表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Grow 〜異世界群像成長譚〜  作者: おっさん
おいで。はやく、おいで…。
114/130

第113話 ソフウィンド of view

 「…ロワン……。良くなればいいけど……」

 寺院からの帰り道。家に向かう草原の中で、俺は、ボソリと呟いた。


 あの病を患って、回復した人間は、誰もいないと言う。

 …まぁ、ロワンの倒れた原因が、例の病と言う確証はないし…。

 ……あの病を患った人間が多くいた寺院に、ロワンを置いてきたのは間違いだったかもしれない。

 もし、倒れた原因が別にあって、弱っているロワンに、例の病がうつったら……。


 「……あ、俺もやばいか?」

 例の病気は、あの村の中でのみ、流行っており、俺達の家族には、まだ感染者がいなかった。


 「持ち帰ったら、目覚め悪いなぁ……」

 家へと向かう足が止まる。もう、夕闇が、すぐ後ろまで迫っていた。


 「…さっぶっぅ……」

 冷たい夜風が、俺の体温を奪っていく。ここに突っ立っている方が、風邪をひいてしまいそうだ。

 ……よし、誰か手ごろな奴に声をかけて……。


 「こらぁ!返しなさぁ~い!」

 丁度、丘の向こうから聞き覚えのある声が響いて来る。


 「だめだ!お前、また無茶したろ!今度と言う、今度は返さん!」

 どうやら、コランとベルが、例の薙刀をめぐって、追いかけっこをしているようだった。


 俺は、またか、と思いつつも、声のする方向に近づく。

 あの薙刀には、如何やら、特殊な力があるようで、力を授ける代わりに、体力を吸い取るそうだ。

 加えて、不用意に触れると、適性のない物は命を落とす恐れがある為、触れないように。と、元気になった……。元気を取り繕った、コランが皆に教えてくれた。


 まぁ、コランが皆にその秘密を打ち明ける羽目になったのは、コランが放心している内に、ベルが何度も無断で薙刀を使い、倒れていたせいなのだが……。


 「何よ!あんたには関係ないでしょ!」

 遠くに、青々と葉を茂らせた木を振りまわし、ベルを追うコランの姿が見える。木の枝ではなく、木そのものとは…。喧嘩のスケールが違う。


 「そんな訳あるか!倒れたお前を介抱するこっちの身にもなってみろ!」

 そんな木を避けつつ、文句を言う、ベル。

 薙刀を持っているのはベルだと言うのに、どんどんと距離が縮まって行く。


 「そんなの!誰も!頼んで!なぁ~い!」

 コランは声を張って叫ぶと、自分の数倍はある木を投擲(とうてき)する。

 ベルは、不意の飛来物に気付く事なく、走り続け……。

 ドーン!と言う衝撃音と共に、砂埃(すなぼこり)の中へと、姿を消した。

 俺は、頭を抱えながら、ベルの消えた方へと近寄る。


 「あ!ソフィー!お帰りぃ~!」

 こちらに気が付いた悪魔が、天使の笑顔を(たずさ)えつつ、手を振って、近づいて来た。


 「あんまり近づくなよ!もしかしたら、病気がうつるかもしれない!」

 こちらに駆け寄ってくるコランを制止しつつ「あと、ソフィーって呼ぶな!」と、付け加える。


 「そうだった、そうだった。ごめんね、ソフィー」

 そう言って、俺の近くで制止するコラン。何一つ、話を聞いていなくて、ため息が出る。


 「大丈夫、大丈夫!私、風邪だってやっつけちゃうからね!」

 ……まぁ、(あなが)ち、嘘ではないような気も、しないでもないが…。


 「それでもダメだ。万が一うつったら責任が取れない」

 俺は、コランを突き放すと、晴れて来た砂埃の向こうに目をやる。

 如何やら、木はベルの目の前に落下していたらしく、それに正面から衝突したのか、ベルが目を回していた。


 「あぁ~あ。気絶しちゃった。これで、お相子だね」

 気絶したベルを担ぎ上げ、薙刀を回収すると、こちらに向けてウィンクをしてくる。

 お前が、生き証人だとでも言いたいのだろうか。


 「さ、暗くなってきたし、早く帰ろ。……あ、ソフィーも担いであげようか?」

 …女の子に抱えられるのも嫌だが、コランの場合、その移動速度で、第二の屍になりかねない。

 俺は天然な悪魔の誘いをやんわり断り、念の為、隔離小屋の方に帰る。との伝言を頼んで、その背中を見送った。

 ……風のような速度で消えて行く、彼女の背中。

 担がれなくて良かった…。と、安堵の息を零す。


 「………」

 ふと、先程まで感じていた不安感が、吹き飛んでいる事に気が付いた。

 「…本当に、自由な奴らだよ」

 俺は、クククッ。と、小さく笑うと、家族の待つ家へと向かう。

 今日の晩御飯は何だろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ