す。
「リィト君、ありがとう。いろんな生活魔法……今さら……こんなに大切なものだったのに。失って分かる事ってたくさんあるわね」
「そうなんですか?」
僕は人に求められるということが、今まであまりなかったように思う。
「うん。ここでリィト君に会ったとき、アタシ……無意識に誘惑しようとしてたのかもしれない。ずっと近くにいて、こういう魔法を使ってくれてって。アタシは都合良すぎよ。ごめん」
「いえ、そんな。大切なものだと思って貰えるなら、嬉しいです」
カトレーヌさんは、一瞬だけ手を止め、僕の顔を見た。
しかし、すぐに視線を鍵に移し、手を動かし始める。
「ほんの少しだけど、あなたと一緒に行動しててね、あなたがどれだけマエリスを大切に思っているのか、分かったような気がする。それはマエリスも一緒なんだなって」
「付き合いの長い幼馴染みですから」
「もう。そういうことじゃなのだけど。でも、そういうところも素敵ね」
「素敵、ですか?」
「はぁ……。やっぱりあなた……マエリスも……。かなわないなあ。まあ、私が勝手に……なら、いいよね?」
「はい?」
その瞬間、鍵穴からカチャリと音がした。
「ううん、なんでもない。ほら、開いたわよ。行きましょう!」
「はい!」
————
僕らは奥の部屋に進む。
そして、いくつかの部屋を超えていくとカトレーヌさんが扉の前で立ち止まった。
「リィト君、次の部屋に誰かいるわ。二人、多分人間。そして、アタシたちを待ち構えている」
「チコ、静かに」
「うん」
僕らは、簡単に打合せをする。
迷いはない。
突入だ!
「じゃあ、作戦通りに」
「「はい!」」
バン!
僕らは大胆に、大きな音を立て扉を開き突入した。
「お前ら、俺たちに勝てるとでも——」
「ヒュウッ。なかなかいい女じゃないか。楽しめそうだなぁおい。ガキと男は殺せ!」
この人たち、本当に王国兵士なのだろうか?
「敵はやっぱり兵士二人、リィト君! 一人は任せるわ!」
「はい!」
僕とチコは息を合わせて部屋に入る。
カトレーヌさんは、さっと視界から消えるように走り出す。
「【鏡】!」『グリッチ!』
突然現れた複数の鏡に、王国兵士が怯んだ。
カトレーヌさんのスキルで、この部屋の状況が筒抜けだった。
状況を把握し、より有利な作戦を立て、準備をした方が勝つ。
「あなた……動くとこのナイフが喉を切り裂くわよ」
「くっ。クソッ!!」
「【水生成】!」『グリッチ!』
「グッ……苦しい」
その予想通り、屈強な兵士たちとの戦闘は僕たちの勝利であっけなく終わったのだった。
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