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2-07 ビーゼントからエバースへ(1)

 ビーゼント村に着いた時には日がとっぷりと暮れていた。

 急いで、リーザさんが宿を探し、ガドネンさんは武器屋に出掛けて行く。俺達はシュタインさんに連れられてギルドに向かい、依頼が終了した事を報告する。

 一緒に商隊の親方が同行しているのは、次の依頼をするためなんだろうか?


 ギルドの片隅にあるテーブルに、ヒルダさんと3人で座って待つことにした。シュタインさんは商隊の親方とギルドのカウンターのお姉さん3人で何やら話し合っている。

 しばらくすると、親方から報酬を受け取ってシュタインさんが俺達のテーブルにやって来た。


「2日後に小さな商隊がハンザに向かうそうだ。俺達はその商隊を護衛するぞ」

 と言う事は、またあの森を通ることになるぞ。

 思わず、モモちゃんと顔を見合わせてしまった。


「待たせたな。中々の値が着いたぞ。ん、リーザはまだなのか?」

 ギルドの扉が開いてガドネンさんが入って来た。ニコニコしながら俺達のテーブルに来ると、近くのテーブルから椅子を運んでどっかと座る。

 

 不意にギルドの扉が開いて、今度はリーザさんが入って来た。

「2軒目で何とかなったわ。食事を頼んでおいたから直ぐに向かいましょう!」


「そうだな。だがその前に、報酬を分けるぞ。1人、130Lというところだ」

「リーデルの持ち物は全部で450Lじゃ。6人だから1人37Lじゃな」


 2人分の334Lを受け取った。銀貨3枚以上になって、食事と宿代は共通費というから助かる。

 報酬を受け取ると、皆で宿に向かった。今夜は安心して眠れそうだ。


 翌日は、のんびりと村をモモちゃんと見学する。売ろうと考えた片手剣はそのまま腰に差して、サバイバルナイフをザックにしまいこむことにした。けっこう頑丈そうだから、焚き木採りの鉈代わりに使えそうだ。

 雑貨屋に行ったら、リーザさんが何やら買い込んでいる。話を聞くと飴玉との事だ。荷馬車の上でなめたら丁度良いかもしれない。3個1Lとの事だから、俺達も30個を買いこんでしまった。紙袋に入れて、モモちゃんが肩から下げているバッグに入れておく。ついでに砥石を買い込んでおいた。


「これから夏だから、衣服は今のままで十分よ。モモちゃんの麦わら帽子もそのまま使えるわ。秋になったら色々と必要になってくるの」

「その時には、教えてくださいね」


 毛布はいるようだけど、その他に必要な物もあるんだろうな。かなり稼いでおかないと、大変な事になりそうだ。

 

 夕食に皆が宿の食堂で顔を合わせる。

 明日の朝早くに出掛けるそうだ。あの森で一夜を明かすことになるようだから、今夜はゆっくり眠ることにしよう。

 

 翌日。早い時間に朝食を済ませ、弁当のハムサンドを受け取って広場に急ぐ。

 広場には5台の荷馬車が俺達を待っていた。


「護衛を請け負ったアルビオンだが」

「あんた達かい。おれが商隊のリーダーのライネスだよろしくな。2家族で商いをしてるんだが、戦えるのは3人だ。何でも西の森にリーデルが出たっていうじゃねえか。ちびっ子もいるようだがだいじょうぶなのか?」


 シュタインさんが俺達の働きを説明しているようだ。

 商人達も命が掛かっているからな、ちゃんと納得しない限り出発をしないんだろう。


「心配そうですね」

「小心者が多いの。でも、戦うしかないと分かれば死にものぐるいで武器を振ってくれるわ。荷物も大事でしょうけど、家族が一番大事って事でしょうね」


 シュタインさん達の会話を少し離れて聞いていると、シュタインさんが戻って来た。

「荷物が多いようだ。俺とガドネンは先頭を歩く。アオイは殿を頼む。モモは一番後ろの荷馬車だ。2人乗れると言ってるから、ヒルダとリーザは交替で荷馬車で休め」


 ずっと歩くとなると、モモちゃんが持ちそうもないからな。

 モモちゃんを最後尾の馬車の荷台に持ち上げて俺のクロスボウとボルトケースを渡しておく。バッグの上に丸めたポンチョを座布団代わりにモモちゃんに座らせればお尻が痛くなることも無いだろう。

 俺の荷物は背中に背負った長剣と腰のバッグの後ろに差し込んだ片手剣だからかなり身軽ないでたちだ。日差しが強そうだから、ザックから帽子を取って被る。

 リーザさんも弓を荷台に預けて、麦わら帽子を被って杖を握っている。俺の杖は少し重いんだよな。荷台に乗せておこう。


「出発だ!」

 男の声が大きく広場に聞こえると、荷馬車が次々と門を出ていく。

 俺達は追い掛けるようにして後に付いて歩き始めた。

 

 牛が引く荷馬車の歩みは、俺達が歩くほどの速さだ。

 先頭の荷馬車の手綱を引く者が歩いているせいなのかも知れないけど、かなりのんびりした歩みに思える。

 

 いつものように街道筋に林が来ると、ちょっとした休憩を取り再び歩き出す。

 森の手前の広場に着くのはかなり遅い時間になりそうだから、そんな休憩時間を利用して、焚き木を取り荷馬車に積んでいる。

 昼食は交替して荷台の上で取る。俺も素早くハムサンドを食べると少しの休憩を取って交替することにした。

 

 モモちゃんが辺りを気にしている様子も無いから、獣も近付かないって事なんだろうな。だが、それは獣も危険を感じているようにも考えられる。

 今度も、あの魔物達がやって来るんだろうか……。

 

 森の手前の広場に到着した時にはとっぷりと日が落ちていた。

 急いで焚き火を作りスープ作りが始まる。俺達は荷馬車近くにポンチョを広げて寝床を作る。食事が終われば直ぐに眠らないと明日は色々と大変だからな。

 

 夜半過ぎにモモちゃんに起こされると、焚き火の傍に行って熱いお茶を頂く。

 これからは俺達が焚き火の番をするのだ。


「明日、あの森に入るのだが、モモは何かを見付けたらこの笛を吹いてくれ。俺も勘は良いと思うがモモが一番だからな」

 シュタインさんがモモの首に革紐の付いた金属製の笛を掛けてくれた。俺の小指程の大きさがあるな。

 モモちゃんがうんうんと頷いてるけど、ちゃんと理解してるかどうか疑わしいな。

 俺も気を付けて周囲を見ていよう。


「来るとしたら、リーデルかしら?」

「あれだけ倒したのだ。部隊が半減しただろうから再編成に帰ったと思う。そうなると、一緒に連れて来た魔物を放って置くんじゃないか? そうなると、ゴブリンという線が強い」


 ゴブリンは結構すばしこいんだが、モモちゃんの魔法で身体機能を上げればそれ程怖い相手ではない。少し肩の荷が下りた感じだ。

 モモちゃんが飴玉の袋を取り出して俺の裾をつんつんしている。

 まだ食べなかったのかな? 「良いよ」と小声で告げると、俺にも1個渡してくれた。シュタインさん達はパイプを楽しんでいるから、俺達4人で飴の甘さを楽しむ。

 モモちゃんが嬉しそうな表情をしてるから、また買ってあげよう。

 でも、虫歯にならないかな? 【クリーネ】で体の汚れが全て落ちると聞いたけど、歯も有効なんだろうか?

 誰も、歯を磨いている人を見掛けたことが無いけど、皆綺麗な歯をしてるから、きっとその作用は歯にも及ぶんだろうな。


 何事も無く夜が明けて、朝食を早めに済ませると、俺達は森に向かって街道を進んで行った。

 今度は用心して杖を持って歩いて行く。荷台の上でモモちゃんが真剣な表情であちこち眺めているが、今のところ異常はないようだ。

 荒地の街道よりも歩みが遅いのは、休憩の間隔を長くしているためだろう。

 それでも休憩を取る時には、皆が周囲を監視している。

 精神的にかなり疲れるな。来る時は荷馬車に揺られてきたけど、歩くとなると疲労が何倍にもなりそうだ。

 

 どうにか日が暮れない内に広場に到着すると、用意した焚き木で2か所に焚き火を作る。柵を動かして簡単な囲いを作り、前に来た時に集めて置いた焚き木を運んで柵の補強をしておいた。裏の林から少し太めの枝を切り取って柵の間の補強もしておく。

 それが済んだところで、食事を後にして横になった。今夜が一番危ないとなれば少しでも体を休めないとな。


 3時間程は休めたんだろうか? モモちゃんに起こされて、身支度をすると直ぐに焚き火の傍に行く。

 リーザさんにたっぷりとスープをシェラカップに入れて貰い、炙ったパンと一緒に食べ始めた。モモちゃんもまだ食べていなかったようだ。具だくさんのスープを貰って顔が笑顔になったぞ。

 

「そのスプーンは変わってるわね。先がフォークになってるんだ」

 リーザさんが俺達の食器を眺めて呟いた。

「スプーンよりもそのカップに驚いたわい。あの形に仕上げるのはどんな技法なのかと考えてしまう。たぶんかなり遠くから来たんじゃろうな。だが気にするな。誰も素性でとやかく言う者はおらん。ギルドに登録された時点で、その前の経歴は御破算だからのう」


 外人部隊みたいだな。でも俺達には都合が良い。

 食事が終わったところで、食器を纏めて【クリーネ】で綺麗にして貰い、バッグに納めておく。

 今飲んでるお茶のカップは、対象外だ。明日の朝出発するときにまとめて綺麗にするらしい。


 荷馬車に積んだクロスボウとボルトケースを手元に置き、モモちゃんも手元に弓と矢筒を置いている。矢筒には十数本の矢が入っているから、ゴブリン相手なら十分に役立つだろう。


「その弓も少し魔道の匂いがするな。ちびっ子の引く弓にしては射程が長いぞ」

 そうなんだろうか? 有効射程は20m程に思えるんだが……。


「100D(ディー、30m)位はあるみたい。私が150D(45m)程だから、初心者用とは思えないわね」

「すみません。シルトとはどれ位の長さなんですか?」

「この矢が2D(60cm)になるわ」


 見た感じだと60cm程だ。1Dは30cmと言う事になる。ということは、モモちゃんの弓の有効射程は30mってことか?

 かなり使えるぞ。少なくとも後ろで援護してくれるならかなり戦いが楽になる。


「それで、アオイの方もその長剣が使えそうなのか?」

「気に入りました。使えるかどうかは、実戦を経験しなければ分かりませんが」

 

 俺の言葉に頷いているのはシュタインさんだ。

 長剣モドキだからなぁ……。日本刀よりは少し短い気もするけど、バランス的には気に入った品だ。


 2時間程すると、いつものようにモモちゃんは俺に寄り添って寝てしまった。隣で寝ている分には問題ないだろう。

 危険が迫ればいつものように起きてくれるはずだ。


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