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”この世界には”  作者: こいしのひとつ
1/1

”龍人の男”

昔、まだ人類が国を作る前の時…

”虎と龍”がまだ手付かずのその広大な大地を巡って、激しい闘いを何千年もの間繰り広げていたという。




そして、その様子を見かねた鳥と亀は、その闘いを止めるため大地を二分させる大きな壁を作り、領土を均等に分ける事で両者の闘いを収めさせた……






ーーーーーーーー


「いやー、一日の終わりに呑む酒は旨いぜ」

時は移り、ここは酒場。

人々が安らぎを求め、また自己の欲求を満たすため、様々な者が集う世俗的なオアシス。

今日も繁盛している様で、コックがその自慢の腕を振るい料理を作り上げれば、ウェイターが慌ただしくテーブルの間を駆け回っている。客達は酒が来ると歓び、酒のつまみが来ると饒舌になる。


「おいおい、聞いたかあの話?」

「話って一体どんな話だよ、勿体ぶってねえで早く話しな」

「ああ、何でも壁の向こうの地に、人が百は入るでけえ塔が立ったらしいぜ」

「へえ!そいつァ面白ェ、是非とも観に行きてえもんだ!」

「ああ。その周りには飯屋に寝所、温泉が彼方此方に建てられているみてぇだ」

「おお!飯をかっ食らった後に温泉で月見酒かぁ〜…くゥ〜、堪んねえなァ!」

「うわぁ、行きてェ!」


盛り上がる酒場をよそに、勘定を置いて出て行く人影。舗装された道路を渡り、寝所の宿屋に入る。


「いらっしゃい」

そう声をかける主人は其処らの奴より一回り大きく、まるで蛙の様な体躯を揺らし朗らかに笑う。


「どうします?風呂には入られますか?それとも酒の注文ですか?」

「いや、風呂で頼むよ」


そう言い残し、風呂に浸かり腰を落ち着ける。

「ハァ〜…」

その男は30か其処らの風貌で、鋭い目付きに一重瞼、体躯は少し大きく、顔には目から顎にかけて大きな切り傷が刻まれている。そして何よりも特徴的なのはその背中で、とても硬く、大きな鱗の様な物で覆われていた。


そこに投げかける声。

「邪魔するよ、龍人の旦那」

そう言いながら1人入ってきた。

「ん」

「ご苦労さんだね、今日も行ってきたのかい?」

「ああ。全く骨が折れる」

「バカ言え。折れる骨なんて無いくせに」

そう言って笑うのは男の友人の人間。

その威容な背中に驚きもせずにこっと笑う。

「どうだい、今度小町で祭りがあるそうだ。酒に団子、引っ掛けて連れ歩くってのも楽しそうじゃないか。行ってみないかい」

「仕方無いな。其処まで行きたいって顔に出されちゃ断るのも気が引ける」

「おお、行ってくれるか。ありがたいね」

「この分は貸しにしとくぜ」

「おお、こわいこわい」


そう言って風呂を後にする2人。

夕食に出て来るのは鯛の活け造りに豆腐の肉詰め揚げ煮、漬物に澄まし汁。それらを食べ終わり寝所に入る。


暖かい布団に包まれ、枕に身体を預ける。

そして思う。

(俺は他所モンだ。それなのに此処まで優しくして貰って、本当に良いのかと疑念が湧き起こる位だね)


そして明かりを消し眠りに。


(明日は東の方へ行ってみるか)




ーーーーー


そして目覚め、目指すは東の方。

すっかり顔見知りになった人々と話し、その街までの経路を聞く。


「行ってらっしゃい」


そう見送られ、男は歩く。



次の町には一体、何があるだろうか。


男の旅は続く。


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