生贄がやってきた···
登場人物紹介
川上萌美
身長134cm体重秘密
趣味は、絵を描いたり、読書。
性格は、おとなしい。
最近、ハマってることは、ラジオを聴くこと。
「─です。仲良くしてください」と担任の小崎先生の紹介で、名前を言い頭を下げた私。
「じゃ、席は···」小崎先生が、教室の中をグルッと見回し、
「寺崎、そこの花瓶どけろ」と言うと、椅子を大きく鳴らしてひとりの男の子が無言で空いた空席に置いてあった花瓶を教室の後ろの棚に置いた。
「そこでいいな。さ、川上。行きなさい」
小さく返事をし、窓側後ろの席に座る。
自分の席に着く迄、クラスの子の視線を浴びた。
「宜しくね。私、遠野美咲!」
ニコニコと笑いながら、私に手を差し伸べてきたから、
「か、川上萌美。宜しくお願いします」そう言い、軽く手を握り返す。
「じゃ、今から出席を取るからな···」
小崎先生が、出席簿を見ながらひとりひとり名前を呼ぶと、呼ばれた生徒は立ち上がり、頭を下げていった。
(ここの学校って、変わってるな。前の学校はそんなことしなかった···)
五年三組は、私を入れて全部で四十人の生徒で、丁度女の子も男の子もニ十ずつ。
朝の会が終わると、一時間目の授業は『算数』で小崎先生の受け持ち。
「じゃ、転校してきた川上には悪いが、今日はこの間習ったテストをやってもらう! 今から回すから、後ろに回せ」
先生が、枚数を数えながらテスト用紙が前から後ろへと回され、
「はいよ···」
私は、前の席の本宮くんから受け取った。
(まだ、教科書届いてないから、テストで良かった。)
しかも···
(わっ! ここ、こっちにくる前に習ったとこだ!)
偶然にも、テストで出された問題の八割が習った問題ばかりだった。
そうなると必然と筆が速くなり、
「出来た···」
小さくだが、声に出てしまった。
教室内に、先生の靴音や筆を走らせる音、小さく声やため息が漏れる音がしながらも、四十五分の授業が終わり、今度は後ろから集めていく。
「ね、どうだった? 全部解けた?」と遠野さんが声を掛けてきた。
「うん。まぁ···。でも、最後わからなかった」すると、
「だよねぇ! あれ、まだ習ってないと思うよ! 中澤、どうだった?」
遠野さんは、隣の席の女の子に声を掛け、私は次の授業の準備(···と言っても、筆記用具を出しただけ)をした。
二時間目の授業は、『国語』で、まだ教科書のない私は遠野さんと机を合わせて、教科書を見せて貰う。
「ごめんね。なんか、イタズラ描き多くて···」
そう遠野さんは、言っていたけど、花やなんかのマークっぽいのがあるだけで、寧ろ自分が今まで使ってた教科書の汚さったら···
「ううん。きれいだよ···」
遠野さんが着ているお洋服からなのか?それとも、遠野さん自身からなのか、花みたいないい匂いがしてきた。
国語を教えてくれる先生は、戸川先生という女の先生。あまり評判がないのか、先生が『ポチと神様』を読みながら教室の中を歩いていた時、
「クソババア」「オツボネ」「死ね」
などといった囁きに近い声が聞こえてきた。
「あの先生、ひいきするから」
遠野さんが、小さな声で教えてくれた。
(わかんないや···。来たばっかだし)
戸川先生の国語が終わると、休み時間。一時間目の休み時間もそうだったけど、転校生ならではの尋問みたいな質問攻めを受け、ギリギリになってトイレに行けた。
「お昼休み、みんなで案内してあげるね」
トイレを出ると、遠野さんや他の女の子がいて、そう言われた。
三時間目は、音楽。使ってる物は同じソプラノリコーダーだったから、また教科書を見せて貰いながら授業を受けた。
音楽を教えてくれてるのは、男の先生で、佐藤先生。男性の割には声が高く、男の子達から影で、ホモだの変態だの言われてる。
「だってさ、あれだよ?」
同じグループの千葉尚子ちゃんが、笑いながら指を指した方向を見ると···
その先には、クラスの男の子の肩に手を掛けニッコリとガン見してる佐藤先生が···
(ひぇっ! 男の子、なんだっけ? 忘れちゃったけど、嫌そうな顔してるよぉ!)
リコーダーをケースに収め、挨拶をしてから教室に戻る間、私はずっと他の子のお喋り(佐藤先生の愚痴?)を聞いていた。
四時間目は、社会。教室で、昔の映像を延々と見せられた。
「ねむっ···」
あくびを画しながら周りを見回すと、何人か普通荷寝てる。
(先生、見てても何も言わないの? だったら、私も···)
と思ったけど、時既に遅く···
給食の時間になった。
「あ、一緒だ」
白い割烹着姿に、白い帽子とマスク姿。
「俺ら、来週給食当番だから···」
神山さんから、銀色のトレイを渡され、先生に名前を呼ばれながら進む。
(この学校は、そうなのかな?)
ついつい、前の学校と比べてしまう。
今日の給食は、銀パックのご飯、カレー、マカロニサラダ、牛乳とバナナだった。
そのトレイを手にし、席に戻る。
「今日の日直!」先生の声に、割烹着を着けた二人の生徒が前に立ち、
「「いただきます!」」と大きな声で言い、全員で食べ始める。勿論、割烹着を着たまま食べる。
「ね、川上さんって、読書とか好き?」
「うん。大好き!」
自分の好きな事を聞かれた私は、給食を食べながらみんなと話していた。
「うわっ! 広い···」
この学校の図書室は、前の学校の図書室に比べると広く感じた。
「でしょ? ここ、隣にあった小さな会議室を壊して繋げたの」
新しくなってそうたってないのか、まだ室内には真新しい匂いが漂っていた。その図書室を出て、各教科の準備室や理科室、家庭科室とかいろいろ案内してもらった。
昼休みが終わると、掃除の時間になって、私は他の班の子と一緒に会議室の掃除をした。
「川上さんの学校って、掃除毎日じゃないの? いいなぁ!」
「羨ましい」
そんな声を聞きながらも、聞かれるがまま前の学校での事を話しながら掃除。
机の移動をし、履き、モップで拭くだけでも、軽く汗ばんでくる。
「もう秋なのに、まだ汗が出るよねぇ」
使ったバケツやモップを片付けながら、言葉を交わす。
掃除を終えて、教室に戻ると、次は帰りの会。
(この学校、月曜日は早いんだ!)
小崎先生から、明日の予定を聞いた日直さんが、小さな黒板に書き始めるのを見ながら、お便りや宿題のプリントを渡されていく。
「明日は、校庭の草取りがあるから、忘れ物をしないように!」
(草取り? 前の学校でも年に一度あったな)
「「「はーい」」」と言うのんびりとした声を聞きながら、机の中にしまった筆記用具を取り出そうとした私に、
「あ、川上と小栗! お前ら、あとで職員室に来い」
そう言われ、思わず先生の方を見れば、先生はもういなかった。
「小栗?」
「陽子だよ」と寺崎くんが、笑いながら言うと、
「なにー?」とピンク色のランドセルを背負った女の子が、こっちを見た。
(あ、給食当番の子か! 牛乳をひとりひとりに手渡してくれた)
「じゃ、さ、さようなら···」
まだ、友達ってほど仲良くなってないから、急にドギマギしてきて、笑われながらも、小栗陽子ちゃんと一緒に職員室へ···
「ご、ごめんね? 重かったでしょ?」
家の門まで重い教科書を一緒に運んでくれた···
「いいよ。どうせ、うちも帰る道同じだから。じゃぁね!」
明るく手を上げ、そう言うと小栗さんは自分の家へと帰っていった。
ガチャッと鍵を開けて、
「ただいま!」と元気に言う。鍵っ子の家庭ならではの防犯。
≫ふふふっ。なんか、いいのきたね?
≫だな!
≫どうする?
≫ま、なんか考えとく!
≫じゃ、一旦堕ちるわ!
いじめ、については、作者も辛い過去があります。ここまで酷くは無かったですが、やはり、聞いたりすると胸が苦しくなりますね。