第19話 新たな魔法 〜VS 上位悪霊《ワイト》〜
よし、うまくいった。
ナイフに聖属性が付加されたので、カトレーヌさんに手渡す。
「カトレーヌさん、僕を信じてこのナイフを投げて下さい。必ず当たります。【百発百中】!」
『反則強化! 対象の肩に触れて!』
僕がカトレーヌさんの肩に触れると、彼女はビクッとした。
「えっ? リィト君?」
「大丈夫。繰り返しますが、必ず当たります。僕を信じて!」
「う……うん」
カトレーヌさんの瞳が虹色に変わる。
が、彼女自身は変化を感じていないみたいだ。
僕は、肩を掴んだ手に力を込める。
「まだ距離があるうちにナイフを投げてください。きっとうまくいきます」
「う、うん……わかった。リィト君を信じる!」
なぜか耳の先まで赤くなったカトレーヌさんは、思い切りよくナイフを投げた。
ビュンッと空気を切り裂く音を立てて、ナイフが飛ぶ。
曲がっていて、変な形をしているのにもかかわらず、そのナイフはまっすぐ飛んでワイトに突き刺さった!
「す、すごい……今の何の魔法? 会心の一撃だったかもしれない」
カトレーヌさんは手応えを感じたようだ。
嬉しそうに僕の手を取って喜んでいる。
しかし、一瞬揺らいだものの、ワイトは消え去らなかった。
ナイフが床に落ちカランと音がする。
投げる武器がなくなった。
その時——。
「リィト! これいるよね!」
なんと、目を離した隙にチコが、ワイトに接近してナイフを拾っている。
「チコ! 戻れ!」
ワイトは、チコに向かっていく。
くっ。
僕は走り出すが……間に合わない。
「チコちゃん!」
カトレーヌさんも叫ぶ。
ワイトがチコに向かって腕を振り上げるのが見えた。
時間の流れがゆっくりに感じる。
——ワイトの腕がチコに直撃したのが見えた。
「チコーー!」
その瞬間、バチッという音と、光で部屋が包まれる。
ん?
光が消え様子が見えるようになった。
チコに迫ったワイトは、首をかしげている。
チコが僕らの方に戻って来た。
けろりとしていて、なにか攻撃を受けたような様子はない。
「お姉ちゃん!」
「ありがとう」
チコが拾ってくれたナイフをカトレーヌさんがもう一度投げ、ワイトに直撃。
亡者は音もなく、断末魔の叫びも無く消えていったのだった。
上位悪霊。
脅威レベルはB級の大物だが、レベルの低い僕を含む三人で倒すことができた。
「リィト君! やった! やった! すごいよあの魔法!」
「リィトぉ! やったね!」
二人が抱きついてくる。
はあ、危なかった。
パーティで協力し、戦闘の経験を獲得したことを実感する。
頭の中に、チコの声が響く。
『経験値を獲得したよ! 新しい魔法が使えるようになった!』
『
新しく使えるようになったのは、以下の魔法だよ!
【風】 (そよ風を生むことができる。体や髪の毛を乾かすのに便利)
【鏡】 (体を映すほどの大きさの鏡を一定時間生成できる)
』
うん。
どちらの魔法も生活魔法だな……。
【作者からのお願い】
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