第01話 勇者パーティを追放されてしまった
「もう分かったろ。俺の勇者パーティにお前は無理だ。追放するわ」
唐突に、勇者候補であるグスタフが言う。
「僕をパーティの輪から遠ざけたと思ったら……どういうことですか?」
「今が丁度良いんだよ。ダンジョン攻略も終わって帰る時だしな」
リーダーであり勇者候補のグスタフが薄ら笑いを浮かべて言った。
彼は今年で二十歳。僕の四つ歳上だ。
「理由を教えてください」
「俺が見つけた魔術師を新しく雇うことにしてな。お荷物のお前なんか要らないんだよ。初級の——生活魔法しか覚えないお前なんか」
「……そんな」
「この後、パーティのみんなに話をする。リィト、お前の幼馴染みのマエリスが反対するかもしれないが、『リィトは実力不足を恥じて去ることにした』と言うつもりだ」
グスタフは、妙に口元を歪めている。
僕を見下しているのは感じていたし、今日は一層嫌な感じが強い。
マエリスは僕と同じ孤児院で育った幼馴染みだ。
彼女はお告げを受け、聖女候補とされていた。
グスタフは僕の肩に手を置く。
「そもそも先日の儀式で告げられた職階級は何だ? 俺は五年前に勇者候補だと判定された。カトレーヌは暗殺者、マエリスは聖女だったな。お前は——?」
「反則呪術師……」
「そうだ。誰もそんなスキルや職階級など聞いたことがない。どうせろくでもない外れスキルなんだろうよ。とにかくこのダンジョンを出たら、そこでお別れだ。役に立たなかったおまえは、報酬はなしだ」
その言い方は、まるで僕が何も知らないような口ぶりだった。
「今までも、元々、僕の取り分をピンハネしていたのですよね?」
「おや、知ってたのか? まあ、王国公認の勇者パーティを抜けるお前が、今さら何を言っても誰も話を聞かないだろうよ。勇者候補と役立たずのスキル使い、どっちを信じるか、おまえもわかるだろう。」
「う……」
「ここでお別れだ。皆にお前の離脱を伝えたが誰も反対などしなかった。お前の幼馴染みのマエリスは俺が寝取らせていただく」
「は? 何を言ってるのですか——」
寝取る、か。
そうか。グスタフはそれが目的だったのか。
一向になびかないマエリスに対し、彼女と仲が良い僕が邪魔になったのだ。
誰も反対しなかったというのも嘘なのかもしれない。
マエリスだけは反対してくれたと信じたいが、もうそれを確かめる術は無い。
「マァ、もし追いかけて来るようなら、今度こそ俺が剣の錆にしてやる」
初級魔法しか使えず剣を使えない僕がどんなに頑張っても、勇者候補とはいえ高い能力を持つグスタフでは勝負にならないだろう。
グスタフは脅すように言うと僕に背を向け去って行き、僕だけが残されたのだった。
僕は自分の心配よりも、彼らが少し心配になった。
グスタフの妙に急いで僕を追い出すような様子。
本当に僕は役に立っていなかったのか?
僕がいなくなって、今までと同じようにパーティが成り立つのか?
マエリスのことが気がかりだ。
——グスタフは、リィトを失ったことをじわじわと後悔することになる。
しかし、気付いた時には、時既に遅し。
遅すぎたのだった。
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