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2-14 柄を交換する


 夕暮れが迫ってきた中で、俺達は夕食を食べる。

 乾燥野菜と干し肉のスープに焼いたパン。それに塩と香辛料を振ったラビーの肉が半身ずつ配られた。もう1匹残っているが、これはシュタインさんとガドネンさんに進呈しよう。


「ラビーを1匹丸ごととは、久しぶりじゃ」

「全くだ。アオイの弓の腕は頼りになるぞ」


 そんな事を言って、焼き肉にかぶりついている。モモちゃんもかぶりついてるけど、口が小さいのか中々苦労しているようだ。

 残った俺達は皿の上でナイフを使って切り分けてるんだけど、やはりダイナミックにガブリとやった方が良いんだろうか?

 それほど大きな肉じゃないから、骨にあたって苦労しそうなんだけどね。

 普段より贅沢な食事が終わると、お茶を飲みながら今後の話が始まった。


「ラケット村で依頼が無い場合は、そのままビーゼントに向かうぞ。野営することになるが街道ならば少しは安全だ」

 

 当初の予定ではラケット村で1泊だったから、先を急ぐと言う事なんだろう。傭兵団の仕事が無ければ、なるべく依頼の発生しそうな村に向かうのが一番なんだろうな。

 ちょっと、モモちゃんの体力が気になるところだが、今のところは元気だから大丈夫ということなんだろうか?


「モモにはちょっときついかもしれんが、もう少しだ。ダメなら俺がおぶってやろう」

「だいじょうぶにゃ!」


 モモちゃんが元気に返事をしてるからヒルダさん達が微笑んでるぞ。

 その時は俺が頑張れば良いだろう。だいぶ歩くのにも慣れてきたからね。

 お茶を飲み終えたところで、リーザさん達が焚き火の番に付く。俺達は焚き火の傍で横になった。深夜からが俺とモモちゃんの番だが、やはり疲れているんだろう。直ぐに眠りに落ちた。


 翌日の朝早くから街道を歩いて行くと、後ろからガラガラと荷馬車の音が聞えて来た。

 どうやらラケット村方向に向かう荷馬車らしい。

 足を止めて、荷馬車が近付くのを待っていると、俺達の横に荷馬車が止まる。


「ラケット村に行くのか?」

 荷台から中年の男が声を掛けてきた。


「いや、ラケットを抜けてビーゼントに向かう。そこで護衛の仕事を待つつもりだ」

「なら、ビーゼントまでの警護を頼めるか? 街道の輸送仲間がこの間1人重傷を負ってしまった。俺達の荷馬車には護衛がいないんだ。銀貨1枚なら出せるぞ」


 そんなことで交渉がまとまり、6台の荷馬車に俺達は乗ることができた。一番前の御者台にシュタインさんが乗って、残り5人は最後尾の荷物が少ない荷馬車に乗り込む。

 床にガトルの毛皮を敷いて、その上にポンチョを乗せれば少しは振動を抑えることができる。乗り込んで30分もしない内にモモちゃんは背中にある荷物にもたれ掛って昼寝を始めた。まだ朝なんだけどね。


「眠らせてあげなさい。ここで私達が周囲を見てれば十分だわ。これだけ周囲が開けているから、襲ってくる獣は直ぐに分かるはずよ」


 ヒルダさんの言葉通り、少し視点が高くなったから周囲が良く見える。それでも草原は微妙にうねっているから、草むらに隠れて忍び寄るものがいないとも限らない。初心者の俺は街道の背後を見張っていよう。

                  ・

                  ・

                  ・

 俺達が振りだしのビーゼント村に着いたのは翌日の夕暮れ時だった。

 荷馬車のおかげで1日早く付いた感じだな。特に襲ってくる獣はいなかったけど、荷馬車の責任者は上機嫌で銀貨を1枚シュタインさんに手渡していた。

 俺達の分け前は10Gだったが、ちょっとしたお駄賃になった感じがする。


 いつものようにリーザさんが宿を手配している間、俺達はギルドのテーブルで待つことになる。

 シュタインさんはギルドのカウンターでお姉さんを相手に、けっこう長い話をしている。良い依頼があったのだろうか?


 俺達のテーブルにシュタインさんが着いて、パイプを楽しみ始めた頃にリーザさんがギルドの扉を開けて入ってきた。

 全員が揃ったところでシュタインさんが話を始める。


「次の依頼は明後日からになる。2晩泊まって早朝に出発だ」


 テーブルに小さな地図を広げたんだが、縮尺は適当だ。だけど、街道途中の野営用の広場が描かれているから、村や町に至るおおよその日数が分かる。

 基本は徒歩だそうだ。

 

「ビーゼントを出て、イーデンの森を抜けベルク村に向かう。荷を積み替えて再び街道に戻ると今度はドックレーの森を抜けてエバース村だ」

「かなりの距離になるな。護衛はワシらだけか?」


 真剣な表情でガドネンさんがシュタインさんに質問を投げた。


「そうだ。荷馬車の数は12台。商人は4家族で、野犬相手なら6人出せると言う事だ」

「女子供が半数以上か……」


「ドックレーは問題よ。前にもリーデルが出ているわ」

「6人出せれば傭兵3人分にはなるんじゃないか? それに、弓を使える子供が2人いるそうだ」


 ヒルダさんの問い掛けにも、シュタインさんはキチンと答えている。理由も言ってるんだけど、商人2人が傭兵1人分と言うのがいまいち理解できないな。


「危険な森ではあるが、昨日村に到着した荷馬車は襲われていないとの事だ。荷馬車6台の隊列だと言ってたぞ」

「う~む……。危険の度合いは少ないと言う事になるのか?」


 リーダーのシュタインさんは、俺達の意見をキチンと聞いて答えてくれる。こんなこともリーダーの仕事になるんだろうか?

 これにするぞ! と俺達の意見を聞かずに決めても問題は無いように思えるんだけどね。


「出発は明後日だ。武器を点検しておいた方が良いだろう。ヒルダの言う通りリーデルが一度出ていることも確かだからな」


 パーティの打ち合わせがお開きになったところで、モモちゃんを連れて部屋に向かう。

 部屋はどの宿も作りが同じに思える。2つのベッドに小さな机だ。

 机の上に装備を乗せて早めに寝ることにした。武器の状態は明日にでも確認すれば良い。先ずは長く歩いたから足の疲れを取ろう。


 翌日、朝日の明かりで目が覚めた。カーテンの無い窓からガラス越しに朝日が部屋に差し込んでいる。

 時間は早いんだろうが、こう朝日が当たると二度寝するわけにもいかない。

 ベッドから起き出して服を着こんでいると、モモちゃんも起きたみたいだ。


 モモちゃんが着替えをしている間に、自分の武器を点検する。

 クロスボウにはどこも異常はないし、ボルトの数も十数本あるからだいじょうぶだろう。片手剣も、サビ1つ見当たらない。魔族の金属を鍛える腕は確かだとガトネンさんが言ってたくらいだからな。良い物を貰った感じだ。


「モモちゃんの武器はだいじょうぶかい?」


 着替えの終わったモモちゃんに聞いてみると、首を傾げながら弓と孫の手、それに曲った短剣を調べているぞ。ちゃんと調べているのか疑わしいけど、見る範囲では問題は無さそうだ。矢筒の矢もたくさん入ってるし、俺の持つ魔法の袋にも10本近く入っているからとりあえずは準備OKと言う事になるのかな?

 2人の武器を点検したところで、1階の食堂に行くとすでに4人が朝食を取っていた。


「今日はのんびりするんだするみたい。すでに1つ目は鳴ったけど、2つ目はまだみたいね」


 モモちゃんと朝食を食べていると、カーン! という鐘の音が聞こえてきた。かなり高い音だから、鐘自体が小さなものなんだろう。最初の音は聞こえなかったな。

 明日は何としても聞かねばなるまい。それにしても、1回だけなんだな……。


 さて、今日は何をして過ごそうか?

 武器を新調することもないし、雑貨を買い込む必要も無さそうだ。飴玉も袋にかなり入っているみたいだから、次の村で買い込めばいいだろう。


「何もすることが無ければ、アオイの剣の柄を直して来い。元々がリーデルの握る柄だからな。少しアオイには太いんだろう?」

 確かに少し握り辛いところがある。リーデルの手は俺よりも大きいって事なんだろうな。

 シュタインさんが銀貨を1枚取り出して俺の前に置く。

「きちんとした柄なら、剣を振うのも容易だ。良く見極めて来い」

「柄を交換して頂けるのはありがたいんですが……。どこに行けば?」

「私が付いて行ってあげるわ。一応武器屋って事になるんだけどね」


 そんなわけで、モモちゃんも一緒になって俺達3人は武器屋へと向かう。

 武器屋の奥では槌を打つ音が聞こえてきたが、武器屋の扉を開いた途端に音が消えた。客が来たのが分ったんだろうか?


「だいぶ若いのがやって来たな? 何を買うんだ」

「武器を買うんじゃなくて、柄の交換なのよ。アオイ、剣を出して……」

カウンターに立った髭面のおやじは、ガドネンさんと同族のドワーフだな。

 言われるままに背中の剣を鞘ごとテーブルに置くと、武器屋のおやじが剣を抜いて調べ始めた。


「中々の品だ。リーデルから奪ったものだな。俺達にはここまで鉄を鍛えられん。それで、柄だったな。この中から一番具合の良い奴を探してみろ」

 俺に合わせるというよりは、出来合いの中から一番あった物に変えると言う事らしい。それならさほどの値段にならないだろう。

 

 10個程並んだ柄を一つ一つ確かめて、握りやすいものを選んだ。

「それでいいんだな。長さは、拳1つ半でいいのか。ところで、皮は何を使うんだ?」

 思わず、リーザさんを振り向いてしまった。

「砂蛇でお願いします」

 俺に構わずに、武器屋の親父に答えてるけど、どんな蛇なんだろう?

「中級者というとこだな。銀貨1枚になるが?」

 シュタインさんに貰った銀貨をカウンターに置くと、武器屋の親父が銀貨をポケットにしまい込んで、俺の剣を持ってカウンターの向こうにある作業台に向かった。

 剣の柄を簡単に分解すると、戸棚から紐のようなものを持ち出して作業を始める。


「少し待つことになるわ。棚の武器でも眺めて時間を潰しましょう」

 ヒルダさんの言葉に、カウンターの反対側にある武器の陳列棚に向かう。確かに色々と揃えてあるけど、大きくは槍と剣が主体だ。端の方にはクワがあるけど、農家の人もここで農具を作って貰うんだろうな。

 どの長剣も、両刃なのが気になるところだ。リーデルの剣は片刃っだから刀のように使えるんだけど、両刃では使い方も分からないな。


 槍も絵の長さが色々あるようだ。短いのは2mもないし、長いのは3mを超えている。この辺りは使用者の好みで分れるんだろうな。

 俺達は杖を振って野犬を相手にしてたけど、槍でも良さそうだ。杖代わりの槍は将来手に入れるべきだと考えていると、武器屋の親父が俺達を呼んでいる。


「出来たぞ。一応寸法は合わせたつもりだが、握ってみろ」

 鞘に収まった剣の柄を握ると、前とは比べ物にならないほど握りやすい。その上手に吸い付く感じだ。柄をX字状に編むようにして巻かれた砂蛇の皮のせいなんだろうけど……。

「全く別物ですね」

「気に入ったか? それが砂蛇の特徴だ。数年は使えるだろうが、緩んだら武器屋に行って巻き直して貰えば長く使えるはずだ」

 

 改めて、武器屋の親父に礼を言うと、武器屋を後にする。特にすることは無いから、ギルドで暇をつぶすことになる。

 この世界の事や、傭兵の事をリーザさんに聞いてみよう。


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