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第一話 最後の登校日

「は、はふぁぁー、ああねむ」

桜の花びらが舞う晴天の日の午前、バスで一人、真新しい学生服を着た結那があくびをしながらそんなことを呟いていた。

時刻は10時、学生が登校するには遅すぎる時間であるが、結那はまだ眠いのか危機感のようなものがなかった。

「入学した次の日に、ラノベ読みすぎて寝坊して遅刻なんて言訳通用するわけないよな、なんかいい弁解でも考えるか」

バスの中には運転手と結那以外誰も乗っていないためか、包み隠さず喋っていた。

「君は新入生なんだろ? もう少し高校生らしい自覚を持って行動してみたらどうだ、いつまでも中学生気分じゃ高校はやっていけないぞ」

独り言をしていた結那を気遣ったのか、運転手のおじさんが話しかけてきた。

「なんでか、一応昨日入学式に出ましたが、いまだに自分が高校生になったって言う自覚が湧かないですよ」

「その様子だと中学生気分が抜け切るのはまだまだ先だな、だがもし抜けきったその時は少年、君は一つ大人になったと言うことだ」

「結那、俺の名は如月結那きさらぎゆいなだ、おじさん」

君と呼ばれたことに不快感を抱いた結那は怒り交じりに自己紹介をした。

「そうか、では結那そろそろ学校に着く、降りる準備をしておけ」

「あれ、もうそんな所まで来たっけ?」

運転手の素っ気ない反応にきょとんとするなか、運転席側の窓から外をみると、昨日結那が入学式を行った建物が見えた。

「早かったな、もう少しかかると思ったが」

運転手と話をしていたためか結那は時間を忘れていたようだ、彼自身このように誰かとお喋りするという機会はあまりないようだ。

「よし着いたぞ行って来い」

バスはゆっくりと減速し、バス停に止まった。扉が開くと結那は運賃を払って――――――

「結那」

下車しようとした時に運転手に呼び止められた。

「がんばりな」

「・・・・・・はい」

運転手からのエールを受けてバスから降りた。扉が閉まりバスは発進した。

「おじさん・・・・・・ありがとう」

目の奥が熱くなるのを感じながら、結那は学校に足を運ぼうとした時だった


「は、しまった! 言い訳考えるの忘れてたってぇ! バスの中に荷物忘れた!」


授業道具一式バスの中に置いてきた事を思い出したのだった。








「まずいな、これはもう言い訳じゃすまないぞ、荷物は学校帰りにでもおじさんに頼めば何とかなるからいいが授業はどうしたものか」

桜並木の道を一人歩きながら、頭を悩ませていた。だがその割に危機感のようなものは感じられなかった。何とかなるだろう程度にしか思っていないようだ。

「見えてきたな」

校門が見えてきたところで結那は慎重になった。誰もいなかったからだ、遅刻して時間が結構経っていたから誰もいないのは当然だと思うが、そうではなく人の気配そのものが学校から感じられなかった。

「なんだ? 静か過ぎる、確か二時限目は保健体育だ。妙だな」

早足で門の前まで行き、そのまま校内に進入した。

「・・・・・・おかしい、教室まで行ってみるか」

人の気配の無さに、違和感を覚えながら教室に向かおうとした時だった。


ドサッ


突如、結那の前に何かが落ちてきた。

「あ・・・あああ、あ」

この日初めて結那は自分の身に危機感を感じただろう。


目の前に倒れている。全身の肉が爛れた同校の女生徒の死体を見て


更に、落ちてきたほうを見ると、結那は身を震わせた。

生気のない同級生たちとその先輩たちが互いの肉を喰いあう姿が窓の外から鮮明に見えたからだ


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