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第30話　ミランと子どもな大人たち

ちょっと短いですが…。

　いつまでも質問ばかりして、話を進めない私に刺さった視線。

　その視線をどう勘違《かんちが》いしたのか仮面の少年は「すいません。食べ物を交換するという話でしたよね」と、申し訳なさそうに頭を掻《か》いた。

「これが自慢の干し肉です。塩と香辛料《こうしんりょう》を使っているので長持ちしますよ」

　香辛料と言うものは少しわからないが、塩ならば旅の途中耳にしたことがある。

　海という広大な湖のそばでしか取れないという貴重な調味料だったはずだが…。

　疑問に思いながらも手に取ると、とても良い香りのする干し肉だった。

「一口どうぞ」

　少年に促されて一口食べると、今までに食べたことのない美味しさが口の中いっぱいに広がった。

　ちょっとしつこいぐらいの塩辛さと、嗅いだことのない独特の香りが鼻を駆け抜ける。

　そして噛《か》めば噛む程あふれ出る肉の旨味。

　お酒間欲しくなる味だった。

「美味しい…」

　思わず零れた一言に少年は満足そうに笑顔で返した。

「これはハチミツ漬けで甘辛い味付けです。こちらのドライフルーツなんかとよく合いますね。その他にも川魚に岩塩、蜂蜜に茸、何でもあるのでどんどん見て行ってくださいね！」

　張り上げた声と共に少年は視線を村人に投げた。

　村人は私に視線を寄せる。

　私が静かにうなずくと皆は挙《こぞ》って店に集まった。

「良かった…」少年が小さく安堵したように呟く。

　しかし、それも束の間、人の群れから質問が飛ぶ。

　質問は次から次に投げかけられ、少年の声はみるみる焦《あせ》った物に代わっていった。

　しまいには不思議な走車にも手を出し始めた村人がいて、少年はてんやわんや。

　子どもを困らせる大の大人たちは今年一番の笑顔を見せていた。