3∥蛍太の本性
次の日、優美子は熱を出して休んだ。真斗と美佳と同じクラスになった蛍太は、美佳に、
「今日、優美子ちゃんは?見かけなかったけど。」
と聞かれた。蛍太はビックリしたような顔をしたが、すぐにニコッと笑った。
「優美ちゃん、四十度も熱があって、今日は休みなんだ。」
蛍太がそう言うと、真斗は自分の机を蹴った。みんなは、ビックリして、真斗をすぐに見た。
「何見てるんだよ!」
そう言って、真斗はみんなを睨んだ。みんなはすぐに目をそらした。
真斗は学校が終わると、すぐに優美子の家へ行った。
「あら、美壁君。」
「すみません、季遊崎さん。優美子さんに会いたいのですが。」
「ええ、入って。」
そう言って、明美が、真斗を家に入れた。
「優美子さん、大丈夫ですか?」
「それがずっと熱が下がらないのよ。」
そう言って、明美は、優美子の部屋の戸を開けた。
「・・・お母さん?あ、美壁君・・・」
優美子は赤い顔をして、真斗を見た。
「ごめん、こんな格好で。」
優美子はそう言って、布団をかぶった。
「別にいいよ。それより、大丈夫か?」
「たぶんね。」
優美子はそう言って、ニコッと笑った。だが、すぐに口を押さえてトイレに走った。心配して、真斗と明美が追いかけると、優美子はトイレで吐いていた。
「大丈夫か、季遊崎?」
そう言って、真斗は優美子の背中をさすった。
「ごめん、見苦しいところを見せてしまって。」
優美子がそう言うと、真斗は首を横に振った。
「別に・・・」
真斗はそう言って、まだ吐いている優美子の背中をさすり続けた。
「お前を見てると、母さんを思い出すんだ。だから、放っておけない。」
真斗はボソッとそう言った。優美子は、少し落ち着くと、真斗に抱きついた。
「寒い。」
真斗は優美子のその言葉を聞いて、着ていたカーディガンを優美子にかけた。
「大丈夫か?今運んでやるから。」
真斗はそう言うと、優美子をお姫様抱っこして、優美子を部屋まで運んだ。そして、優美子に布団をかけていると、いきなり誰かに蹴り飛ばされた。蛍太だった。
「優美ちゃんに触らないでくれる?」
そう言って、蛍太はすごい形相で真斗を睨んだ。
「ちょっと、蛍ちゃん・・・」
優美子はそう言いながら、起き上がった。
「別にいいよ。俺が何かしたかは分からないけど、嫌われてるみたいだし。ごめん、季遊崎。もう帰るわ。」
そう言って、真斗は優美子の部屋を出た。
「蛍ちゃん!何てことしたの!?人を蹴るなんて、最低!」
優美子がそう言うと、蛍太は優美子の肩をつかんだ。
「優美ちゃん!まだ分からないの?あいつが優美ちゃんのことを好きになるかも知れないじゃん!」
「ダメなの?人の気持ちなんて、どうこう出来るようなことじゃないでしょう?」
優美子はそう言って、蛍太を睨んだ。すると、蛍太の肩をつかむ強さが強くなった。
「痛い!」
優美子は顔をしかめた。
「痛い・・・やめて蛍ちゃん。」
優美子がそう言った瞬間、真斗を見送っていた明美が階段を上ってきた。すると、すぐに優美子の肩を放した。
「じゃあ、僕もこれで失礼します。」
そう言って、蛍太は優美子の部屋を出た。
蛍太が家を出たあと、優美子はすぐに、真斗に電話した。真斗の電話番号は、先日教えてもらっていた。
「もしもし、美壁君?」
『・・・もしもし、どうした?』
「いまどこ?」
優美子がそう言うと、真斗は少し黙った。
『公園。何?』
「ちょっと、いい?」
『ああ。いいよ。』
真斗がそう言うと、優美子は深呼吸をして、話しはじめた。
「今日はごめんね。私、蛍ちゃんが怖いよ。なんか、さっきまですごく怒ってた。私、何かしたかな?」
優美子がそう言うと、電話の奥で真斗がため息をついているのが聞こえた。
『大丈夫か?少し落ち着け。あいつは、お前に暴力を振るわないだろう?大丈夫だよ。』
真斗はそう言って、ため息をついた。
「助けて!」
『は?どうした?何があった?どうした?』
真斗がそう言うと、優美子は少し落ち着いてため息をついた。
「嫌だ、不安だよ。一緒にいてよ。」
『季遊崎・・・』
真斗はそう呟いて、電話を切った。優美子は震える手で、携帯を握り締めていた。優美子の母親は、それを見て、
「大丈夫?」
と聞いてきた。
「うん。悪いけど、何か買い物してきて。一人になりたい。」
優美子はそう言うと、布団にもぐった。