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4-03 種族の違い


 森を抜ける頃には雨がほとんど上がって、西の空から日が差してきた。

 お日様があの位置だとまだ夕方には程遠い感じだが、俺達の前には今夜の野営書である休憩所が見えて来た。

 森を抜けたんでモモちゃんは緊張の糸が切れたんだろう。いつのまにかぐっすりとお休み中だ。

 幌馬車が広場に停まったところで俺達は荷馬車を下りたのだが、広場は水浸しで焚き火を作ることもできない。とりあえず広場の入り口近くにある、備え付けの柵の近くまで歩いている。

 どうするのかなと思っていたら、シュタインさん達がやってきて小さな壺の蓋を開いて火を点けた。携帯燃料のような使い方だな。これでどのぐらい火が点いているんだろう?

 やがて、商人の2人が板を持ってやって来た。板の裏にある板を立てるとベンチになる優れ物だ。なるほどこれならお尻をぬらさずに済みそうだ。


「湿った焚き木は使い物にならん。今夜はこれで良いだろう。明日は焚き火を作れそうだ」

「やはり専用の荷馬車が欲しいのう。シュタイン、来春には用意せねばなるまい」

 パイプで一服を楽しみながらシュタインさんとガドネンさんが話している。そうなると気になるのが荷馬車を引く獣になる。どんな馬なんだろう?


「この荷馬車隊はサグラム町まで向かう。購入資金は十分だからガドネンに頼みたいところだ」

「ダリムの目利きは出来んだろうな。確かにワシの仕事じゃろう。良いのがいなければ無理せんでも良い」


 モモちゃんと思わず顔を見合わせる。サグラム町に行けばダリムがわかるって事らしい。これは一度見ておかなくてはならないだろう。

 そんな事を話している間にも続々と荷馬車が広場に入ってくる。

 俺達の場所は荷馬車を置く邪魔にもならないからしばらくは様子を見ておこう。


「シュタイン、ここにいたのか!」

 シュタインさんと同じ年頃の傭兵が俺達のところにやって来た。リーザさんが立ち上がって、俺とモモちゃんをこっちにおいでと手招きしている。どうやら護衛の相談らしいが、座るところが無いからな。俺達が席を穣ることになったらしい。

 丁度良いから、40台の荷馬車の様子を見て回る。男達が牛を頚木くびきから外して、子供達が奥の方に連れて行く。

 おばさん達は夕食の準備に忙しいし、もう少し若い男達が荷馬車を広場にきちんと並べている。

 これは時間が掛かりそうだな。まだまだ荷馬車が続いているから、今夜も街道に荷馬車を並べることになるだろう。

                ・

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                ・

 イーデンの森を抜けて一泊し、翌日はベルク村への間道やアーベルグ村への間道を眺めながらドックレーの森の手前の休憩所にやって来た。相変わらず、街道に荷馬車を並べることになるのだが、ドックレーの森はどうしても途中で1泊することになる。

 夕べも3つの傭兵団のリーダーが集まって協議していたようだが、それは今夜も続いているようだ。


「来たら迎撃するしかなかろうに。全く埒も無い」

「それだけ皆が心配してるのよ。でも、私もガドネンに賛成だけどね」


 リーザさんの言葉にヒルダさんが呆れてるけど、これは意外と面倒な事態かもしれないな。

 俺達傭兵団が3組いてもこれほどぎゅうぎゅう詰めの広場では思うように長剣を振れないんじゃないか? シュタインさんやガドネンさんの動きはある程度周囲が開けていないと無理だろう。足を一歩進めながら長剣やメイスを打ち下ろす形だからね。ヒルダさん達やモモちゃんは荷馬車の下をくぐりながら矢を撃てるかもしれないけど、致命傷を与えるのは難しいだろうな。この柵の周囲だけでも広げておいた方が良いのかも知れない。


 夕食を終えてお茶を飲みながらシュタインさんの帰りを待つ。明日の道中は、リーダー達の結論で俺達の配置が変わる可能性がありそうだ。

しばらくしてシャタイんさんが戻ってくると、焚き火の傍にドカリと腰を下ろした。


「今まで通りだが、俺達で先頭の荷馬車に乗る。荷は飼葉が10個程だから気を付けることは無いぞ。森の中での野営は、休息所に入らずにそのまま荷馬車6台分街道を進めたところで俺達は野営をする。牛は商人が休息所に運ぶそうだ。街道に沿って12台並んだ荷馬車の先頭と中間それに最後尾が俺達の荷馬車と同じような荷を積んで夜を迎える」

「森の街道で野営をするのか?」

「そうするしかなさそうだ。中間で野営する傭兵団が万が一の時には前後に移動することになる。柵の中は商人達が20名以上で武装すると言ってくれた」


 俺達が囮になるのかな? なるべく盛大に焚き火を焚くしか無さそうだ。勘の良い2人がいるから接近される前に準備が出来そうなところが俺達に有利に運べば良いんだが……。


「かなり物騒な野営じゃな。荷車の下を拠点にするしか無さそうじゃ。側板を何枚か貸して貰えれば良いのじゃが」

「最初から数枚積んでくれるそうだ。それと飼葉の束を使って弓の射点を作れば良いだろう。俺とガドネンそれにアオイで迎撃することになるぞ」

「私達は荷馬車の下で矢を放てば良いのね?」


 ヒルダさんの言葉にシュタインさんが頷いている。

 今回は最初から迎撃担当だからクロスボウはしまっておこう。その代わ弓矢を取り出して置いて、ヒルダさんに預けておく。3人で矢を放てば少しは数を相手にできるだろう。


 翌日は先頭になる荷馬車を用意して貰い。僅かばかりの荷物を荷台に積み込んだ。俺達4人が乗っても十分に余裕があるし、飼葉の束に腰を降ろせばお尻が痛くなることも無い。御者はガドネンさんだ。隣に弓を持ったリーザさんが腰を下ろしている。

 荷馬車の頚木に牛を繋いで準備をするのに時間が掛かるようだ。その間を利用して俺とシュタインさんで周囲の森から焚き木を切り出して置く。いくらあっても困ることは無いからな。


 やがて、若い商人が俺達のところに走って来ると出発の準備が整ったと知らせてくれた。いよいよドックレーの森に進むことになる。


「出発!」

 シュタインさんの言葉に従って、ガドネンさんが手綱でぴしりと牛の背を打つと、荷馬車がガタガタと音を立てて進み始めた。

 まだ森までは1km程の距離があるが、何となく嫌な予感がしてならない。隣のモモちゃんを見ると、尻尾は普通の太さだから俺の気のせいなんだろうけどね。

 森に入ると、シュタインさんは荷馬車の御者台の後ろに立って前方を見据えている。

 リーザさんは弓の弦に矢をつがえていつでも引き絞れる状態だ。俺とモモちゃんも傍らに弓を置いているけど、まだそこまで緊張はしていない。ヒルダさんはのんびりと森の中を眺めているようだけど、その右手には新しく買いそろえた魔導士の杖を握りしめていた。前と杖と比べると少し太くなっているし、先端に付いていたガラスのような宝石は目にすることができない。フレイルのような金属製の太くなった部分に埋め込まれているらしい。

 背の低い畝状の突起が数本走っているけど、あれで殴りつけるんだろうな……。


「モモちゃん、皆に飴を配ってくれないか」

「いっぱいあるにゃ!」


 嬉しそうな顔をしてモモちゃんが飴玉を配り始めた。今から緊張していたら夜までもたないからね。それに早めに襲って来るならそれだけ夜が楽になりそうだ。

 モモちゃんから飴玉を受け取る時はさすがにシュタインさんの表情が崩れる。そんなちょっとしたことが緊張を和らげることもあるのだろう。嬉しそうにモモちゃんの頭を撫でてるぞ。


「アオイの考えだな。確かに緊張してたことは確かだ」

「アオイも傭兵の資質があるって事だろうよ。それは大事な事だぞ」


 ガドネンさんはそう言って、貰った飴玉をがりがりと齧ってパイプに火を点けている。パイプが好きなら確かにそっちの方が良いだろうな。

 街道の両脇まで太い木々が密集していて下草の背も高いからあまり奥まで見通しが効かない。街道自体は石畳だから遠くまで見通せるのだが、俺達を襲おうとするものがわざわざ街道に出て待っているとは思えないんだけどね。

 ある意味、勘の良いモモちゃんやリーザさんが頼りではある。

 

「ヒルダさん、種族の特徴について教えていただけませんか?」

「本当に何も知らないのね。良いわ。教えてあげる……」


 ヒルダさんも暇だったのだろう。色々な種族について教えてくれた。

 先ずは大きく魔族と人族に分けられるそうだ。

 魔族はゴブリンからラジードと呼ばれる高い知能を持ったトカゲのような種族までを一般的には言うらしい。


「ドラゴンを魔族に区分する学者もいるけど、私は反対だわ。あれはまったく異質な存在なの」


 ある意味神の眷属とも言われているそうだ。

 それでも、いろんな種類がいるらしく、眷属とまで言われるものはこの辺りにはいないらしい。俺の身長の2倍程の2足歩行で獣を襲うものがこの辺りで言われているドラゴンと言う事だ。話を聞く限りにおいては恐竜の生き残りじゃないかな?

 すばしこくて10体ほどで襲い掛かるらしいから、今のままでは助かることは無さそうだ。魔法を使うことは無いということでヒルダさんは魔物ではないと思っているんじゃないかな?


 この辺りで見掛ける種族はシュタインさんのようなトラ族とガドネンさんのようなドワーフ族。リーザさんはネコ族だし、その他にもイヌ族がいるらしい。

 他の王国へ行けば、イノシシのような種族や水辺で暮らすキルヒ族なんかもいると言う事だ。キルヒ族は詳しく聞くと、甲羅を持っていないカッパに似ているような気がするな。


「トラ族は敏捷で、力があるわ。ドワーフ族は小柄だけど力が強いわよ。ネコ族は素早くて勘が鋭いし、イヌ族は私達が分らないような匂いまで嗅ぎ分けるわ」

「トラ族とネコ族って似ているような気がするんですが?」


 俺の前でヒルダさんが手を横に小さく振る。違うっていう意思表示だろう。こんな仕草は元いた世界と変わらない。


「全然違うわ。トラ族にはネコ族の勘は無いし、ネコ族にはトラ族のような力は無いわよ。少し似てるのは動きの素早さぐらいなものよ」

「そうなると俺達はどうなるんでしょう?」

「そうね……。ずるがしこくて、ネコ族よりも力がある位かな? 早々、魔法の使用回数は他の種族より多いわよ。口の悪い人達の中では、魔族と人間族はさほど差が無いとまで言うことがある位よ」


 ずるがしこいと言うよりは、損得勘定に秀でていると言う事なんだろう。荷馬車の輸送を行う商人や、村のお店も人間族が行っているようだからね。

 と言う事は俺もそんな目で見られているんだろうか?

 この先何があるか分からないから、おとなしくシュタインさん達の言う事を聞いていよう。


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