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11-03 休養を取ろう


 一眠りしてオーガを兵士達が解体して下に続く穴に投げ込んでいる。リーガンの方も同じように投げ込むと、洞窟を【メル】の火炎弾で焼き払っている。火を改めて何度か繰り返すと言っていたから、オーガの骨で穴が塞がってしまうんじゃないかな。

 再び、残った丸い石を入口付近に並べているから、しばらくは安心できるんじゃないかな。

 翌日、俺達が上の広場に上ろうとした時、キニアスさんから待ったが掛かった。


「丸い石を下すそうです。全て下し終わるまで待ってくれませんか」

「構わんぞ。出来ればソリにヒルダを乗せてやってくれんか」


 そんな事があって、半日ほど俺達の出発が遅れたんだが、その間にリーガンを見付ける簡単な仕掛けを教えてあげた。下に向かう洞窟の出口に粉をたっぷりまぶした布を掛けておくのだ。洞窟から出るにはどうしても布に振れてしまう。すると粉が体に着いてしまうのだ。

 見張りの人間には気の毒だけど、粉まみれになっても外で落とせば良いからね。


 下ろされた丸い石は8個もあった。しばらくは何も上がってこないとは思うんだが、直径50cmを越える石が転がり落ちれば大概の魔族は巻き込まれてしまうだろう。


 俺達がヒルダさんをソリに乗せて上の広場に向かったのは、モモちゃんがたっぷりと昼寝をした後になってしまった。

 上の広場でもロープを引いてくれるから、それほど力を入れることなく俺達はロープを持ってソリを引いて通路を登って行く。

 それでも半日以上掛かるほどに長い通路だ。

 どうにか引き上げたところで3日ほど、兵舎で休ませてもらう事になった。


「ごめんなさいね。私の為に」

「俺の不注意だ。まさかリーガンまで上がってきているとは、思いもしなかったからな」


 シュタインさんの慎重さがこれでさらに増すんじゃないかな。

 そんな事があったから、俺達がエバース村に着いたは出発してから12日が過ぎていた。

 報酬は1日辺り銀貨1枚らしいけど、2体のオーガを倒したことから銀貨10枚が追加される。併せて22枚だから110Lが俺達に配られた。


「ヒルダの体力が戻るまでは養生と言う事になる。ベルク村に移動して暮らすことにするぞ」

 シュタインさんの言葉で、翌日にはエバース村を発つことになった。ワインの大タルはキチンと商会が届けてくれていたようだ。幌馬車に積み込んでベルク村まで移動する。

 移動に4日も掛かってしまうけど、今のところドックレーの森は平穏だな。

 これなら北街道を進む荷馬車も安心できるだろう。


 エバース村に着いたところで、俺達はギルドに向かう。リーザさんはモモちゃんと一緒に宿の手配だけど、今回は妹のミチルも連れて行ったみたいだな。

 ガドネンさんとチルは、北門の門番さんの詰所に幌馬車を預けに行ったようだ。


 ギルドに着くと、直ぐにカウンターのお姉さんがシュタインさんを奥に案内している。次の依頼があるんだろうか? 残った俺達は暖炉近くのベンチに座って皆が帰るのを待つ。

 ヒルダさんの体調が思わしく無いようで、ナリスさんがお茶を入れようとしたら、慌ててファンドさんがお茶を入れている。ナリスさんの入れるお茶はいつも薄かったり苦かったりするからかな? ある意味、きちんとファンドさんがナリスさんのサポートしてくれるからあの2人が一緒なら問題は無いんだろうな。


 ありがとうと言いながらお茶のカップを受け取り、暖炉でパイプに火を点ける。ファンドさんもパイプを取り出した。しばらく待つことになるからな。時間つぶしには丁度良い。


「季節的には秋の収穫物の移動を終えていると思うのだが?」

「王都に集まった穀物は王国内に分配されるわ。この村だって、必ずしも村で取れた作物だけを食べているわけでは無いでしょう?」


 その物流を束ねているのが王都の大商会だ。大中小の区別はどの辺りにあるのかをガドネンさんに聞いてみたら、「その日の売り上げで区分すれば簡単じゃ」と教えてくれた。

 金貨5枚以上、金貨1枚未満、銀貨10枚以上で判断するらしいが、その店の売り上げをどうやって知るのかが分らなければ同じ事だと思うんだけどね。

 王都の店構えを見れば直ぐに分ると思うのは俺だけなんだろうか?


 カウンターの奥からシュタインさんが出て来た。

 さて、次の依頼は何なんだろうな?

 俺達の期待の目をスルーして、俺の隣に腰を下ろす。パイプに火を点けると、改めて俺を見た。


「造成工事が始まったらしい。雪が降れば来春まで中断と言う事だが、状況はアオイに見て貰わねばなるまい」

「早いわね。さすが、エドガー商会というところかしら?」

「筆頭番頭が直に話を付けに来た以上、商会の将来を左右すると考えたのかもしれん。俺達にとっては都合の良い話だが、あの約束でだいじょうぶなのか?」

「本来なら全量を扱って貰いたいくらいです。俺達に商売ができるとも思えませんからね。とは言っても、貴族達だけで飲まれるのはちょっと……」

「それで半分って事ね。私も賛成だわ。小さな商会にも酒を回したり、直接買い付けに来る人だっているはずよ」


 上流階級だけが楽しめるんじゃ問題だよな。確かに蒸留酒は高いけど、サラマンドならもっと安くしても良さそうだ。それに、ワイン酵母が手に入るなら、他の果実で酒を作っても良さそうだぞ。


「酒造所についてはアオイとガドネンに任せるが、次の依頼は少し先になりそうだな」

「やはり、荷馬車が来ないの?」

「いや、ギルド本部からここで待つようにとの事だ。俺達を名指しで依頼が届く。数日の間には届きそうだから、その間はヒルダの静養が出来そうだ。アオイとモモはギルドでレベルの確認をしとくんだぞ。上手く行けばデミ・オーガだ」

「まだ3年も経っていないぞ!」


 シュタインさんの言葉にナリスさんが吃驚して声を出した。

 そんな姪をシュタインさんが片手で座るように促している。驚いた拍子に立ち上がったからね。


「確かにそうだ。だが、あのオーガに致命傷を与えたのはアオイであり、止めも差したんではないかと思っている。ギルドの水晶球の判定はごまかしも効かん。正しくその者の実力を示すはずだ。経験の無さもサイクロプスとグレミーで十分だろう」


 そんなものかな? 明日にでもモモちゃんと一緒に確認してみるか。

 バタバタと足音を立ててやって来たのはリーザさん達だ。俺達の所に駆け寄って来ると、ハァハァと息を整えてる。


「宿の部屋をようやく探したけど2部屋しか取れなかったの! それでも3日は何とかして貰ったけど」

「たぶんその理由は造成工事だろうな。長期滞在なら宿も喜ぶはずだ」

「なら、俺とモモちゃんは幌馬車に泊まります。だいぶ蒸留酒が溜まりましたから、2回目の蒸留をやりますよ」

「俺達も一緒だ。元々は俺達の仕事なんだろう?」


 そんな事で、俺達が幌馬車で泊まりながら蒸留を行い事になった。ガドネンさんとリーザさんも参加してくれるようだから、宿にはシュタインさん達とナリスさん達が泊まる事になる。

 広場の片隅に停めてある幌馬車だから安心して蒸留に専念できるだろう。少し寒くなってきたが幌馬車の中なら暖かく過ごせる。


 夕食を頂いた後は、リーザさん達と連れだって幌馬車に向かう。

 俺とチルとで2回目の蒸留の準備を整え、携帯コンロの炭を外で熾す。下の鍋に張った水が沸騰してから蒸留酒を入れたフラスコを乗せることになる。

 まだしばらく掛かりそうだな。大きな方の幌馬車ではモモちゃん達が騒いでいる声が聞こえる。

 携帯ストーブに炭を入れてあげたから、コタツを作ったのかな?

 少なくとも寒さで震えてはいないようだ。広場の片隅に作った焚き火でパイプに火を点けると、門番のおじさんがやって来た。


「宿にあぶれたようじゃな。だが、幌馬車があれば寝られるから問題は無さそうじゃ」

「お1人ですか?」

「もう2人おるよ。この頃は物騒じゃからのう」

「なら、カップを持ってきてください。変わった酒をご馳走します」


 門番さんが喜んで2人を連れて来る。

 差し出されたカップに蒸留酒を三分の一程入れてあげた。


「かなり強いですから、ワインならカップ2杯になるぐらいですよ。そのままでも良し、お湯で割っても良いかもしれません」


 俺の言葉に、軽く口に含むと、驚いた表情を俺に向ける。


「なるほど、強い酒じゃ。今夜ゆっくり頂くよ。これは温まるのう」

「まったくじゃ。だが、こんな酒は初めてじゃな。どこぞで、手に入れた酒なのか?」


「俺達で作ったんです。村の西で本格的に始めようと思ってます」

「あんな土地を造成するとは、物好きはどこにでもおると笑ったものじゃが……。これを作るのか」

「この村の名物になりそうじゃな。その時はまた飲まして貰おう」


 そんな話に頷いておく。門番さんとは仲良くなっておくに限るからね。

 翌日はガドネンさんが門番さん達と酒を飲んでいた。思うところは同じらしい。



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