表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/130

第10話 メグルと姉さんの誘い

「う、うう~ん…」


 寝ている僕に誰かがじゃれてくる。


 まだ眠いのに…。誰だろう。

 僕はまぶたを開く気になれず、押し付けられてくるモフモフをモフモフし返す。


 これは?!分かる!分かるぞ!ここ数日間ブラッシングをしつつ、皆をもふりつくしたこのモフラーになら分かる!相手はセッタ姉さんだな!


 瞼を開けばそこには予想通り、僕のおなかに顔を押し付ける姉さんがいた。

 モフラーってなんだよ。と思いつつ、過去にも同じように動物をでていた自分がいたような気がした。


 ”記憶”の僕も動物好きだったという事か…。


 それも動物としての好きよりも家族としての好きを感じる。

 ”記憶”の僕と共通点があると、その部分は変化しないような気がして、とても安心した気持ちになれた。


 時折怖くなるのだ。あまりにも異なる”記憶”の僕が僕を侵食してしまうのではないか、僕が僕ではなくなってしまうのではないかと。


 しかし、共通する部分であれば何があってもたもたれるような気がして安心する。

 ある日突然、セッタ姉さんたちが獣にしか見えなくなるのは…怖い。


 それはそうと、セッタ姉さんはマロウさん以外にこのような事はしない。

 一体どうしたのだろうか。



「どっ…」

 どうしたんですか?と聞こうとしたら、尻尾を口にえられた。

 しゃべるなという事だろうか。


 さらに深まる疑問の視線を姉さんに向けると、セッタ姉さんは僕のおなかにうずめていた顔を引き出し、そのまま口で軽く僕の服を引っ張った。

 付いてきて欲しいのかな?

 そう思ったが、マロウさんの抱擁が…とてもじゃないが抜けられる気がしない。


 僕を抱え込んで幸せそうに眠っているマロウさん。

 僕はそれを困った視線で見つめると、セッタ姉さんは呆れたような表情で尻尾を持ち上げ、マロウさんの顔の上におろした。


 柔らかくて、モフモフした尻尾が、優しくマロウさんの顔を包み込む。

 しかし、下敷したじきになれば、その質量はえげつない。

 それが顔に沿ってフィットする訳だから…。


 マロウさんの顔を完全に覆い隠したモフモフ。

 それではマロウさんの息が…。


 そう思った矢先、マロウさんの左腕が勢いよく振られる。


 目に留まらぬ速さで振り下ろされたマロウさんの左腕は、洞窟を潰すのではないかと思うほどの衝撃をもたらした。


 あまりの出来事に声も出なかったが、マロウさんは何事もなかったかのように寝ている。


「あ…」


 いつの間にかほどかれていた拘束に、僕はいずるようにしてマロウさんから離れる。

 今の衝撃で腰が完全に抜けてしまったのだ。

 マロウさんの睡眠は妨害ぼうがいしない。これだけは覚えておこう。


 仕方ない、と言った風にセッタ姉さんは僕を咥えるとそのまま背中に乗せてくれた。


 僕は恥ずかしくなり、極上のモフモフに顔をうずくめるが、今回も獣臭くて少し咽た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ