表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Grow 〜異世界群像成長譚〜  作者: おっさん
むかえに来たよ。
93/130

第92話 ベルガモットと憔悴のコラン

「リリー…どこなの?出てきて。リリー…」

 ふらふらと、今にもどこかへ消えて行ってしまいそうな、コラン。

 僕はその腕をしっかりと掴んで、誘導する。


 その脇を、何か考えるような仕草をするソフウィンド。幸せそうな表情で、コランに抱き着くビリアが取り囲んでいた。


 まぁ、相棒を持ったコランが本気を出せば、僕達が何人いようが、何をしようが無駄な抵抗ではあるのだが…。


 ただ、数日間、森の中を駆けずり回ったコランは、もう、本気を出す気力も、体力もないように見える。


 時折、あらぬ方向へ歩いて行こうとするのだが、僕が腕を引くだけで、その体は簡単に引き戻された。


「…大丈夫ですか?」

 僕に引っ張らっれた勢いで倒れそうになったコランを、ソフウィンドが支える。


 こんなに弱々しいコランを見たのは初めてだった。

 心がチクチクする。


 とは言え、また、体力が回復すれば何をしだすか分からない。

 申し訳ないが、コランには地下牢にまでご同行願った。


「良いな?お前は落ち着くまでここに居るんだぞ?」

 牢の中にまで、抵抗なく誘導されたコラン。

 彼女の(よど)んだ眼を見て、話をするが、反応は全く返ってこなかった。


「…その薙刀。預かるからな」

 僕の声に、ピクリとコランが反応する。


 その表情を見るに、怯えている様だった。

 リリーが失踪(しっそう)してから、初めて返ってきた反応がこれだと言うのだから、少し悲しくなってしまう。


 コランはもっと阿保で、元気で、阿保で、明るくて、阿保だけど、優しくて…。

 僕達を信頼してくれていると思っていたのに…。


「はぁ…。調子狂うぜ」

 僕は頭を()きながら、コランに詰め寄った。


「い、いや!あっち行って!」

 コランは薙刀を抱き抱えながら、逃げる様に、後退(あとずさ)りしていく。

 しかし、それも長くは続かず、()ぐに、牢の(すみ)に追いやられてしまった。


「…悪いな。コラン」

 コランが大事そうに抱える薙刀を、僕は奪う。

 そうでもしないと、この牢であっても、破壊して脱走してしまうだろうから…。


「ダメ!返して!」

 コランが必死の形相(ぎょうそう)で掴みかかってくる。


 しかし、その力は想像以上に弱かった。

 …これがコランの全力だとは思いたくなかった。


「大丈夫ですよ。姉様。私がついていますからね…」

 ビリアが暴れるコランを優しく抑え込む。

 頬を紅潮させ、息を荒くし、(よだれ)を垂らしそうになっているが…。

 今は目を瞑ろう。


「悪い…。二人とも。後は頼んだ」

 僕がここにいても、コランを刺激するだけだ。

 二人に後を任せると牢を出る。


「返せぇえええ!返せぇえええ!」

 最後まで、コランの物とは思えない、憎悪に満ちた叫びが響いていた。


 そのせいか、頭が痛くなってくる。

 コランを追いかけまわして、僕も疲れているのだろうか?


 カラン。

 不意に眩暈(めまい)がして、僕は薙刀を取りこぼしてしまう。

 すると、少し体が楽になった気がした。


「…」

 僕はもう一度、薙刀を持つ。

 …やはり、気分が悪くなった。


 何かこの薙刀には秘密があるのかもしれない。

 …その秘密が分かれば僕も強くなれるのだろうか?

 今のコランを救ってあげられるのだろうか?


 試しに薙刀を振ってみれば、僕の体とは思えない程の速度で腕が振るわれた。

 僕は吐き気を(こら)え、薙刀をぎゅっと握る。


 これさえあれば!


 暗転。

 そこで僕の意識は途絶えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ