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11-02 ヒルダさんの負傷


 半日掛けて洞窟を歩いて行くと広場に出た。

 2個小隊の兵士が厳戒態勢を取っているようだ。ここからさらに下に向かう洞窟に向かって大きな岩を転がそうと数人掛かりで石を動かしている。長い棒を使って少しずつてこの原理で動かしているようだ。ここまで運ぶのにも苦労したんだろうが、丸みを帯びた石を転がせば、下にいる魔族もタダでは済みそうにないな。


「常に2人のネコ族が通路を見張っています。上ってきたのが分れば石を転がしているんですが」

「そんな石が残りわずかということか。だが、ドワーフ族がいるなら、作るのも造作ない事だと思うが?」

「間に合わないんです。この広場には、見ての通り残り3個。転がす石は一度に3個以上ですから、現在洞窟に運んだ分を入れて、残り2回でオーガがこの広場に現れます」


 かなり切迫した状況だったみたいだな。

 俺達がやって来たのを知って、小隊長達が集まってきた。


「キニアス、この傭兵達がそうなのか?」

「はい。昨年北街道でオーガを倒し、この間はサイクロプスも倒しています」


 キニアスさんの説明に、隊長達の表情に硬さが取れていく。ホッとしたんだろうか?

 ガドネンさんが、広場の片隅に大きなシートを広げてテントを2つ張り始めた。雨は降らないんだろうけど、女性達もいるからね。


「印3つ分程前にオーガが上がってきた。とりあえず石を転がして追い払った。今は次の接近に備えて石を準備しているところだ」

「次の接近の予測は出来るか?」

「これまでの所、半日から1日後に再び現れる。早ければ、そろそろと言う事になるな」


 それでも次は凌げると言う事だろう。それが終わればもう1回と言う事になる。俺達の出番は意外と早そうだな。


「次も石を転がしてくれ。俺達はその次を狙いたい」

「だいぶ歩いて来てるからな。だいじょうぶだ。次も何とかできるだろう」


 テント近くで使用する武器を魔法の袋から取り出して準備を進める。キニアスさんが、この広場にいる兵士達の槍の予備も集めてきてくれた。槍だけで一人4本を寝下られる勘定だ。

 モモちゃんの弓と矢筒を取り出して、俺のクロスボウの近くに置いておいた。お腹には曲った短剣と孫の手が差してあるからモモちゃんの武装は十分だろう。俺の槍も穂先のカバーを外して壁に立て掛けてある。


「とりあえず、彼等の戦いを見せて貰おう。先ずは体を休めるのが大事だ。それと、前にも行ったが、槍を持たぬ者はオーガから50D(15m)以上離れるのだぞ。ボルトを放ったら急いで後ろに駆けてから弦を引くのだ」


 乱戦になったらどうなるか分からないけど、とりあえずシュタインさんの注意で十分だろう。

 モモちゃんはすばしこいけど、矢を放つ時は止まってしまう。リーザさんの後ろを常にキープするとはそう言う事なんだろう。ガドネンさんらしい分かりやすい教え方だ。


 携帯コンロでお茶を沸かして飲んでいると、急に下に向かう洞窟が賑やかになった。魔導士が2人掛かりで火炎弾を洞窟の奥に放っている。数人掛かりで太い柱で石を転がしたようだ。

 槍を持った数人が改めて洞窟の前に立つと光球を放って奥を見守っている。


 俺達の所にキニアスさんが走って来た。

「何とか撃退したようです。次はいよいよですよ」

「洞窟の見張りは?」

「ネコ族の兵士が2人です。20人程の弓兵がいますから牽制をお願いしてあります」


「なら、洞窟から出るまでの牽制をお願いしたい。出てからでは俺達が矢に当たってしまいそうだ。出来れば、上に上る洞窟で俺達を見守ってくれるとありがたい」

 同士討ちが一番怖そうだ。シュタインさんがやんわりと援助を断っている。


「それでしたら、魔導士達に洞窟内に【メル】を放って貰いましょう。10人はおりますから1回放って上に向かう洞窟で待機させます」

 シュタインさんが頷くのを見て、キニアスさんが2人の隊長の所に帰って行った。


「さて、いよいよだな。そろそろ夕食の時間だ。早めに食べて一眠りしておいた方が良さそうだぞ。寝る前に最初の武器を手元に置くのを忘れるなよ」


 余裕があるのかないのか微妙なところだが、食事を取ることには賛成だ。

 ヒルダさんが作ってくれる間、皆でパイプを楽しむ。

 ガドネンさんは酒を飲みたそうだが、ここは我慢して貰おう。終わった後で、皆の無事を祝って飲んだ方が良いだろう。

                ・

                ・

                ・

「お兄ちゃん、やって来たにゃ!」

「何だって! 皆を起こしてくれ」

 

 過ぐにモモちゃんが胸に下げた笛を吹く。たちまち、広場が賑やかになってきた。

 モモちゃんの腰に矢筒を下げてあげると、右手に弓を持たせた。俺もボルトケースをベルトに下げてクロスボウを持つ。


「来たのか?」

「モモちゃんがやって来たと!」


 俺の言葉にシュタインさんが頷くと槍を両手に持った。


「準備は出来たか? 首の後ろを狙うんだぞ。ヒルダは隙を見て火炎弾を顔面に放ってくれ。面で防がれても目は出ているからな。一瞬立ち止るはずだ」

「リーザ達も頑張ってくれよ。モモにも期待しとるぞ」


 ネコ族だけど【メル】なら2回は放てるだろう。モモちゃんなら5回はだいじょうぶだ。全員が自分に【アクセル】を掛ける。

 それが終わると、シュタインさん達は広場の中央に進んで行った。俺達は洞窟の入り口の左右に分散して弦を引いてボルトをセットする。


「やって来たぞ!」

 ネコ族の兵士が叫ぶとともに洞窟内に火炎弾を放って後ろに下がっていく。魔導士が後を引き継いで火炎弾を素早く放つと後ろに駆けて行った。


 ぬうっと平たい面を付けたオーガが洞窟から出てくると広場を眺めている。

 トコトコと前に出たモモちゃんが矢を放つと、オーガの被っている面に唯一空いている2つの穴にの左側に吸い込まれるように突き立った。片手で矢を引き抜きながら広場に出て来たオーガの棍棒がモモちゃんに振り下ろされたけど、すでにモモちゃんはずっと後ろに避難している。

 左側から回り込むようにして後ろを取ると、オーガのがら空きの首にボルトを放つ。同時に後ろに下がったが、さっきまで俺のいた場所に次のオーガが棍棒を振り下ろしていた。


 洞窟内に大きな叫び声がしたのは、最初のオーガが片膝を付いたところだった。

 上手くボルトが急所に刺さったようだ。

 洞窟の壁付近まで下がって弦を引き絞りボルトをセットする。顔を上げて2体目のオーガを見ると俺の直ぐ目の前にいた。俺に根愛を定めるように棍棒が振り上げられた時、またしてもモモちゃんが走り込んで来てオーガの目に矢を射込んでくれた。

 悲鳴を上げて後ろにのけぞったところを足元に走って行き、下からオーガの顎に向けてボルトを放つ。そのまま反対側に走ろうとしたところ、ドン! と何かにぶつかったぞ。

 素早く長剣を抜いて横なぎにすると血しぶきが上がる。


「リーガンが来てるぞ!」

 空間のゆがみに向けて長剣を振り下ろしながら、大声で皆に知らせる。

 シュタインさん達が槍を風車のように振り回している。

 ガツンと当たったところに素早く槍を突き入れればそれでリーガンは終わりになる。動きが俺達より少し遅いのが命取りになっているな。

 周囲にリーガンがいないのを確認して、下に下りる洞窟内に集束した火炎弾を放った。


 ギャァァーという声が聞こえて来たから、更に上がって来るみたいだ。

「どいて!」

 ヒルダさんが俺と位置を入れ替えると、洞窟の奥に向かって放ったのは【メルト】じゃないか!

「これでしばらくは持つ……」

 俺に向かって崩れ落ちた。

 俺の前の空間のゆがみに向かって長剣を振り下ろす。ヒルダさんを放っておけないけど、まだ2体のオーガは健在だ。

 キニアスさんが俺のところに長剣を振り回しながらやって来た。

 後を頼んで、オーガ退治に加わることにする。


 オーガの両目はいつの間にかモモちゃんが潰してくれたらしい。メクラめっぽう振り回す棍棒を避けながらシュタインさん達が槍を投げては、近寄って押し込んでいる。

 首の周りにもたくさんのボルトが刺さっているがあまり深くは無いようだ。それでもかなりの痛みなんだろう、叫び声が止みそうもない。


 ボルトを全て射込んだところで、クロスボウを隅に置いて長剣に切り替える。

 体当たりするようにオーガの脇腹に長剣を突き刺すと捻りながら引き抜いた。後ろに下がって様子を見ると血が噴水のように噴き出している。


「なるほど、ここまで来れば長剣も使えそうだ。ナリス、長剣を使え!」

 一撃離脱で長剣を突き差して素早く離れる。


 ゴトン! とオーガの持った棍棒が落ちると、ゆっくりとオーガが倒れて行った。次のオーガも同じように長剣を突き差して倒した。


「無事か!」

「ヒルダさんが怪我を負ってます!」

 シュタインさんに叫んだところで、モモちゃんを探す。あちこち跳ねまわっていたけど、今はどこにいるんだろう?

 ヒョイと顔を出したのは丸い石の影からだった。矢を使い果たしたのだろう。確かにあの石の後ろなら誰も気付かないだろうな。


「怖いのはもういないにゃ」

 そんな事を言ってるから、リーガンも全滅したと言う事になるんだろうな。

 モモちゃんと一緒に俺達のテントに行くとヒルダさんが寝かされていた。


「そんなに心配しないでもだいじょうぶよ。回復魔法と解毒魔法を使ったから心配はないわ。少し血を流し過ぎたみたいだから起きることが出来ないだけなの」

「ならいいが。あまり前には出ぬ事だ。だが礼を言うぞ。おかげでリーガンがあれ以上上がってこなかった」


 命に別状はないってことだな。血が流れ過ぎたと言う事は貧血状態なんだろう。献血した後で横になるのと同じなのかも知れない。となればしばらく横のなっていればだいじょうぶのはずだ。


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