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不意に、浮かび上がるような浮遊感と共に目を覚ます
上半身を起こして、まだ寝ぼけている頭を働かせる
また、あの夢だった
最近頻繁にあの夢を見る
まるで、何かを教えようとしているように
そこまで考えて、軽く首を横に振る
考え過ぎだ
夢なんてただの夢
現実に何かを及ばすような力など持ってはいない
「嶺ー!もう起きないと遅刻するわよー!」
ドアの向こうから、元気な母さんの声が聞こえた
俺は気怠い身体を引きずり、中学校の制服に着替える
その後、髪をセットしに洗面所へ
ザバザバと顔を洗い、水玉が描かれたフェイスタオルで顔を拭く
ふと、鏡のなかの自分と目があった
日本人特有の漆黒の髪
そして、その髪に不釣り合いな黄金色の瞳
そうこの俺、橘花嶺は日本人とアメリカ系のハーフなのだ
母が日本人で、父がアメリカ系だったらしい
らしいというのは、俺は父親に直接会ったことがないから
写真では見たことあるけど
俺の父は俺が生まれてすぐに、事故で亡くなったと聞いている
父はあまり写真を好まない人だったらしく、写真などはほとんどない
唯一あるのは、我が家にある仏壇に飾ってある遺影くらい
母がいうには、とても気さくで、明るい人だていうこと
…そう考えると、俺が父さんについて知ってることってすげぇ少ないな…
そんなことを考えながら、髪のハネを水をつけて押さえつける
…この、硬く癖っ毛な髪は父譲りだと、母さんは言っていた
はぁ…癖っ毛って色々嫌になるな…