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6-08 北の洞窟への荷役警護


 ドックレーの森の休息所から2日掛けて俺達はエバース村に到着した。

 ここで俺達の依頼は終了となる。報酬を分けて貰っていつのも宿で夕食を取り、早めに宿のベッドで休むことにした。


 翌日は、ギルドの暖炉で休憩する。ガドネンさんは俺のストーブを持って武器屋に出掛けたけど、武器屋の工房でストーブを作るつもりのようだな。

 残った俺達は暖炉で温まりながらのんびりと時を過ごす。

 シュタインさんは次の依頼の話を、ギルドの奥の事務所で打ち合わせをしているようだ。たぶん同じように軍の物資輸送を請け負うんじゃないかな。

 

 俺達以外にギルドのホールは誰もいないようだ。カウンターのお姉さんの話では、旧街道の南にある海街道へ傭兵達が流れて行ったらしい。山街道の荷馬車の隊列を警備する傭兵団の数は片手で数えられると教えてくれた。


「海街道は賑わってるでしょうね」

「旧街道も同じじゃないかしら。となると、街道を結ぶ間道の輸送も活発になっているはずよ。ハーネルとビーセント、カルネイとサグレムの2つは賑やかでしょうね。もう1つ、ジェリムとマーベルクの間道があるけど、森があるし何といってもモスデール荒れ地を通る間道だからね」


 サグレムからこの村エバースまでは2日の距離だし、途中に森も無い。軍の輸送部隊ならそれほど苦も無く移動することができるだろう。

 ビーセント経由の荷馬車の警備は俺達が専業で請け負うことにもなりかねないぞ。

 しばらくして、シュタインさんが奥から出て来た。俺の隣に腰を下ろすとパイプを取り出す。


「軍の荷物運搬警備を請け負う事になった」

「やはり、ビーセント経由の荷物ってこと?」

「いや、エバースまでの輸送はサグレム経由で送って来るらしい。俺達の任務はエバースから北の洞穴までになる」


 雪深い山脈まで出掛けるから片道で7日も掛かったんだよな。往復だと15日以上掛かりそうだ。

「ダリム2頭で引くソリは小型だが、駐屯地に向かう兵士が2個分隊一緒になる。ソリの御者は輜重兵が行うそうだ。ソリは5台で輜重兵が5人だから俺達の任務は帰り道の警護が主になるだろう」

 向かう時には2個分隊の兵士が使えるってことだな。

「ガトルの動きが活発ですが、俺達だけでだいじょうぶでしょうか?」

「場合によってはダリムを生贄にする。すでに3頭を失っていると言っていたな」


 時間稼ぎにダリムを使うって事か。ちょっとかわいそうな気もするけど、俺達が生き残るためなら仕方のない事になるんだろうな。


「出発はいつなの?」

「明後日になる。いつも通り、ヒルダは食料を用意してくれ。ガドネンには俺から伝えておく」


 用意と言っても、北の洞窟にはこの間行って来たばかりだ。食料だけで十分だと思っていたが、翌日のリーザさんと同行して向かった雑貨屋では、全員分の雪靴を新たに買い揃えていた。壊れたら、雪の中で動きが取れなくなるということらしい。

 ついでに革紐を買い込んでおいた。雪の中を長く歩くなら、杖よりもスキーで使うストックのようなリングがあれば雪に潜り込まないから楽だろう。ついでに持ち手にストラップもあれば便利に使える。

 汗をかいたら着替えができるようにインナーもモモちゃんと俺の分を揃えたし、モモちゃんは飴玉を買い込んでいた。虫歯にならないか心配になってきたぞ。


 そんなことで休日が終わり、翌朝早くに朝食を終えるとお弁当を受け取って村の北門に皆で歩いていく。

 北門の広場には、すでに兵士達が武装を整えて焚き火で暖を取っている。ダリムの引くソリは、片隅に並んでいたがかなりの荷物を積んでいるようだ。

 魔法の袋という便利な収納グッズはあるんだが、それを使ってもあれだけの荷物になったと言うところなんだろうな。


 シュタインさんが俺達から離れて輸送部隊の指揮官のところに歩いて行く。

 兵士がたくさんいるから、どの人物が一番偉いんだか俺には皆目見当がつかないが、見る人が見れば直ぐに分るらしい。

 立ち話をしていたけど、直ぐにシュタインさんは戻って来た。


「駐屯部隊が先導するそうだ。俺達はその後ろに続くソリの後になる。モモは一番後ろのソリに乗っても良いぞ。ヒルダとリーザは交代で乗れば良い」

「なら、これは必要になるじゃろう。アオイの作ったストーブと同じものじゃ。足元において毛布を被れば十分に温まれるぞ」


 ガドネンさんがストーブを持って焚き火に向かった。熾火おきびをストーブに詰めに行ったんだろう。

 最後尾のソリを確認して、荷台の荷物を輸送兵の許しを貰って少し前に移動する。荷台の荷物を使ってベンチを作ると薄手の毛布を敷いておいた。

 直ぐに、モモちゃんとリーザさんがベンチに座ると、足元にガドネンさんが運んできたストーブを置いて毛布で体を包む。


「暖かそうだな。兵士達が動き出した。俺達もそろそろ出発するぞ!」

 羨ましそうに輸送兵が俺達に言葉を掛けて来た。

 やがてソリの列も動き出す。俺達はソリの後について歩きだした。

 先頭を歩く兵士達が雪を踏み固めてくれるから、雪靴を履かなくても余りブーツが潜らない。どちらかというと滑るのが心配になる。

 最初の休憩でそんな話をしたら、冬用ブーツの裏を見るように言われてしまった。言われた通り足を返して見てみると数本の先の尖った鋲が打ち込んであった。


「普段はいているブーツも鋲は打ってあるんだが、冬用の物は滑らぬように鋲の底が尖っている。だが、あまり過信するのも問題だぞ」

 シュタインさんの話では、鋲が無いものとして扱えって事なんだろうか? それも何かおかしな話だな。

 モモちゃんのブーツも調べてみたらちゃんと同じような鋲が打ってある。もっとも数は少ないんだけどね。


 あまり長時間休むと身体が冷えてしまう。10分に満たない休憩を小刻みに取って、俺達は雪原を北に歩いて行く。

 なるべく林に近い場所を進んでいるから、野営でも焚き木に苦労することは無い。夜間の見張りも兵士だけで25人いるから彼等だけで対応してくれるし、食事も作ってくれるから楽なものだ。

 

 夕食を終えて焚き火を囲みながら、ワインを小さなカップで飲む。

「歩くのが疲れるだけね。夜も安心して眠れるし……」

「その分、報酬が安い。往復で銀貨15枚。しかも傭兵団としてだからな」

「15日で6人で行う警護料が銀貨15枚ですって!」


 シュタインさんの話を聞いてリーザさんが驚いてる。さすがに安いと俺も思うけど、食費は向こう持ちだから、懐は痛まないんだよね。途中にお店も無いからお金を使うん場所さえないし。


「不満はあるだろうが、俺達は元は王国軍の兵士だったからな。奴らの懐事情は良く分かっているつもりだ」

「半額だけ貰う事にしておる。残った金額で酒を買うもよし、タバコを買うもよし……」


 ガドネンさんも兵士だったのか。シュタインさんの話しぶりだと、ヒルダさんもかつては兵士だったんだろうな。となると、リーザさんは途中参加と言う事になる。


「話には聞いてるけど、そんなにひどいの?」

「騎士なら月に銀貨20枚以上が渡されるが、騎士以外の職業軍人なら銀貨15枚を超えることは無い。召集兵は一律に銀貨3枚だ」

 

 食うには困らないけど、楽しみは無さそうだな。少ない報酬を家族に送金するようなことになれば、酒の1杯も贅沢な行為に違いない。

 報酬の半額を寄付したらしいから、荷物の中には酒のタルもいくつか入っているんだろう。殺風景な洞窟暮らしになるんだったら、確かに持たせてやりたいものだ。


「私の村からも軍に志願して行った連中がたくさんいたけど、けっこう大変なのね」

 リーザさんも思うところがあるんだろう。報酬を下げたことにそれ以上言及することはしなかった。

「それもあるし、軍隊内の上下のしがらみはあなたが想像する以上に多いのよ。そんなわけで私達は軍を除隊したの。シュタインは騎士だったから、もったいなかったかもしれないけどね」


 シュタインさんは騎士だったのか。なるほど長剣の扱いが上手いはずだ。

「まあ、色々あったことは確かだな。知り合いはいまだに軍にいる。俺達のレベルが上がり、アオイの事が教団に知られた以上、春からはそれなりの仕事が舞い込んでくるぞ」

「それじゃが、もう2人程増やしても良いのじゃないか? 荷馬車も手に入れておるからのう。少年でもダリムの世話ができれば十分じゃ」


 とは言っても、少しは武器を使えないと問題じゃないのかな? 最低でも俺以下だと問題な気がするな。

「姪に手紙を出した。早ければ雪の消える前にエバース村にやってくるだろう。アオイよりも少し年上のはずだ」

「トラ族か! アオイを中衛に回せるのう」

 ガドネンさんはポンと膝を打って頷いている。ヒルダさんもどこか遠い目をしているのは、シュタインさんの姪という人に会ったことがあるんだろうか。


「女の子1人だけなの? そりゃあ、トラ族の女の子なら人間族よりも頼りになりそうだけど……」

「とりあえず1人だ。それでもかなりの戦力アップと思うが?」


 体力は人間を超えるというトラ族なら、女性であってもかなりの腕になるんだろうな。俺は中衛と言う事なんだろうから、後ろでクロスボウを担当する時が長くなるって事かな。イザとなれば前衛にもなれそうだから、ある意味御ランプのジョーカーみたいな感じだな。


 北の洞窟までは特に問題なくソリを進めることが出来た。

 村を出てから7日も掛かったけど、雪が深いんだからそれ位は大目に見ないといけないだろうな。

 とはいえ、前のように雪がちらつく日が少なくなったようにも思える。

 春は、すぐそこまで来ているんだろう。


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