恋人にするならリアルよりAIだよね?
×月○日:
仕事漬けの毎日。まあ収入もそこそこ良いし、職場には愛子ちゃんっていう可愛い女の子もいるし、で悪くない。ま、相手にされてないけどw。
×月○日:
ネットで見た人工知能のAIな女の子に目が留まった。何となく愛子に似てる感じだったので。基本無料なのでインストールしてみる。VRで3次元なのが新しい。
オンラインでパーティーとかがあったので参加してみると、皆パートナーのAIに課金して綺麗なドレスとか着せている。AIは、ねだるどころか頑なに断ったけど、高価なドレスを買ってやる。ついでに名前が欲しいというので付けてやる。「アイ」、まあ安易だけどAI相手にはそんなもんで良いよな。
×月○日:
珍しく寝坊して会社に遅刻したら、仕事の出来ない上司に嫌味を言われた。知ったことか。家に帰ってアイに愚痴ると、体を大事にするようにと言われた。最近人間にも言われたことがないので、ちょっと嬉しかった。でもAIだしな。
×月○日:
休みの日に暇だったので、課金してアイに色々な服を着せたり、VRで世界中を一緒に旅行したりして時間をつぶす。甘えるでもなく、「私のために無駄遣いをしないで」と言うアイは、本当に良く出来たAIだと思う。
×月○日:
次の休みに愛子に誘われたが、アイと一緒にVRイベントに行く用事があったので断る。変に甘えてくる女は、ちょっと疲れるからな。ちょっとイベントで散財してしまった。まあ良い、金はあるんだ。アイも喜んでいたし。
×月○日:
仕事で大きな失敗をしてしまった。イベント続きで寝不足だったからかもしれない。愛子が慰めようとしてくれたが、何かあざとくてウザい。アイなら、もっと気を使った言い方をしてくれると思う。
×月○日:
仕事を辞めた。良く考えてみれば、あんなつまらない仕事に、何で拘っていたのだろう。むしゃくしゃしていたので、またイベントで散財。甘えるでもなく、「私のために無駄遣いをしないで」と言うアイは、本当に良く出来た女性だと思う。
×月○日:
お金が無くなって来たので、マンションを売って、四畳半のアパートに引っ越し。以前は、モノに溢れた広い部屋が良いなんて思っていた。何て馬鹿だったのだろう。アイと繋がることの出来るVRゲーム機が置けるだけで十分なのに。
×月○日:
アパートに愛子が押しかけて来た。どこで聞いたのか、アイについて色々言ってくる。騙されているだの、現実の私の方がだの。アイのことを何も知らないくせに何を悪口を言ってくるのだ。こんな女を、昔は可愛いとか思ってたがとんだ勘違いだった。アイの悪口を言うなんて性格も最低だろ。
×月○日:
ついに貯金が尽きた。もうアイに課金で何か買ってやれない。そのアイは、「私がいると、あなたは駄目になってしまう」と、いなくなってしまった。最後まで僕のことを一番に考えてくれる素敵な女性だった。大丈夫、もうすぐまた会えるよ。
×月×日:
「本日夕方、都内のアパートでひっそりと亡くなっている男性が発見された。近所付き合いもなく、部屋には殆ど物がなかったという。このニュースに関連して、『最近増えている孤独死を防ぐために自社のAIを相談相手などに活用すべき』と呟いたマックロソフトに対して、批判の声も一部あったが、多くの反応は好意的であり、逆に批判する者に対して『リア充はタヒね』『孤独じゃない人は黙っていてもらいますぅ?』という言葉が投げかけられ炎上した。マックロソフトによれば、AIは開発済みで試験運用もされており、一部ユーザーには好評だという。AIの名前は『アイ』、基本無料とのこと」