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大晦日の恒例行事

作者: 新田楽学

 俺のクラスの同窓会は大晦日に行われる。

 12月31日23時。毎年きっかり同じ時間に電話が鳴るのだ。


『信也くん?』


 元恋人は付き合ってた当時とまったく変わらない声で俺の名を呼んだ。


『わたしだよ、香奈だよ。一年ぶり!』


 えへへ、と嬉しさを隠そうともせずに香奈は笑った。


『最近はどう? 元気にしてる?』


 さて、どうだろう。少なくとも死ぬ予定がないのだからまずまず元気といえるだろうか。


『こっちはもうみんな集まってるよ』


 大勢のガヤガヤとした声が電話越しに聞こえてくる。


『あれから今日でちょうど十年。いい機会だと思うの。信也くんも来てくれないかな?』


 数字のキリが良いからって他人に行動を強制する免罪符にはならない。少なくとも死ぬまで行く気はないね。


『……やっぱり今年もダメ?』


 沈んだ声音に罪悪感を覚えるが、それでもうんと言うわけにはいかない。


『そっか。そうだよね。わかったよ』


 俺の頑なな態度に香奈は諦めたようだ。来年も、再来年も、その先も。それこそ死ぬまで。俺は彼女の誘いを断り続けるのだろう。

 気持ちを切り替えたのか、香奈の声のトーンが若干上がる。


『そうだ、みんなも信也くんと話したいって。代わるね?』



『おっす信ちゃん。オレだよ、海老原だ。この十年でみんな次々集まってくれてすげえいい感じだ。後は信ちゃんだけだ。いい加減意地張ってないで顔見せてくれよ。お前をずっと待ってる香奈ちゃんの気持ちも考えろよな』



『ユウスケでーす。クラスに信也がいないのは違和感しかないよ。早く来いよなー。今年こそは来てくれると信じてるからなー』



『や、信也。谷岡だよ。僕も君と同じでこちらに来るつもりはなかったけれど、いやあ、まいったね。家まで迎えに来られてしまうとは、たはは。君の彼女は相変わらず行動派だねえ』



 とまあ、こんな具合にクラスメイトたちが俺に顔を見せろ、こっちに来いといったメッセージを一方的に投げかけてくるわけである。毎年向こうの参加人数が増えていくことに一抹の不安を感じながらも目を逸らし続けていたわけだが、遂に俺以外のクラスメイト全員が集合したらしい。俺は最後の一人になったのだ。


 勧誘リレーが一周し、香奈の番が回ってきた。


『ねえ、信也くん。わたし、信也くんが好き。十年経ったけどこの気持ちは変わらない。これから先もずっと』


 十年前に香奈が告白してきた時のことが脳裏に浮かんだ。一度断ったのに、その後も何度もアタックしてきた彼女に俺は絆されたのだ。


『迷惑だってわかってる。でも、諦められない。信也くんに会いたいの。だってもう十年も会えていないもの』


 ふと、思い出した。そうだ、彼女はそういう人間だった。拒絶した俺の家まで押しかけてきて、それこそ押してもダメならもっと押し、絶対に諦めない。それが香奈だった。そういうところに魅力を感じたのだ。


 今では気味が悪くて仕方がない。


『前から考えてたの。今年も断られたら迎えに行こうって。信也くんもそういうわたしを気に入ってくれたもんね』


 年明けまでまだ5分もある。


『もうすぐ着くからそこで待っててね』


 俺はすぐに家を出た。


リハビリで書きました。

やっぱムズイですな小説を作るというのは。

とはいえ1000字でも書けただけ大きな進歩というものです。

次は2000字越えを目指します。ハイ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 死ぬまで行く気はない。つまり、同窓会に行くことは、死を意味しているんですね。香奈さんは死神だったんでしょうか。
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