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8-01 モスデール荒野の神殿


 その夜。夕食を終えた俺達はワインを飲みながらシュタインさんの話を聞くことになる。もちろん、モスデール荒野の神殿についてだ。


「荒地の奥地は砂漠らしいが、砂嵐で現れたのじゃろう。地図はありがたいのう。これで真っ直ぐに進めるぞ」

「途中までは農家に馬車を頼めるとして、どれ位の日数が掛かりそうだ?」

「そうじゃな。モスデール荒野の南をモスドの森に向かって東に進めれば、砂漠に入って2日目には見えるはずじゃ。神殿までに3日、神殿の探索を5日とすれば、帰りは5日。13日というところじゃな」


「食料は20日分。水も新たな大型水筒を頼むしかあるまい。大型水筒を2個買い足して、ガドネンには申し訳ないが新たな魔法の袋に入れて持ってほしい」

「人数も増えておる。魔法の袋を買い足すならもう1個追加じゃ」


 砂漠地帯らしいから、水は貴重品って事なんだろうな。俺達の水筒にもたっぷり入れといた方が良さそうだ。

 

「矢は各自の矢筒に規定数を入れたわ。予備が30本以上あるわよ。ボルトはアオイの大型が30本に、私達のボルトが20本あるわ」

「クロスボウは明日には出来上がる。槍は1人1本じゃ。北の洞窟の例もある。何が出るか分からんからな」


 食料と、樹脂のような燃料を使った携帯コンロも用意するらしい。松明も数本用意するらしいが、使わなければ焚き火用になるのかな?

 シュタインさんとガドネンさんがカゴを担いで、焚き木と食料を運ぶということだ。お弁当は初日と言う事になるんだろうな。農家の分を用意しとくようにヒルダさんに言っていたからね。


 翌日は、ギルドを拠点にして準備を始める。テーブルに矢を並べてリーザさん達が矢じりを点検し、先が丸まったヤジリをファンドさんがヤスリで砥いでいた。

 ヒルダさんはモモちゃんを連れて買い物に出掛けたけど、まだ不足分があったんだな。

 ナリスさんとシュタインさんは皆の持つ手槍を研いでいるから、俺だけポツンと残ってしまった。

 特にすることは無いんだよね。のんびりとしていたら、ヒルダさん達が帰ってきた。


「アオイ。モモちゃんの靴底を交換した方が良いわ。アオイもずっと交換していないんじゃなくて?」

「これって交換するんですか? 知りませんでした。どこに行けば良いでしょう?」

「雑貨屋よ。直ぐに終わるから、ついでに鋲も打って貰いなさい。格段に長持ちするわよ」


 ヒルダさんの薦めで、モモちゃんを連れて雑貨屋に向かう。ついでに筆記用具と松明を頼まれてしまった。

 銀貨2枚を受け取って、足りない分は出しなさいと言われたけれど、装備品は本来自分持ちだからありがたく受け取った。


 雑貨屋に行くと、直ぐにカウンターのお姉さんに用向きを伝えた。

「そこに腰を下ろしていてください。そしたらブーツを預かりますね」

 

 そう言って、俺とモモちゃんのブーツを持って行ってしまった。

 しょうがないから、モモちゃんと足をぶらぶらさせて待っていると、しばらくしてお姉さんがブーツを持ってきてくれた。


「底の革を交換して、前のすり減った箇所に鋲を打ってありますから、しばらくはこれでだいじょうぶですよ」

「ありがとう。それと、松明を5本貰えないかな」

 〆て160L。高いんだか安いんだか分からないけど、銀貨2枚を貰っていたところをみると、標準的な値段と言う事になるんだろうな。


 ギルドに戻ってみると、暖炉脇の壁に7本の槍が並んでる。さすがにモモちゃんの杖は槍に出来ないからね。

 ガドネンさんがリーザさんとファンドさんにクロスボウの機構を説明している。頷いているところをみるとそれなりに納得してるんだろうか? まあ、ダメ元だし、いざとなれば弓が使えるから問題は無いんだろうけどね。


「松明はワシが預かっとくぞ。モモの杖も先を変えているから、注意が必要だ。使わんとは思うが、荷車の下で突いていれば入っては来れまいて」

 ん? 先を変えた……。

 モモちゃんにとっては少し太い杖なんだけど、先端に木のカバーが付いてるな。捻じって外して見ると、細身の短剣が現れた。刀身は10cmにも満たないけど、確かに槍として使えそうだ。


「だいじょうぶでしょうか?」

「な~に、心配はいるまい。先端を外さねばただの杖じゃ。野犬の中には邪魔物を掻き分けて荷馬車の下にもぐろうとする奴もいる。少し大きな子供達が使う槍もそんな形じゃ」


 初心者用って事なんだろうか? 使わなければそれまでだけど、短剣を振うよりも安心できそうだ。


「荷物はギルドに置いておいても良いそうだ。明日の朝、ギルドに農家が荷馬車を1台用意してくれる。朝食を取って直ぐに向かうぞ」

 槍の隣には半分程荷が入った背負いカゴが2つ置いてある。あれにお弁当を入れれば全ての準備が完了するようだ。


 早めに夕食を取って部屋に戻る。

 少し暖かくなってきたから、薄手のシャツに革の上下で良いだろう。マントを丸めてベルトのバッグの上にストラップで結んでおく。帽子は必携だな。軍手みたいな手袋をすれば色々と役に立つ。

 最後に靴下を取り出して明日の着替えの上に置いたところで、モモちゃんが【クリーネ】を使う。これで表面の汚れは全て落ちた。

 2人でベッドに入ると直ぐに眠りについた。

 

 翌朝早くにベッドを抜け出し、着替えをすると裏庭で顔を洗う。

 すでにナリスさんは起きていた。俺達がやって来るのを待って、ジュースを頼んでくれた。

「すみません、次はおごりますから」

「構わない。私も遺産を少し持ってる。お祖父さんのね」

 この王国にも遺産相続の習わしはあるようだ。遺言によって遺産が分割されるらしい。遺言が無い場合は既定の分割式があるらしいのだが、俺達には関係なさそうだ。


 食堂で皆を待っていると、ポツリポツリと下に下りてくる。

 全員が揃ったところで朝食を頂き、各自2個ずつのお弁当を、ガドネンさんが魔法の袋に入れて背負いカゴに入れた。

 すでに、大型水筒と各自の水筒に水は入っている。

 俺達は宿の支払いを済ませてギルドに向かって歩き出す。ギルドでお茶を飲んで待っていると、若い農夫がギルドの扉を開いた。どうやら着いたみたいだな。

 立て掛けてあった槍を持って外に停めてある荷馬車に乗り込んだ。


 農家の使う荷馬車だから枠も適当なんだが、荷台が低いのが特徴だ。モモちゃんでさえ1人で乗り込めたくらいだからね。

 荷馬車はゴトゴトと俺達を乗せて北の門に向かって動き出した。

 北門を出て最初の1里塚を東に進んでいくらしい。しばらくは荷馬車の旅が続きそうだな。

 

「小さいのがたくさんいるにゃ!」

 進路を東に向けてしばらくすると、荷馬車から身を乗りだして周囲を見ていたモモちゃんが俺に振りかえってうったえる。

 ラビーを食べたいのかな?

「ちょっと待ってくれよ……。良し、リーザさん。60M以内で教えてください」

「待ってて、モモちゃんと近場を探すから。え~と、先ずはあれだね」


 すでにクロスボウにはボルトがセットされている。

 リーザさんの指差した方向にラビーを見付けると、素早く照準器のT字に捕えてトリガーを引いた。リーザさんが直ぐに荷台を飛び降りてラビーを回収して来る。


「全く、外したことが無いのに恐れ入る限りじゃな。後はワシに任せておけ」

 ガドネンさんが嬉しそうな表情でリーザさんからラビーを受け取ると背負いカゴにポイっと投げ入れた。

 数匹を狩ったところでおしまいにする。これで、今夜の料理が1品増えるんだろうな。

 俺達が進む荒地はどちらかというと草原に近い。ラビーがたくさんいるから野犬やガトルが出そうなものだが、不思議と目撃例も襲われたことも無いそうだ。

 草のまばらな荒地の方が野犬達には狩りやすいのかもしれないな。

 遠くにモスドの森が見えたところで、俺達は荷馬車を降りる。ヒルダさんが銀貨1枚を若者に支払って、ガドネンさんが土産だと言ってラビーを1匹渡している。

 

 ここから先は俺達だけになるんだけど、どうやら今夜はこの辺りで野営になりそうだ。

 灌木の繁みから焚き木を取りながら北東方向に歩いて行く。

 1時間程歩いたろうか。数本の立木がある場所で俺達は野営をすることになった。


 立木を切り倒すと、3本の杭を作る。カゴニあった杭とロープを使って簡単な柵を作る。この辺りに出る獣はいないと言う事だが、用心に越したことは無い。

 杭の残りで焚き火を作り、お弁当を食べる。

 食後のお茶を飲んでいる時には綺麗な星空が広がっていた。雨はだいじょうぶなようだな。ネコ族が3人いるから数時間ほどの間を取って交替で横になる。

 明日はいよいよモスデール荒野に足を踏み入れる。


 翌日は快晴だ。簡単に朝食を済ませると、帽子を被って各自杖代わりの槍を持つ。

 先頭はガドネンさんとファンドさんになる。あの地図でガドネンさんには十分場所がわかるということだ。

 どうやら山タテと呼ばれる海での漁礁の位置を確認する手段と同じような感じで、目標物2つの角度を示してあるらしいのだが……。

 俺は殿に位置する。隣にナリスさんがいるから安心できるな。モモちゃんはリーザさんと一緒に俺達の前を歩いていた。


 たまに藪の傍を通りかかると、焚き木を取るのはいつものことだ。背負いカゴはファンドさんとシュタインさんが担いでいる。

 疲れ知らずに、モモちゃんが跳ねるように歩いているから、杖が邪魔になるようでいつの間にか担いでいるぞ。次の休憩の時からは俺が持ってあげよう。


 右手にモスドの森が小さく見える。神殿の場所を示す角度の1つはモスドの森になるようだ。となると、もう1つは何になるんだろう?


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