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5-05 今度はタコだと!


 最後の通路も土竜がいた通路と同じように床がすり減っている。

 ここも魔族の通路として長く使われていたんだろうな。天井を見ると、ススの跡が明確に分る。松明を持った連中と言う事になるんだろう。ヒルダさん達は【シャイン】で光球を作ることができるが、魔族にはそんな魔法が無いんだろうか? それとも魔族の魔法は俺達の知る魔法と体系が異なるんだろうか……。


「アオイ、何を考えてるの?」

「天井のスス跡が気になったんです。俺達は光球を3個作って周囲を見てますが、魔族は松明を明かりにしたんだと考えてました」


「魔族の魔法は私達と少し違いがあるからね。でも光を出す魔法もあるわよ。松明を使ったのは、魔導士の数だと思うわ」

「魔族の魔導士はエルフ族よりも数が撃てるし、威力もあるぞ。だがその多くが火と土系の魔法じゃ。ワシ等ドワーフ族よりも鉱山を容易に開発できるのもそれが原因じゃな」


 ドワーフも地下に住居を定めているらしい。俺の持つ長剣が魔族製で兵士達の持つ長剣よりも鍛えられているというのは良質の鉄が手に入る魔族だけの特権なんだろうな。

 魔族の長剣を改めて鍛え直して自分の剣にしている者も多いらしい。

 

「となると、魔族の魔導士の数は少ないということなんでしょうか?」

「あまりお目に掛からんことは確かじゃな。地上にやってくるのは兵士達じゃ。一部の隊長クラスや偵察要員が魔法を使えるが、魔法を縦横無尽に使える魔導士が地下から上がって来る事はあまり例が無い事じゃ。出て来たとしても数人じゃろうな」


 ある意味、特権クラスと言う事なのかもしれないな。

 魔族には、魔導士、鉱山開発技師、金属加工の職人それに兵士がいるって事になる。

それ以外にも食料生産を行う連中もいるんだろうけど、これは下級の魔族に任せているのかもしれないな。

 直接的な交渉は行っていないだろうから、相手の国家組織がどのように作られているかもわからないんだよね。


「どうやら、広場に出たみたいよ」

 考え込んで歩いていたから、周囲の状況が見えてなかったようだ。

 前方を見ると、シュタインさん達が素早く広場の左右に移動している。俺達も足早に広場へ向かって移動していく。

 

 広場自体は、最初の広場と同じ規模だ。途中で3回程休んだから、6時間程歩いたことになるのだが……。

 今までの広場と異なるのは、広場の真ん中に大きな池があることだ。広場の半分以上を占めるんじゃないかな? ガドネンさんが槍を池に差して深さを測っているようだが、手槍1本がするすると入って行った。縁であれだとすればかなりの深さがあるように思えるぞ。


広場の右手にこれまでと同じような大きさの洞窟が口を開いている。他に通路は無いようだな。池の中にもあるかも知れないが、少し濁った池は深さがあるから底を見ることができない。


「ここで野営をする。入口でなら万が一にも逃げるには楽だろう」

 シュタインさんの言葉に頷くと入ってきた洞窟に戻って野営の準備を始めた。

 焚き火は火鉢で食事を作るだけだ。光球を2つ広場と洞窟の奥に浮かばせて魔物の接近を見ることができるようにしておく。

 洞窟内は比較的暖かいから毛布に包まれば十分だ。交替で眠りながら周囲を警戒する。


「何かいるにゃ……」

「だよねぇ……。でも、姿が見えないし、ひょっとしてあの池の中?」


 まだリーザさんは寝ていなかったようだ。目をこすって眠気を覚ましているモモちゃんの言葉に頷いている。

 光球が俺達のいる通路から少し離れて浮かんでいる。その明かりを受けた池は地底だからか鏡のように浮かんだ光球を移しているんだが……。

 

 突然、池に波紋が広がる。やはり何かいるんだろうか?


「リーザさん。皆を起こしたほうが良いかもしれないよ」

「そうね。私達の尻尾もそんな事を伝えたがってるわ」


 モモちゃんの尻尾はモモちゃんの腕位に太くなってるぞ。やはりやばい相手という事になりそうだ。クロスボウを手に取って弦を引いておく。


「どうした?」

「池の様子がおかしいの。少し下がった方が良いかもしれないわ」


 ようやく起きたらしいシュタインさんにリーザさんがわけを話すと、全委員が池に視線を移す。

 波紋はかなり広がっている。今では波立つほどなんだが、いったい何がいるんだろう?

 

「あれか?」

 ガドネンさんが指さすまでもなく、俺達はそれを見た。

 池の左端に近い場所から太いヘビのような物が姿をあらわした。

「右にも出て来たわ!」

「……だいぶ出て来たぞ。ヘビとは異なるようだ。奴らには目が無いからな」


 何匹もの大蛇のような物が池から姿を現したが、その頭と思しき場所にあるのは滝さんの牙が見える口だけだった。

 それ以外にあるものは……。あれは吸盤じゃないのか? 俺達の食事に使う皿のような円盤状の周囲を鋭いとげが取り囲んでいる。

 となれば……、本体はタコかイカって事になりそうだ。

 

「始めて見ますけど、魔物でしょうか?」

「魔物には違いない。あの蛇のようなものは触手なんだろう。本体はまだ出てこないようだ」

「クラウケンと呼ばれる海の魔物の話を聞いたことがあるぞ。たくさんの触手を持った巨大な姿をしていると言う事じゃが、ここにいる奴はこの池よりは小さいって事じゃろう」


 クラーケンの伝説はこの世界にもあるのかな? 名前も似てるようだ。

 やがて、池の水が盛り上がるように上昇して、巨大な頭が現れた。どうやらタコの変種らしい。

 いろんな魔物がいるんだなと感心してみてると、触手が(いやこの場合は腕と言った方が適切だろう)俺達の方に伸びてきた。

 大きな目が俺達を見ているから俺達を餌と認識したみたいだ。


「逃げろ! あんな魔物では俺達に勝ち目があるとは思えん」

 シュタインさん達が通路に伸びてきた腕を手槍で牽制しようと殿を買って出る。

 ガドネンさんを先頭に少しずつ通路を後ずさって成り行きを見守る。

 池に潜んでいタコの大きさは殆ど人家並みの大きさだ。数本の腕を通路に入れてきたが、本体も池から出ようとしている。

 軟体生物だから、この通路を通る位は簡単なのかもしれない。

 そんな光景を見たところで一目散に俺達は通路を駈け出した。


 数分ほど全力で逃げたところで、一休み。息を整えると、光球を1つ俺達の後ろに作って、魔物の動向を探る。

 闇の奥でもぞもぞと動く腕が見える。距離は300mは離れているようだ。俺達が歩く位の速さで移動できるとなると厄介だな。


「とにかく、早いところ洞窟を出た方が良いかもしれん。奴が水から出てどれ位いられるかが問題だな」

「逃げるのは賛成だが歩いて1日以上は掛かるぞ。最初の広場まで追って来るなら、攻撃しながら撤退を考えねばなるまい」


 湿気の少ない洞窟だからな。軟体動物がどれだけ皮膚の乾燥に耐えられるかも考えたいところだ。

 それと、攻撃するなら本体の目だろう。タコの目にはまぶたが無い。あれだ個の大きさだから1m程の目を持っていたんだよな。


「だいぶ近付いて来たわよ。火炎弾を放ってみるわ」

 火炎弾の到達距離にいるって事は直ぐ傍じゃないか! 俺達は急いで腰を上げて通路を最初の広場に向かって駆けだした。

 後ろで2回小さく火炎弾の弾ける音が聞こえてきた。たぶんあまり利いてはいないだろうが、足を停めてくれるだけでもそれだけ距離が稼げる。

 俺達は早足で通路を急いだ。

 

 10分程移動したところで、少し休みながら魔物の動きを観察する。やはり俺達の後を付いてくるようだ。

 厄介な事になってきたな。


「水にいた魔物なら火には弱いはずだ。次はアオイの火炎弾をぶつけてみてくれ」

「分かりました。松明を1本残しといてください」

「1本と言わず、これを使え。これなら直ぐに消えんだろうし少しは足止めができるかもしれん」


 ガドネンさんが3本の松明を結んで通路の床に立てた。三脚みたいだな。火を点けるとかなり遠くまで見通せる。ここで待って攻撃してから全力で走りだせば良い。

 その間に、皆は通路を遠くまで逃げられるだろうし、モモちゃんも足を休められるに違いない。

 自分の身に【アクセル】を掛ける。これで通常の魔法よりも高い身体機能の強化が図れるはずだ。

 皆が通路を走りだしたのを見送ったけど、モモちゃんが何度も俺を振りかえっていた。心配なんだろうけど、火炎弾を浴びせたら直ぐにそっちに向かうから心配しないでほしいな。


 壁に寄り掛かりながら、反対側の通路を眺める。

 退屈しのぎに干し肉を削って噛んでいたら、喉が渇いて来た。水筒の水を一口飲んでベルトに戻そうとした時、通路の奥で動く物が見えた。

 ここまで追ってきたと言う事なんだろう。すでに2km以上広場から離れているんだが、皮膚の乾燥は奴にとっては問題ないと言う事になるんだろうな。

 はっきりと腕が見えてきた。腕先の口の中にある細くて鋭い牙まではっきりと見える。


 呪文を唱え、左手に火炎弾を出現させると、次の呪文で集束化を行う。

 呪文の終わりとともに左手を相手にぶつけるように押し出すと、火炎弾が1つの腕先にあった口の中に吸い込まれて弾けた。

 状況の確認もそぞろに広場に向かって全力で走る。5割増しの状況で全力疾走したらどれ位のタイムが出るんだろうか? きっと国内記録を塗り替えられるかもしれないな。

 そんなどうでも良いような思いが浮かんでくるのも気にせずに仲間の元へと走り続けた。

 やがて、遠くに明かりが見えてきた。どうやら仲間と合流できるぞ。

 

「どうだ?」

「相変わらず向かってきます。腕の1本の口を破壊できましたが、後は確認せずに走ってきました」

 

 俺の言葉にシュタインさん達が集まってぼそぼそと話をしている。今後の対応を協議しているんだろう。

 ヒルダさんが渡してくれたお茶を美味しく頂いたところで、再び広場に向かって歩き始める。まだまだ距離があるのだ。なるべく距離を離して一眠りできる時間を作らねばならない。


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