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第02話 ネロとノキア

惑星シリホルギニアはリンクスの力が人々の生活を支えている。


しかしリンクスが人々を苦しめているのも事実。


どの道、今ではリンクス無しでは民は生きていけない。


それは人がリンクスの力に頼り過ぎた事による、一つの依存症みたいなものである。


その力は便利で金もかからず、商売にさえなる。


それにより、考える力はリンクスの活用のみに集中している。


シリホルギニアに、リンクスに疑問を持つ人間がいない訳では無い。


この国にも反リンクス思考の人間が携帯や家電、いろんな物を作った。


しかし、それらは少なからずリンクスの力が加わっていた。


そう・・・。人はどんな思考を持っていても、楽な方に流されてしまうのである。


根底にその様な思いがあれば、すぐ争いは生まれる。


最初の争いは小さいかもしれない、でも積み重なればアッと言う間に周りを巻き込む。


その力・・・。


それは必要悪である。




「何度言ったら解るのですか?リンクスの解放の際、意識を集中しないと体ごと侵されますよ。」


這いつくばるネロ。


「そんなこと言ったってシンカは、リンクス量それほど多くないだろ?俺の10分の1くらいじゃないか?それなのに力を応用して色々な事に役立てているではないか。俺もリンクスの応用に移りたいぞ。」


ネロのリンクス量は、国5本の指に入るリンクスの使い手、シンカにも生涯手が届かないほどの膨大な量を秘めていた。


そもそもリンクスとは人の持ち合わせるオーラ量みたいなものである。


その使い方は様々で、人の鍛練により、どんな活用の仕方も出来ると言われている。


しかしリンクスを制御出来なければ、自分の死と向き合う事となる恐れがある。


シンカは言う。


「リンクス量が多いからこそ制御しなければならないのです。ネロ様のリンクスはこの国のトップと思われます。制御出来なければ貴方様自身が死ぬ事はもちろん、その場にいる民もなんらかの被害、もしくは死に至らしめる事になるのですよ。」


ネロはその言葉を聞くと、それまで緩んでいた顔を引き締め、体を起こし、シンカに言う。


「わかってる。この国はいずれ僕が守る。」


ネロの顔はマジだ。


普段高飛車ぶっている割にダラダラ修行しているネロも、民の事となると目の色が変わる。


「では、10分休憩してまた始めますよ。ネロ様の御命は民と同様の価値のものです。その命を守りたいと言うネロ様にはもっと鍛練してもらわないと。」


シンカは真顔で表情一つ変えず言う。


その時、シンカとネロの後ろから、威勢のいい声がする。


「お兄様!」


ネロの弟、ノキアである。


「お兄様。帰って来て3日も経つのに、僕の所に顔を見せてくれてないなんて・・・。ずっと待ってたんだよ!お兄様に3日も会えない日々が、なんと長かった事か。早くお兄様と手合わせしたいです。」


ネロはノキアを見ると肩を持ち上げて気が抜けた様に下ろし、少し俯きつまらなそうに首を振る。


「俺は今忙しいんだ。お前の相手をしてるヒマは無い。手合わせならミシェルにでもしてもらえ!」


ミシェルの名前が出た途端にノキアの不機嫌さがより増して、兄ネロを睨んで言う。


「お兄様?ミシェルの話を出すのですか?ミシェルを話をするのであれば、お兄様でも許さない!王宮のみんなもミシェルを僕の騎士にと言う。そんな事は僕のプライドが許さない。」


デモニオの第1王子の弟、それは王位継承権第2位を表す。


ノキアは普段、活発で明るく誰にでも位など関係なく話し、王宮でも無愛想の兄をダントツで凌ぐ人気者なのだ。


そんなノキアには2つの絶対がある。


1つは兄の存在は絶対である。


と言うか、彼はブラコンなのだ。


人気者の上、黒髪でスカイブルーの瞳と身長165センチと男としては小さな体、さらに童顔と言う事で女の子には困った事がない。


しかし彼の眼にはネロしか見えていない。


全てをネロ優先と言う、ブラコンぶりなのだ。


そんなノキアにも、兄と言う絶対を超える絶対がある。


それが2つ目の絶対。


ミシェルである。


彼はミシェルの話をすると、人が変わった様に顔を歪ませ、反抗的になる。


それは小さな悪魔にも似た顔に・・・。


それが例え兄であろうと変わらない。


しかしその兄は火に油を注ぐ。


「お前のくだらないプライドなど俺は知らない。ミシェルは優秀だ。そしてお前を良く知っているし、慕っている。シンカとは違ったタイプだが、お前にとって最高のパートナーだと思うがな。」


ノキアは両手の拳を握りしめて激しく反論する。


「お兄様は僕を怒らせたいのですか?お兄様はいいですよ!生まれた時からシンカさんが傍に付いてた!僕なんて15になってやっと騎士が付く。でもこれでお兄様の手を借りないでも稽古に専念出来る。と思ったら騎士がよりによってミシェルだなんて、洒落にならない!!あいつだけは絶対にダメだ。俺があいつに勝つまで・・・。」


ネロは今1度首を振る。


「お前はミシェルに勝てない。そしてミシェルはこの国随一のリンクスの天才。お前を守る騎士として私情を省けば適任なのは誰か分かってるはずだ。お父様・・・いや国王様にたてついておいて、3ヵ月過ぎても騎士を見つけられない上、ちっぽけなプライド故後戻りも出来ないとは王族の血が泣くわ・・・。そんなお前に騎士など必要とは思えん。ただのボディーガードで十分・・・。いや、それだと何かあった時はボディーガードが可哀想か・・・。」


ネロは他人事の様にノキアを突き放す。


ノキアは怒りの最高潮に達した。


その時だった。


「兄弟喧嘩は私のいない所でしてもらえますか?」


2人に割り込んで行くシンカ。


「そうだ。私から1つ提案があります。今からネロ様とシンカ様には、闘ってもらいます。ルールは簡単。どちらか一方の体に一発クリーンヒットさせた方の勝ちです。もちろん武器なし。ハンデとしてノキア様はリンクスの使用を許可。ネロ様は使ってはなりません。もしノキア様が勝ったら、ネロ様には1週間ノキア様のお相手をしてもらいます。あと今後一切、騎士決めには口を出さない事。ネロ様が勝ったらノキア様は騎士をミシェルに決める事。・・・以上です。」


澄ました顔で言い放つシンカ。


もちろん2人の王子は賛成するはずもなくシンカに突っかかる。


「シンカ!なんで俺がだらしない弟と手合わせしなければならぬ?俺は闘わぬぞ。」


ネロに合わせてノキアも口をはさむ。


「シンカさん。それは出来ません。いくらシンカさんの提案でも・・・。」


しかし、シンカは2人の王子を眼孔鋭く制す。


普段少し目の細い、シンカの目の奥の力に2人は圧倒される。


「面白い話を聞きましたね。いいでしょう。この闘い、陛下の妻である私が認めます。ミシェルも3ヵ月も役職なしで困っている様ですしね。ねぇ?ミシェル?」


どこからともなく突然声が3人に降りかかる。


話に割り込んできたのは皇妃の一人、ミレーユ。


彼女のリンクスは、統治のリンクス。


王宮いっぱいにリンクスを張り巡らせ、現状起こっている事を確認できる力。


言わば、防犯カメラに超高性能マイクが王宮内に張り巡らされている様なものだ。


声のする方へ目を向ける3人。


そこには、小柄でスラーっとした体格に腰まであるサラサラの金髪で、茶色の大きい目が可愛く、それでいて小さな唇で整った顔の女の子が一人、微動だにせず立っていた。


彼女がノキアが嫌っているミシェルである。


ミシェルの持つただの棒の様な、今にも萎びれそうな、中のスカスカした杖から声は流れてきた。


「ミレーユ様。ノキア様が私を嫌っているのは昔からですし、年が一緒で幼い頃からお傍につかわせ貰ってただけでありがたいです。」


二人の王子は揃って声を上げる。


「お母様!」


そして、ノキアは嫌そうな声で言う。


「に・・・ミシェル・・・。」


シンカはミシェルとアイコンタクトをかわし頷くと、王子達の肩に手を置いて今度は満面の笑みで言う。


「まあ。やるしかないですな。皇妃様公認ですから。」


2人も渋々距離をおき構える。


元々シンカの言う事は断れない立場にある2人。


なぜなら彼は、国でのトップクラスの実力者で教育係なのだから発言力がある。


特にネロにとっては、あまり話が出来ない父に代わる育ての親、騎士のいないノキアにとっても、彼は家族の様な存在なのだ。


「お兄様。今回だけは勝たせて頂きます。リンクス抜きではいくらお兄様がお強いと言っても不利。お母様が認めた闘いなら、勝てば騎士の件は僕に一任されるでしょうし、ついでにお兄様にも毎回やられてるので、そろそろ成長の見せ時です。」


ノキアは自信たっぷりに言う。


「口を慎め。自信があるのなら最初から受けていればいいだろ?面倒だ早くかかってこい。ミシェルの前なんだ、やっぱ無しは無いからな。」


相変わらずネロは口悪く、澄ましている。


ノキアは左足を前に出し、半身になり戦闘態勢に入る。


しかしネロは自然体でスッと立っているだけだった。


構わずシンカは合図を送る。


「では。始め!!」




2人の王子が闘った日。


ある国では最悪の事態が発生していた。


その時まだ、ネロはこの後加速する運命に気付かずにいた。


それはネロの考えていた最悪の事態に進む前兆であった・・・。

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