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Fox Tale  作者: すずらん
第一章
3/6

2

 空高く太陽が昇った昼下がり。森の木々からこぼれる木漏れ日は眠気を誘う。鳥はさえずり、リスはせっせと木の実を食べる。自然という言葉をそのまま表したようなこの場所は妙に神秘的だった。吹き抜ける風は何かをささやくように、穏やかな春の香りを運んできてる。この場所で少女は目覚める。

 「どこ?ここ」

 目を覚ましあたりを見渡す少女

 名前を<シレイラ・ニーナ>と言い種族は<銀狐>となっている。

 現在のところ彼女がわかっているのはここまで。いつまでも寝っ転がっててもしょうがないので立ち上がり周囲を散策するニーナ。

 自分の名前と種族しか分からない以上生きることを目標にするしかない。一応服は着ているもののかなり簡素な作りで正直言って心もとない。ちなみに今のニーナの姿は頭に銀色の狐の耳、セミロング銀髪。目の色は青、所謂銀髪碧眼である。髪や耳と同じ銀色のフッサフサの尻尾。服は麻布の様なものでできたシャツとズボンのみだ。なんというか<質素>この一言で十分表すことができる。

 「おなか、減ったなぁ~。なんか食べれそうなもの..ないかなぁー」

 空腹にかなうはずもなく食べれそうなものを探しに行く。

 「はぁ~どうなってるんだろ?」

 そんな少女のつぶやきを春の風が流していった・・・


 「これ食べても大丈夫...なはずだよね?」

 彼女が見つけたのは、親指ぐらいの大きさの赤い木の実。一応知識はあるので大丈夫なはずなのだが、いかんせん自分が何をしていたのか全く記憶にない状態。完全に信じていいものか?と迷う。とりあえずこのままだと餓死確定なので、そのまま胃に収めていく。

 木の実程度では到底足りるわけはないが、気晴らし程度にはなった。そのままあたりの探索をしつつ使えるものや食料を探しにさまよいだす。途中色々なものを見つけてはいたが、本能的に何かしらの危険を感じ取ったのかスルーしていた。ものすごく禍々しいオーラを出している黒い木の実や傘が二段重ねになっている幼稚園児が描いた、と表現すればいいような色をしたキノコなど...。

 「この森結構怖い...」

 体を休める場所を探していたニーナだったがこの森の植生の片鱗を感じて、身震いをする。まだここに住む動物にも会っていないが...

 森の中をさまようことしばらく、ニーナはポツンと立っている家を見つける。誰かがここを去ってからそこまで年月が経っていないのか、今にも崩れそうっというほどまで傷んではなかった。ニーナとしては雨露しのげればよかったので、かなりの優良物件だ。部屋は一つしかなく、ベット、机+本棚、簡易キッチンが備え付けてあった。

 「所々壊れたりしてるけど..何とかなりそう...かな?これを残してった誰かさんありがとう」

 部屋にある家財道具をざっと確認する。使い方がわからないキッチン(コンロ的なもの)に数分頭を悩ませ、結局あきらめて机に向かう。椅子に座りながらこの世界について考え始めたとき、ふとニーナは本棚に置いてあった一冊の本に目が留まった。 

 そのタイトル『魔法理論<基礎>』

 「魔法・・・」

 ニーナは何かに導かれるようにその本を手に取りろうそくの灯りの中で開いた。

 それからというもの本棚にあるもの全てを読もうとするニーナ。しかしなぜか全く分からないものもあったつまり本を開いても何が書いてあるかさっぱり読めない。まるで本が読まれることを拒むように。最終的にニーナが理解できたのは最初手にしたものを含め3冊だった。

 タイトルは『攻撃魔法<基礎>』

 名前の通り基礎の攻撃方法

 『魔法の日常生活における利用法<初級>』

 名前のまま、日常における魔法の利用法もちろんニーナが数分間考えたコンロの使い方もばっちり載っていた。

 「精進あるのみ、か~。ここがどんなところかまだ分かってないけど強くなっておくことに損はないし」

 読めるもの全てを読み終え、背もたれにもたれ掛けるニーナ。まだまだ先は長いな、と一段落付け、先ほどの魔法をベットに向かって使ってみる。虫食い、カビ、果てには、ナニこれ的なキノコまで生えていた腐ってるとしか言いようがないベット。こんなところで寝るのは到底我慢できるはずもなく...

 「大切なのはイメージ、、、集中して、深呼吸、、」

 目をつむり一生懸命イメージするニーナ。できうる限り清潔で寝心地のいいものを知識から引っ張り出す。物が落ちたような音と共にニーナの視界に現れたのは清潔感あふれるベット。

 「すごい...ホントにできた」

 自分がやったことに少し感動を覚えるニーナ。だが

 「うっ...頭痛い...」

 立っているのもつらいぐらいの頭痛が彼女を襲う。どうやら慣れないことをいきなりやった反動のせいだろう。

 「もう、、ダメ、、」

 まるで新品のようなふかふかのベットに頭から潜り込み空腹だったことも忘れニーナはそのまま意識を落としていった。

 翌日、ニーナが目覚めたのは昼時。窓から差し込む光で目が覚め、そのあと色々な魔法を試していった。最初は簡単なものから始め徐々に慣らしていく。部屋の中から外へ、練習場所を広げていき、そしてある程度慣れてきたことにより拠点の近くを散策中のニーナ。

 ある程度気配を消しながら森の中を歩いていた。理由は起きた後使えるものがないか探した時に世界図鑑なるものを見つけこの世界の生き物についてある程度知ったからだ。

 この世界<ネオ>には普通の獣に加え、人属、魔族、そしてニーナのような獣人族がいる。獣人族については獣が大量の魔力を持った際、人の形になるとされているが詳しいことは謎のまま。問題は魔族と呼ばれるもの。奴等は人間に友好的な奴もいれば、そうでない者もいたり、はたまた魔獣と呼ばれる獣がでっかくなって進化したようなものもいる。そいつらは暮らしていくのに必要な素材を提供(己の死をもって)してくれる代わり、かなり好戦的な奴が多い、もちろん草食の奴もいるが危害を加えると一矢報いらんと攻撃してくる。幸いにも今ニーナがいる場所は人が暮らしているところに比較的近く。肉食の魔物は基本出てこない、つまり森の奥にいるため遭遇しない。この近辺にいるのは草食のそれもランクが低い奴。そのため、特に苦労することなく狩ることができる。

 ランクというのは魔物に対してつけられている危険度を表すものでGからSSSまである。Gランクというものはさほど危険度がなく、それこそ普通の動物と変わらない程度だ。逆にSSS級となると神話レベルで、もはやランクをつける意味もなさない。それこそ、天災...いや神災と表現するべきか。

 「おっいたいた」

 今回のニーナの目標。それは毛皮である。いつまでも麻布で編んだような服にはさすがに堪えるらしい。

 やっと姿を現してくれた魔物<ウィードラビット>膝ぐらいまでの大きさのウサギである。この毛皮は防具の下地にしたり防寒具にしたりと用途は幅広い。そこまで危険ではないので手軽に手に入れることができ、諸国民の生活を支えている。

 この魔物を前にニーナは、ついさっき慣れたばかりの水属性の魔法を使ってみることにした。

 これは水を魔力に乗せて高速で相手にぶつけるものだ。水の量や形を調整すれば更なる効果を生み出すことができる。

 今回はさほど強敵でもないので相手が気絶するレベルまで水の塊を小さくする。と言っても初めて魔物に対し使うので威力調節など感にほど近いが。

 「ファイア!」

 水の塊は魔力に乗り相手に飛んでいく。目論見どうり相手は失神。初めての割には外傷が少なかった。

 「やった、成功した」

 さっさとウサギを解体していくニーナ。知識を頼りに手際よくさばいていく。両腕に素材を抱えながら帰路に就く。

 拠点に帰って来たニーナは、ウサギ肉を例のキッチンで料理して(焼いただけ)腹を満たし、明日の行動計画を立てていた。

 「服ほしいからなー...やっぱ近くにある村に行くか。お金足りなかったらこの素材売ればいいし」

 村までは数キロの距離。そこまで苦になるほどの距離ではない。お金も多少見つけており、移動中はこの家にあったローブに決定した。

 

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