第二話 屍喰鬼グール
「愛恋そっちはどうだ生存者はいたか」
学校の校舎にて二人の女性がいた。一人は桃色髪の婦警であまり威圧感の無い朗らかなこの場の空気に似合わない顔をしていた。もう一人はワインレッドの軍服を着ていて婦警の人対照的に目がキリっとしていてどこかの軍の鬼教官みたいな感じだ見ているだけで気が引き締められる。、軍人風の女が婦警の女性愛恋に言った。
「いなかったです。学生さんたちの教室全て回りましたが、皆さん化け物さんになっていたです天音さん」
愛恋は怯えた表情で軍人天音にそういった。
「では生存者は寮内に避難させた少数のみか、来て早々にとんでもないことに巻き込まれたな、貴様もそう言った口か?」
「違うです。私はここの教頭先生に通報の要請があったのできたです。天音さんのようにたまたま通りかかっただけとは大違いです」
「酷い言われようだな、たまたまではない先日の夜にこの校内で不可解な現象を伏せろ!」
天音は拳銃を引き抜き愛恋の後ろに近づいていた死体と化した生徒の頭を打ち抜き、生徒は血を流して倒れた。
「立て! 逃げるぞ!」
「は、はいです!」
天音は愛恋の手を引っ張りその場を後にした。打ち倒した生徒を見て天音は舌打ちをした。
その生徒は何もなかったかのように平然と立ち上がったからだ
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
結那は恐怖のあまり絶叫した。その声を聴きつけてきたのか生徒達はグラウンド側から、教室の窓から落ちてきて、結那に進行してきた。
大急ぎで学校から出ようとしたところで絶望した。校門に向かおうとしたときだ、校門側からも生徒達が結那に迫ってきたのだ、つまり挟み撃ちだ。
「嘘だろ、どうすればいい」
結那は周りを見渡して何か対策を練ってみようとするが、恐怖で思考がうまく回らなくて何も浮かばない、そんな中生徒達は結那との距離をどんどん縮めていった。
「待て、待ってくれよ、少し考えさせろよ、ぐっ!?」
片足が何かに噛み付かれた感じがした。下を見てみると結那の顔は恐怖で青ざめていった、さっき落ちてきた女生徒の死体が結那の足に纏わりついていた。
「うわぁぁぁ、離れろ! 離れろ!」
掴まれていない足で必死に女生徒の死体を蹴り続けた、しかし噛んだまま放そうとせず足にどんどん痛みが走る一方だ。
「ぐがあぁぁ! 離せ!!!」
蹴り続ける中で死体の首を蹴り飛ばし引き剥がしたことに結那は喜んだ。
「はぁ、はぁ、どうだざまあみっ!!!」
ろまで続けることはできなかった。結那は笑っていった顔を一変させまた再び絶望の表情を浮かべた死体の失われた首はまたもとの状態に生え変わり、再び結那に進行を開始した。まるで結那を追い込むかのように
「終わった。もうおしまいだ、何だよそれ反則だろ」
少しずつ距離が迫る中、学校側に後ずさり生徒たちとの距離を稼ぐが学校の壁に背中があたった。これ以上下がることはできない。周りを見渡すと生徒達が群がり、完全に逃げられなくなったと思った。
「あれは!」
偶然にも保健室へとつながる出入り口があった。噛まれた足を庇いつつ保健室の中に避難し、鍵を閉め扉から離れた。
「はぁはぁ、そういえば遅刻生徒用の出入り口として調理室と保健室と職員室は外から入れる構造になっていたの昨日担任から教わったな。急がないと、来る」
扉をぶち破ろうと生徒たちが群がっているのが見えなくても解った。ここも危険だ。幸いにも保健室の中に生徒などの屍は無くまだ綺麗なままだった。そこから校舎側の扉を開き廊下に出た。
「うっ・・・・・・気味が悪い、まるでホラー映画だ」
出た瞬間に見たのは吐き気がしそうな光景だ、廊下の窓越しから見える屍化した生徒たちが互いの肉を食い合い、殺戮の限りを尽くしているそんな光景だった。
(って、んなこといってられないな、あんまり喋らないよう分析しつつ隠密に切り抜けよう)
結那は外と廊下の様子を見て冷静に分析を開始した。
(まずは敵、屍が屍同士の肉を食い合うなんて、ゾンビのやることじゃないな、これじゃ屍喰鬼だ、そいつらは今この廊下に数体徘徊しているな、こちらには気づいていないことから視界は無いみたいだな。ん?)
少し遠くで妙な光景を目にした。グールが別のグールとぶつかりそしてお互いを喰い合い始めた。
(視覚は無いが感覚はあるのか? だとしたらむやみにぶつけたりしたらそれだけでもこっちの位置を特定されてしまうな、倒すことができればいいが撃退方法がわからない。さっき頭が再生したからな)
目線をグールから自分の足に下ろすと結那は表情を暗くした。
(一回噛まれちまった。俺もグールの仲間になるのも時間の問題か、深く噛まれはしたがさっきよりはマシだ、さて脱出しようたしか裏の校門からも出られるようになっていたな、グラウンド側にあるってことは痛しいがグールの溢れかえる校門を渡るよりもまだいいな)
結那は、なるべく音を立てないように廊下を渡ろうとした時だった。ガチャリと背後から聞きなれない音が二つ響き、肩を竦ませた。
「両手を上げてこちらを向け」
言われたとおりにした。そうしないとまずいと本能が悟ったからだ。ふりかえると女性が二人結那に銃を突きつけていた。
「この人化け物さんじゃないみたいです」
「今頃になって生存者を見つけるとはな」
そういうと二人とも銃を下ろした。結那も上げた手を下ろした。しかしその後ろから何かが迫る足音が聞こえた。ふりかえるとグールがこちらに気づき接近していた。
「喰うなら死体だけにしてくれよ」
「あわわ、来るです! 逃げないとです!」
「確かこの部屋から外に続いていたな行くぞ」
天音は扉に手をかけようとしたところで結那が止めた。
「待ってください。そこから先はグール共の巣です。別ルートで行きましょう」
バキリッ!!
扉の向こうで凄い音がした。扉を突き破るような、窓が叩き壊されるような音だった。
「貴様の言うとおりだな、一旦二階の会議室に引き上げる、続け」
結那と愛恋はそれに従い天音を先頭に二階へ向かった。