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5-06 逃げ足は速い方が良い


 半日以上駆け通しだったように思えたが、どうにか最初の広場に出た。

 後は逃げるだけだと言う事で、残った松明をまとめて洞窟の出口に繋がる洞窟の入り口に置いてある。数本まとまっているから少しは怯んでくれると嬉しいんだけどね。


「奥で交代して休んでくれ。しばらくは持つだろう」

 モモちゃん達が毛布に包まって眠り始めた。かなり疲れてたんだろうな直ぐに寝息が聞こえてくる。


「問題は奴が外まで出てくるかだな」

「それは無理だろう。丁度冬の盛りだ。俺達だって厚着をしなければ凍死してしまう時期だからな」


 シュタインさん達の話を聞きながら俺とガドネンさんで光球に照らされた広場を眺める。まだクロスボウにはボルトを乗せていないけど、やって来たら目に射込んでみるつもりだ。少しは効果があるだろう。


「海にもあんな奴がいるんですか?」

「ああ、色々といるらしいのう。クラウケンや大ウミヘビに……、人魚もいるらしいが、凶暴だから人が大勢暮らす海沿いの町以外は行かぬ方が良い。もっとも海はここからだいぶ離れておるがな」


 人魚は一度見てみたいな。確か街道も山街道に旧街道があるって事は海街道もあるんじゃないか? この仕事をしていればそのうちに海を見ることもできる気がするな。

 いつの間にかシュタインさん達は横になっている。

 見張っているのは俺とガドネンさんだけになってしまった。

 背の低い筋肉質のおじいちゃんの姿なんだけど、いつもおもしろい話を聞かせてくれるから、モモちゃんのお気に入りのおじいちゃんだ。

 そんなガドネンさんはお茶を飲んだ後はパイプを楽しんでいる。俺はいつものように干し肉を噛んでいたんだが、俺達が逃げてきた洞窟の手前に置いた松明に照らされて洞窟の中で踊るような影が見えた。

 

「アオイ、急いで皆を起こすんじゃ。やって来たぞ!」

 ガドネンさんの言葉が終わるよりも早く、モモちゃん達の身体を揺すって起こし始めた。

 起きた人がまだ寝ている人を起こしたので、3分も経たずに皆が眠りから覚めたようだ。


「来たか!」

「そろそろ姿を見せると思います」

「荷物をまとめて逃げだすしか無さそうだ。土竜ならまだしも、陸生のクラウケンなど俺達で歯が立つとは思えん」


 2人のトラ族の男を先頭に、出口に向かう洞窟を歩き出した。俺とシュタインさん、ガドネンさんで殿を務める。モモちゃんはリーザさんに手を引かれて歩いて行った。


「真っ直ぐ来るようなら問題だぞ。場合によっては洞窟から出てくるかもしれん」

「あ奴に、雪の中を動けるとは思えんぞ。だが、念のためと言う事もあるな」

「それより、このままにしておくと春には出てくるかも知れませんよ。その辺りはだいじょうぶなんですか?」


 それが一番の心配だ。家ぐらいの大きさのタコなんだからな。村でも襲われたら全滅しそうだ。


「軍に任せることになる。1M(150m)程まで石を飛ばす大型のカラクリがあるそうだ。油が入ったつぼを飛ばしたところで火を点ければ何とか倒せるだろう」

 それって、攻城兵器なんじゃないのかな? そんな仕掛けを聞いたことがあるぞ。


「出て来たぞ。アオイ、もう一度火炎弾を放ってみろ。ただし奴がこの通路に入ってkらだぞ」

「分かりました。確かに火炎弾は効果がありますね。あの腕の先に口が無いのは、俺が火炎弾で吹き飛ばしたところです」

「アオイが10人いれば倒せそうだな。そうなると王国軍の魔導士部隊の出番かも知れん」


 そんなやり方もあるんだろうな。軍が動いてくれるなら俺達の洞窟探索はこれぐらいで丁度良さそうだ。ある意味先行偵察部隊って事なんだろう。

 大タコの動きは余りよろしく無さそうだ。ずるずると洞窟から這い出して来たんだが、真っ直ぐこちらに向かってくる。灯りを頼りに動いてるのかもしれないな。あんな大きな目があるんだから。


「そろそろ離れるぞ。……どうした? アオイ」

「あの目にボルトを射込んでやろうと思ってます。先に行ってください。撃ったらすぐに洞窟に入ります。その後で火炎弾を放って後を追い掛けますから」

「分かった。光球が無いから、松明を1つ置いて行く。良いか、絶対に走って来るんだぞ!」


 2人が松明を持って洞窟の中を走って行った。出掛ける前に松明の束に火を点けて行ったから、足止めには使えるかもしれないな。

 近付いて来たタコの目をクロスボウのターゲットスコープに捕える。あまり倍率は無いんだけど、十字線が入っているから狙いを付けるのは容易だ。

 腕の長さが10m近いからあまり近寄られると巻き付かれかねない。

 距離を見極めてトリガーを引くと、狙い違わずタコの目にボルトが吸い込まれるように入って行く。

 途端にタコが暴れ出した。ひょっとしたら息の根を止められるかも知れないと思っていたが、あれだけではダメなようだ。

 直ぐに洞窟の奥に入り、松明の束の傍に置いてあった松明に火を点けて洞窟を走って行った。

 50m程走ったところで、息を整える。クロスボウを背中に回して、松明の束が燃えている広場の方を見た。まだ追って来ないようだ。しばらくは余裕があるって事になる。

 壁に背中を付けて水筒の水を飲んで休息する。

 これからずっと走り続ける事になりそうだから、休める時には休んでおかないと体が持たないからね。


 じっと燃え盛る松明を見ていると、松明の奥にうごめく物が見えてきた。どうやら洞窟に入ってきたようだ。松明を手に呪文を唱え左手に火炎弾を作る。素早く次の呪文を唱えて10mほど前進し、倒れた焚き火の向こうに放った。

 飛び散った火の粉で洞窟内が一瞬明るくなり、俺が潰した目から青い体液が漏れているのが見える。

 直ぐに後ろに後ずさって体の向きを変えると、力の限り走り始めた。

 松明の炎が風で吹き消されそうになって少し速度を緩める。懐中電灯があればいらないんだけどね。確か、ザックに入っていたような気がするけど直ぐに取りだせない。

 皆と合流するか、この松明が消えるまでは我慢しとくしかなさそうだ。

 とにかく走り続けた。身体機能が5割増しだから普通に走っているつもりでもかなりの速度が出るみたいだ。


 30分程走ったところで、一休み。距離的には5km以上は距離を離したと思う。休みながら魔法の袋を開けてザックのポケットを探る。マグライトがあったはずだ。側面の太陽電池で充電できるLEDタイプのライトは、電池を交換したばかりだからしばらくは使えるだろう。ようやく見付けたところで、スイッチを入れてみるとちゃんとライトが点いた。

 30m程先まで照らすことができる。これなら松明は必要ないが使えるうちはつかっておこう。それだけ電池が長持ちする。

 

 水筒の水を一口飲んで、早歩きのような速度で歩き出した。

 少なくとも俺の歩く速度よりもタコの移動速度は遅いから、これでも距離を取ることが出来るはずだ。たまに後ろを松明で照らしてみるが、タコの姿は見当たらない。

 

 腕時計はザックの中だ。時間経過は分らないけど、適当に休んだ回数を考えると3時間以上は早足で歩いているはずなんだが、中々モモちゃん達と合流できない。

 更に、2回休息を取って歩いて行くと、洞窟の先がほんのりと明るくなった。

 思わず駆けだして先を急ぐと、すぐに光球が浮かんでいるのが見えて来た。

 どうやら、合流できたみたいだな。かなり先を急いでいたようだ。


「ハァ、ハァ……。遅くなりました。依然として奴は追ってきてます。奴の左目をクロスボウで潰しました。体液は流出しているようですが、動きが鈍くなることはありません」

「そうか。ご苦労だった」

 

 丁度食事時に合流できたみたいだ。直ぐにカップでスープが渡され、モモちゃんがビスケットのような硬いパンを手渡してくれた。

 スープに付けて柔らかくしないと歯が折れそうに堅いんだよな。

 それでも、体力を温存するためには食べとかないとダメだろう。モモちゃんはバリバリと音を立てて齧ってる。歯は頑丈みたいだな。


「手傷を負わせたなら軍も討伐が容易だろう。俺達は早めに村に戻るに限るぞ」

「そうは言っても、洞窟を抜けたら入り口を見通せる場所で野営をせねばなるまい。洞窟から出てくるとは思えんが用心に越したことは無い。奴が外に出られないなら、雪原は一応安全圏になるからな」


 シュタインさん達は既に食事を終えて、小さなカップで酒を飲んでいるみたいだ。そう言えば、少し寒くなってきたな。出口が近いせいなんだろうか。


 シュタインさんの指示で、衣服を整える。革の上着の下にセーターを着て、マントを直ぐに取り出せるように袋から取り出してバッグのストラップで固定しておく。

 雪靴は次の休憩場所で履きかえるようだ。

 俺の杖はシュタインさんが槍代わりに持っているから洞窟を出てから改めて作る必要がありそうだな。

 

 出発する前に、ヒルダさんが洞窟の奥に向かって光球を放った。

 30m程先で床に落ちてコロコロと転がっていく。床に落ちたところで止まるかと思ったけど、あんな使い方もあるんだな。

 かなり遠くまで転がっているように見えたけど1M(150m)には達しないらしい。

 止まった場所でしばらく周囲を照らすらしいが、その近くまではまだやって来ないらしい。

 30分ほど休んでいるんだから、そろそろ見えても良さそうだが、何らかの理由で足が遅くなったのだろうか?


 追い掛けてこないんだったらその方が良い。

 俺達は洞窟の入り口目指して歩き始めた。

 遠くに白く洞窟の出口が見えたところで休憩を取る。

 寒さが肌に感じるから、暖かなお茶を飲み、マントをはおる。帽子と手袋も必要だな。革のブーツを温かな雪靴に履き替える。


「洞窟の入り口を見張っていた岩陰で良いだろう。俺達がテントを張る間に、アオイ達は焚き木を集めてくれ。生木でも構わんぞ」

「やはり1晩は洞窟を見張ると?」

「出てきたら厄介この上ない。岩陰なら直ぐに戦闘が始まることは無かろう」


 歩きながらも、野営の準備をする分担をシュタインさんが告げていく。外は一面の雪だろうからなるべく手早く物事を運びたいんだろうな。


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