表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/40

第01話 勇者パーティを追放されてしまった


「もう分かったろ。俺の勇者パーティにお前は無理だ。追放するわ」



 唐突に、勇者候補であるグスタフが言う。



「僕をパーティの輪から遠ざけたと思ったら……どういうことですか?」


「今が丁度良いんだよ。ダンジョン攻略も終わって帰る時だしな」



 リーダーであり勇者候補のグスタフが薄ら笑いを浮かべて言った。

 彼は今年で二十歳。僕の四つ歳上だ。



「理由を教えてください」


「俺が見つけた魔術師を新しく雇うことにしてな。お荷物のお前なんか要らないんだよ。初級の——生活魔法しか覚えないお前なんか」


「……そんな」


「この後、パーティのみんなに話をする。リィト、お前の幼馴染みのマエリスが反対するかもしれないが、『リィトは実力不足を恥じて去ることにした』と言うつもりだ」



 グスタフは、妙に口元を歪めている。

 僕を見下しているのは感じていたし、今日は一層嫌な感じが強い。


 マエリスは僕と同じ孤児院で育った幼馴染みだ。

 彼女はお告げを受け、聖女候補とされていた。


 グスタフは僕の肩に手を置く。



「そもそも先日の儀式で告げられた職階級は何だ? 俺は五年前に勇者候補だと判定された。カトレーヌは暗殺者(ローグ)、マエリスは聖女だったな。お前は——?」


反則呪術(グリッチ=コード)師……」


「そうだ。誰もそんなスキルや職階級(クラス)など聞いたことがない。どうせろくでもない外れスキルなんだろうよ。とにかくこのダンジョンを出たら、そこでお別れだ。役に立たなかったおまえは、報酬はなしだ」



 その言い方は、まるで僕が何も知らないような口ぶりだった。



「今までも、元々、僕の取り分をピンハネしていたのですよね?」


「おや、知ってたのか? まあ、王国公認の勇者パーティを抜けるお前が、今さら何を言っても誰も話を聞かないだろうよ。勇者候補と役立たずのスキル使い、どっちを信じるか、おまえもわかるだろう。」


「う……」


「ここでお別れだ。皆にお前の離脱を伝えたが誰も反対などしなかった。お前の幼馴染みのマエリスは俺が寝取らせていただく」


「は? 何を言ってるのですか——」



 寝取る、か。

 そうか。グスタフはそれが目的だったのか。

 一向になびかないマエリスに対し、彼女と仲が良い僕が邪魔になったのだ。


 誰も反対しなかったというのも嘘なのかもしれない。

 マエリスだけは反対してくれたと信じたいが、もうそれを確かめる術は無い。



「マァ、もし追いかけて来るようなら、今度こそ俺が剣の(さび)にしてやる」



 初級魔法しか使えず剣を使えない僕がどんなに頑張っても、勇者候補とはいえ高い能力を持つグスタフでは勝負にならないだろう。 

 グスタフは脅すように言うと僕に背を向け去って行き、僕だけが残されたのだった。


 僕は自分の心配よりも、彼らが少し心配になった。

 グスタフの妙に急いで僕を追い出すような様子。


 本当に僕は役に立っていなかったのか?

 僕がいなくなって、今までと同じようにパーティが成り立つのか?

 マエリスのことが気がかりだ。





 ——グスタフは、リィトを失ったことをじわじわと後悔することになる。

 しかし、気付いた時には、時既に遅し。

 遅すぎたのだった。


【作者からのお願い】


この作品が【面白そう!】、【期待できそう!】、【続きが気になる】と持ってくださった読者様、是非ブックマークとの評価(↓)【☆☆☆☆☆→★★★★★】で応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

楽しんでいただけましたら、↑の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて、評価、応援をお願いします。






新作を連載しています。こちらもよろしくお願いします。
ハイファンタジー連載

【最強の整備士】役立たずと言われた「スキルメンテ」で俺は全てを、魔改造する! みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた件。〜勇者のスキルが暴走?知らんがな!〜

― 新着の感想 ―
[良い点] 面白そうです [一言] チートを使いたくなくて、グリッチ(glitch)にしたのだと思いますが、グリッチは一過性のエラーのことです。 ネットワーク障害や接触不良などハードウェアの瞬間的な障…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ